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飽き性のあなたが毎日、パンにつけて食べる、業務用――おそらくは給食用のジャムとマーガリン。その二つのパッケージが一つにされていて、真ん中でぱきっと蝶が翅を畳むように折れば、一度にジャムとマーガリンが平行線を描く。それに既視感を覚えるのは、僕たちと似ているからだ。平行線、交わらない。これらは僕らのキーワードだった。 二つに分かれているのに、別々のものなのに、一組にされている苦悩を経て、あなたは今、僕から離れようとしている。それもできるだけ円満に。 本当は尋ねてやりたい。 (僕はもう要らないんですか。あなたの人生の過去の一点に、――過ぎ去った思い出に、うつくしいものにされてしまうんですか。こんなにも醜く、憎く、あさましかった僕たちの関係が、時間という作用を経て、うつくしいだなんて! そんな馬鹿なことがあるんですか。あなたは僕を愛してなかったんでしょう。それとも僕が不感だったんだろうか。わからないですね、きっとあなたにも。僕にはなおさらわからない。) 壁際に追い詰められたあなたは、まるで殺されるみたいに諦めた目をして立ち尽くしたから、僕は興ざめだった。あなたといると、いつもあなたを(××)のだった。倫理に照らせば、僕が100%悪とされるとしても、それは僕の本心だった。だから、追い詰めたあなたに少し体重をかけて互いの右手を貝殻を合わせるように重ねて、耳元に、囁こうとして――やめた。 あなたはそのままでいい、僕も変わる必要はない。二人でいるから変わらねばならないのであって、分かれて仕舞えばそれはどうでもいい取るに足らないことだ。僕たちはひとつの飛行機の両翼のそれぞれではない。そうはなれない。なれなかった。だから、あなたは、そのまま変わらずに、その、飽き性、収集癖、浪費、慧眼、聡さ、狡さ、気遣い、お人好し、優しさ、魅力――そのすべてを生かした交換不可能な存在として、生きていってください。あなたはそんなひとだから、みんなが愛してくれるでしょう。だからひとりくらい、僕みたいに心底あなたを憎む人間がいるからといって、それは、少しもあなたのその輝かしい将来、無限の未来を妨げることにはならないのです。(そこに僕がいないとしても)。

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