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言えない思い

 同じ施設で生まれ育ったロイと*年ぶりに再会した  あの夜は、久しく見る事もなかった悪夢にうなされた      いつもの強がりであの時は ”ダイジョウブ”だ  なんて言ったが。  本当はちっとも大丈夫じゃなかった。    清貴との関わりが深くなるごとに ――  清貴との生活が長くなって行くごとに ――    清貴の事を大切に思えば思うほど、  どんどん好きになって。  最早、その思いは爆発寸前で。    だけどそんな甘やかな気持ちとは裏腹に、     胸中へ無理やり押し込めた不安は大きくなってく  ばかりで。    だから余計に自分の過去を打ち明け辛くなって。       自分の心を締め付ける。      今日、起きがけに見ていた夢は、  今まで覚えている夢の中で一番嬉しくて、  それでいて、恥ずかしい夢だった。    だって、出逢って以来ずっと思い焦がれてる  キヨさんが夢に出てきて、おまけに、  優しく抱きしめてくれたから……。       涙を誰かが拭ってくれる ―― 抱きしめてくれる。 「もう、泣かなくていいから……」  その声はベネット? 時空ワープしたのが夢なの?  だとすると……今でもボクはあの暗い森に囲まれた  研究所にいるの?    怖いよベネット……ボクも彼を強く抱きしめた。  でも、待てよ ――?     さっきから鼻(鼻腔)をくすぐる甘いお菓子のような  匂いはベネットのモノじゃない。    ボクはゆっくり目を開けた。 「はよ~、寝坊助ちゃん」  至近距離に見知らぬ ―― イヤ、  大好きな人の顔がある! 「大丈夫か? 泣いてるぞ?」 「あ……」  ボクは、もしや抱きついていないか?  そして……抱きしめられてないか?? 「もう大丈夫、俺がついてる」   笑いながらボクの瞼にキスをして涙を吸い取った!!     瞬間、ボクの意識は完全覚醒した! 「ちょっっ! 何してる??」  ボクの毛布の中にキヨさんもいる!  しかも上半身裸!  ボクは ―― 服を着ている。良かった……  何気にデジャヴ……ずっと前にもこんな事が  あったような気がする…… 「今朝、シャワー浴びて戻ったら  お前は二度寝、俺も眠くなってさ」  ボクを見て、テヘッと笑う。 「……顔、近くない?」 「あー、気にしない気にしない、ユーリの寝姿も  可愛いすぎ。しかも泣いてるし、顔真っ赤だよ」  ボクは慌てて涙を拭いて、キヨさんへ背を向けた。 「……ベネットって言ってたけど、ソレって  まさか……?」  背後からキヨさんが聞いてきた。  心臓が痛いくらい鼓動を速める。 「う、うちの番犬。子供の頃からずっと  可愛がってたから、夢にまで出てきちゃたのかなぁ、  アハハハ ――」     咄嗟にわざとらしいでまかせをかました。 「ふぅぅぅん、ワンちゃんなんだぁ……」  明らかに嘘だとばれてる……当然か。  キヨさんが布団から出る。 「シャワー浴びな、朝飯出来てる」  言いながら出て行った。  ボクは着替えを持って、急いで浴室に向かい、  キヨさんの事を思うと自然に溢れ出る涙を  熱いシャワーで流した。

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