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溢れて止まらない6

月城が話し始めたおかげで、さっきの話題から少し逸れてホットした。だが、油断は出来ない。薫がまた疑問を口にする前に、何か納得のいく理由を考えないと。 そこまで考えて、樹は重い気持ちになった。自分は大好きな兄に言えない秘密が多すぎる。7年前もそうだったが、今はもっとだ。兄に嘘をつき続けている自分が情けなくて苦しい。薫はいつだって、自分に対して真摯に向き合ってくれているのに。 「君は……樹に対して……その、変な感情は持っていないのか?」 薫は固い表情のまま、躊躇いながら問いかける。 「変な感情……?」 「う……。つまりだ。あの頃、君は樹と……そういう関係だったのだろう?今は……どうなのだ」 薫の質問に、月城はようやく合点がいったというに苦笑して 「ああ……。そのことなら」 月城はちらっと樹の顔を見てから 「あの頃、貴方が樹くんに弟以上の感情を抱いていることに気づいて、貴方の気持ちを逸らす為にわざと恋人みたいな関係を匂わせていただけです。俺は樹くんに対しては、親しい友人以上の感情はありませんよ」 あっけらかんとした月城の返答に、薫は白目を剥いた。 「な……。じゃあ、君は、樹と恋人じゃなかったのか?だが、樹は君に抱かれて……」 薫が呆然とした表情でこちらを見る。樹はきまずくて慌ててそっぽを向いた。 「あの頃、樹くんは精神的に不安定でしたからね。いろいろあって、縋る相手を欲しがっていた。抱いてないとは言いませんが、恋人という関係ではなかった」 薫の表情がますます険しくなる。 恋人ではなかったが、身体の関係はあった。そんな言い逃れを、薫が納得するはずがない。 「つまり。恋人としてではなく、遊びで樹を抱いていたということか」 「どう解釈してもらっても構いません。俺は俺なりに、樹くんを大切にしたかった。しがらみがあって、なかなか思うようには出来ませんでしたが」 月城の答え方が際どすぎてハラハラする。樹は心臓が痛くなってきて、自分の胸に手をあてた。 案の定、薫はまったく納得いかない様子で、憮然とした顔で月城を睨んでいる。 「君の言うことは、よく分からないな。俺の気持ちを樹から逸らそうとしていたのは、巧叔父さんの指示か?当時、君は叔父さんの助手をしていたんだったな」 薫の口から出た叔父の名前に、樹は胸の奥が冷たくなって、ぎゅっと目を瞑った。 「ええ。大学でお手伝いをしていました。あの人は、貴方と樹くんの関係をよく思ってませんでしたから。俺も、貴方が樹くんにのめり込んでいくのは危ないなと感じていましたし」

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