185 / 207

第185話〜解散〜

〜晴也side〜 「は、え?」  目の前の位上くんはとても驚いている。 しかし彼は一般人だし、南の同級生だとしても俺の素性を晒すわけにはいかない。 「しー……」 彼の唇に、人差し指を添える。 「今の事は口外しないでくれるかな。」 すると位上くんはコクコクと何回も首を縦に振った。 さて。あとはこの顧問弁護士だけ。 どうするべきか…… 「晴くん。こいつは僕に任せて欲しい。」 俺が考えていると優が口を開いた。 「残念だけど、さっき僕達が話したことは録音してないんだ。 だからこいつはまだ檻の中には入れない。 南くんを傷つけたことも許せないし、こいつが言ったことも許せない。 だからお願い。」 その真剣な声を信じ、俺達はここで解散した。 「位上くんはこのまま家に帰る?送ってこうか?」 「あ、いえ!俺このあと用事あるんで!」 用事があったのか。 結構話で長引いてしまったが大丈夫だったのだろうか。 すると何か慌てたように位上くんは言い直した。 「や、大したようじゃないんで!まじで!」 「あ、そう?それならよかった。」 そんな感じの話をし、俺はすぐさま家に向かった。  家に入ってまず違和感がした。 出ていく時は南の声が聞こえたのに、今この家はとても静かということ。 機会の音すら聞こえない。 「南ー…?」 呼びかけてみると、すぐ隣の部屋から僅かに物音が聞こえた。 「南?」 「ハ、ル?」 扉を開けると、当たり前だが南がいた。 居なくなったり攫われたわけじゃなくて良かった。 ホッとしているのも束の間、俺の顔を見るなり南は大号泣してしまった。

ともだちにシェアしよう!