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俺の仕事はお巡りさん (編集済み)
「―― 柊さん、おはよー」
「あぁ、おはよう」
「あー、キヨさん。今日家庭科の調理実習でクッキー
焼くからお土産に持ってくるねー」
「おぉ、楽しみに待ってるよ」
駅前交番の前を集団登校してゆく小学生達。
それをにこやかに見送る制服警察官 ――
柊 清貴・35才。
そう、清貴の職業は警察官だ。
警察内でもかなり異端視されている変わり者だが。
子供達の登校もひと段落ついたところで
席へ着き、PCを起動させ本庁のデータバンクへ
アクセス。
そこには本庁(警視庁)各部署が所蔵する、
逮捕歴のある者・要注意人物・暴力団構成員・
役所に登録済みの獣人族の情報が網羅されている。
検索画面で、あらかじめスマホの写メで撮った
あの少年Aの顔写真を転送。
今、自分で分かる限りの情報 ――
推定年齢15才から18才。性別:不明
髪の色:白銀。
瞳の色:オッドアイ(右は赤・左は薄緑)
おそらく獣人族のアルビノだと思われる。
……っと、インプットし、エンターキーを押した。
あいつがこの日本に住んでる獣人族なら
何らかの情報が得られるハズだ。
(10年前まで獣人族の登録は任意だったが、
獣人族が行ったと思われる犯罪が爆発的に増加して
きた為、強制化され、違反者には2年以下の懲役と
100万円以下の罰金が課される)
しかし、数分後、弾き出されてきた検索結果は
”該当者・なし”
やっぱりかぁ~、ってある程度の予測はしていたが。
このデータバンクにひっかからない、となると……
ポチの身元探しはけっこう困難になる。
現生人類と動物以外の”獣人族”なる種族の生存が
確認されて、早や30年……
彼らの生態研究は急速に発展し、
その種を凍結保存してほぼ自在に繁殖出来るように
までなった。
国(政府)が主体となって擁護・管理され
特定の居住区以外での定住は認められていなかったが
規制法の一部改正で役所に届け出さえすれば、
人間同様の生活が出来るようになっている。
奴の保護者が捜索願いでも出してくれればいいが……
ほぅーっとひと息ついた時、
地域警らから戻った向坂巡査(婦人警察官)に
言われた。
「何か最近のキヨさん、とーってもお疲れですね。
何かありました?」
「あー、やっぱ分かるぅ? 実は最近拾ったポチが
悪さばっかりなんで、ほとほと手を焼いてるん
だよー」
「まぁ、いたずらっ子なのねぇ」
部外者ならばそれで笑って済ませられるが、
(いたずらっ子、なんてそんな可愛いモンじゃ
ないんだよなぁ……)
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