11 / 30

極光の夜に①

 アキークは、まず僕に着る物をくれた。僕にはどうしてか分からないけれど、船に丁度良いサイズの服があったそうだ。黒を基調とした服で、寒さを凌ぐためかアキークは僕に何枚も重ね着をさせた。これで僕も少しは海賊らしくなっただろうか? 「ナキは俺の部屋で寝ろ」 「どうしてっすか?ナキさんだけずるいっすよー。俺も暖炉のある部屋で寝たいっす」 「人間は寒さに弱いんだよ。シャラール、お前、ナキを殺したいのか?」 「い、いいえ」 「シャラールさん、一緒に寝ますか?」 「ナキさん……」 「ナキ!お前!」 「アキーク、部下は大切にした方が良いですよ?」 「なんでシャラールは“さん”付けで、俺は呼び捨てなんだ?」 「俺の方が偉そうに見えるからじゃないっすか?」 「シャラール!」  そんな会話を数時間前にした。今は部屋の中にシャラールさんの寝息と暖炉の薪が燃える音だけが聞こえている。僕が少し眠って目覚めると、見張りを交代したのかアキークの姿が見えなくなり代わりに床でシャラールさんが眠っていたのだ。 「アキーク?」  そろそろとベッドから降りた僕は静かに扉を開け、部屋から出てアキークを探した。けれど船首にも船尾にも姿はない。 「アキーク」  船の上から忽然と人が消えることなんてあるだろうか?と思った時だった。 「ナキ、上だ」 「これって……」  頭上から声がして、上を見上げた僕は息を呑んだ。

ともだちにシェアしよう!