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第3章・第23話
アスファルトが熱で触れないくらい暑いこの時期だが、学園の中はエアコンによりまるで冷蔵庫か、という程に冷えている。
さすがに冬服を自室のクローゼットから引っ張りだしてくるのも億劫で、手近にあった紺色のカーディガンを着て会議室に向かう。
夏休みも終盤にかかったこの日、既に生徒会役員は寮に戻り仕事にかかっていた。
夏休みが明けた一ヶ月後には既に文化祭が控えており、その後には修学旅行、期末試験と行事が山積みなのである。
今日は目の前に迫る文化祭について話し合う為に風紀委員会を交えて集まる予定だ。…………永束と食えない風紀委員長の冷戦を目の前にするのは大変神経がすり減るのだが、これもいつかはやらなければならないこと。さっさとやってしまうのが、吉である。
閑散とした廊下を歩いていると、向かいの校舎から花沢が歩いているのがわかった。そういえばさっき生徒会室にはまだ来ていなかったな、数冊の本を手にしているのがわかる。図書室に行っていたのか。
「…………っ、!?」
花沢の後ろを、ガタイが良く柄の悪い生徒がつけている。
「……アイツらは………、」
己の頭の中にある生徒名簿と奴等の顔を見比べる。
1年Fクラスの生徒数名がヒットする。
この状況下で考えられることは、ただ一つ。
小柄で顔のいい花沢と、その跡を付ける不良生徒数名なんて事件にしかならんだろう……!!
体育祭の件もあるっつうのに、あほんだら……!!
向かいの校舎は今俺がいる階を1つ下がった渡り廊下から行かなければならない。……ここからだと、間に合わない。俺は急いで向かい校舎へと走る。
急いで連絡帳から探し「花沢」をタップし、『プルルルッ……』という電子音が花沢の声に変わるのを待つ。
早くでてくれ、………!!
『もしもしー?副会長?』
「花沢!!そのまま空き教室に入って鍵を閉めてください!!」
『え、?なに?』
「後ろは振り返んな!!」
『わ、わかったよ……はい、鍵閉めたけど……』
「そのまま通話繋げといてください……、!!」
向かい校舎に入り、階段を駆け上がる。
その先の廊下には先程の生徒達が居るはずだ。
俺はいつでも動けるように神経を研ぎ澄まし、
廊下に出た。
「…………誰も、いない?」
は……、階を間違えた………?いや、自分がいた校舎を見て確認し間違えてはない。
後ろを振り返るが、人の気配すらしない校舎に嫌な汗が伝う。
『………副会長?、どうしたの?』
「………………私が教室の前にいるので、鍵を開けてください」
内側からカチッと鍵を開く音がする。この教室の鍵が少し安物みたいだ。また予算を見直ししなくちゃいけない。
そろり、と内側から顔を出した花沢は戸惑いの表情が浮かんでいた。俺は花沢にいつも通りの笑顔を向けた。
「副会長?一体なにが……」
今真実を言っても怖がらせてしまうだろう。…なんて言い訳をするかも上手く思いつきそうにない。
「……こんな人気のない校舎に一人なんて危ないでしょう」
「………え、は、うん」
咄嗟に出た言葉は堅苦しい説教で、我ながらこのキャラが板についてきたなあ、なんて検討違いなことを考える。
「…………もうこの校舎に用はありませんか?」
「あ、うん。図書室で本借りてて……」
「会議室に急ぎましょう、永束の機嫌が悪くなりますよ」
「う"、それはヤダ」
元来た道を歩いて、会議室に向かう。
なんとなくだった、渡り廊下に差し掛かり元いた校舎の屋上を見上げた瞬間、人影が見えてしまった。
「あれ、ミツキと花沢じゃ~~ん、どしたの?」
目の前からツキノが来たことを良いことに、花沢をツキノに預けて俺は屋上に向かう。
「すみません!!永束にはあとで怒られると言ってください!!」
「えっ、えっ!?!?ミツキ!?どったの!?!?」
ごめん、花沢。ツキノと会議室に向かってくれ。
屋上の人影はきっと、アイツだ。
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