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第85話 アサは放さない
体がすごく気だるい。足は重いし、腰は痛くて、頭がぼーっとする。
大好きな人の手が体を這い、お互いの肌がぴったりと寄り添う。こうやって体温を感じられる行為じゃ僕の心を温めた。
好きって気持ちがいっぱいになって溢れそう。
「ハァ、ンッ」
「アサ、大丈夫か?」
「ウ、ン」
宝石みたいにきらきら輝くニールの瞳を見つめていると、大きな両手が僕の頬を包んだ。
優しく唇をなぞる舌が熱い。ゆっくりと侵入する柔らかさに背筋がぞくぞくと震えた。
「抜くぞ、アサ。そろそろ仕事に戻らないと」
「ン、ヤダ…」
重なっていた唇が離れた。少し動けばまた触れてしまうような、熱い吐息を感じられるそんな距離だけれど、離れていることが寂しく感じられる。
「仕事」という単語が僕の耳に届いた。
行かなくちゃいけないんだ。
そうだ。朝から働いていたもの。
でも、僕の口から出たのは肯定の言葉ではなくて。ハッとした表情を見せたニールが目じりを下げて僕の頬に唇を押し付けた。
「ァンッ、ニールッ」
いたずらにほほ笑んだ彼が腰を突き上げる。
気だるさと口づけの気持ちよさで僕はすっかり忘れていた。まだニールの性器が僕の中に入っていたということを。
「悪い子だな、アサ」
「ッ!ンッ、ワ、ルイ???」
背中に両手をまわし、ゆらゆらと腰を動かし始めたニールが僕の質問に答えてくれることはなかった。
お腹の奥で硬くて熱いソレが行ったり来たりしてる。動きに合わせて、僕の体もぎゅうぎゅうと波を打っていた。
不思議。まるでニールに行かないでって言ってるみたいに中が締まる。
「くっ、アサ、それやめろ」
「ァッ、ヤッ……ヤメ、ロ?」
「ああ、駄目だ。気持ちよすぎる」
「ンッ、モッ、ト?」
「っ、その逆だっ」
言われてる言葉の意味が理解できない。普段だって分からないことが多いのに、快感に飲まれ、熱で貫かれてる最中に難しいことはできない。僕の体を毛布に押さえつけて腰の動きを強めだしたニールの額に汗が浮かび出した。
いつもはすごく整った顔をしているのに、至近距離で揺れるニールの眉間にはしわが寄っていた。何かに耐えている。そんな表情だ。時たま唇を噛み、奥の奥まで腰を押し込み動きを止めた。
「ハァ、ンッヤ、ァァッ」
言葉を口にしなくなったニールの動きが強く深くなり出すと、僕は意味の分からない音しか紡げなくなってきた。
目の前で揺れるニールの肌は汗にぬれている。薄っぺらい僕の胸よりがっしりしていて、筋肉の線が分かるその体に胸が熱くなる。なんでだろう。この船にはニールよりも筋肉がついている人もいるけど、その人を見てもこんな気持ちにはならない。これが、好きってことなのかな。
「アサ、好きだっ」
「ァア!」
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