1 / 1

水族館デート、のはずが…

SMSのメッセージで指定された時間になって、僕は家の前でその人を待っていた。 少しして、一台の車がやってくる。家の前――僕の前で停まると、助手席のドアが内側から開けられた。 「おはよう。ごめんな、遅くなった」 運転していたのは日向さんだ。僕の担任の先生で、僕の恋人だ。 「ううん、あの、今日はよろしくおねがいします」 「なんだよ、改まって」 ぺこりと頭を下げて車に乗り込むと、日向さんが目を瞬かせてそう言った。シートベルトを着けながら僕は答える。 「だって、先生の車に乗せてもらうの初めてだから」 「こら。先生は禁止」 「あう、…ごめんなさい」 先生は僕の先生だけど、今は恋人の時間だから、先生って呼んじゃだめなんだった。謝ると、日向さんは苦笑して肩をすくめる。 「学校じゃないんだから、名前で呼んでくれよ。なんだか仕事の気分になっちまう」 「…でも、僕、学校で日向さんって呼びそうになったこと、あるよ」 「それはそれで困るなあ」 僕たちの関係は、誰にも秘密だ。もちろん、学校のみんなにも。 苦笑したまま、日向さんは車を出した。 「今日は、どこ行くの?」 車が大通りに出たあたりで僕は尋ねた。 誰にも内緒の関係だから、僕らが学校の外で会うことはほとんどない。学校の人に見られたらどうなるかなんて、僕にだって想像できる。 でもやっぱり、学校で会うだけじゃ物足りなくて、今日はちょっとだけ、ふたりで遠出することになった。 「んー? ほら、K県のあの水族館、こないだリニューアルしてただろ?」 赤信号で車がストップする。 そういえば、テレビでCMが流れていたな、と思い出した。朝のニュースでもやっていたかもしれない。 でもそれを聞いて、僕は少しだけ不安になった。 「……でも、僕、あんまりお金持ってきてない…」 お母さんには、友だちと遊びに行くって言ってきた。それならってお小遣いももらってきたけど、入場料くらいしか払えなさそうだ。 僕の言葉に、先生はこともなげに言う。 「いいよ、それくらい。俺が好きで連れ回してるんだし」 「……でも」 「いいからいいから! お前は気にしないでいい。…それとも、水族館はいやか?」 ちらって、日向さんが横目で僕を見た。信号はもう青に変わっていたから、一瞬だけ。僕は慌てて首を振る。 「そっ、そんなことない!」 「そっか、よかった」 日向さんと行くなら、どこだってきっと楽しい。それに今日は、はじめてのデートだ。いやなんてこと、絶対にない。 日向さんは、ほっとしたみたいに笑った。 一時間くらい車を走らせて、目的地に着いた。 駐車場には車がひしめいていて、すごく混雑している。リニューアルしたばっかりだからだろう。 車から降りて水族館の入口に近づくと、ますますそれを実感する。 「混んでるね」 「ん、人混み苦手か?」 入場券を買う列に並びながら僕がつぶやくと、日向さんは心配そうに聞いてくる。 「ううん、大丈夫。…はぐれちゃいそうだなって、思っただけ」 「それじゃあ、手でもつなぐか」 冗談めかして日向が言ったので、僕は日向さんを見つめて尋ねた。 「いいの?」 そしたら、日向さんは一瞬固まって、それからぎこちなく僕を見た。 「え……、いや」 「…なんちゃって」 それがなんだか面白くて、僕は少し、笑ってしまった。 「っ、こら!」 「えへへ、ごめんなさい」 入場券を買って、順路に従って館内を進んでいく。中もやっぱり混んでいたけど、展示は見ていて楽しいものばかりだ。 この魚はきれいだねとか、面白い形だとか、そんな話をしながら進んでいくと、いちばん大きな水槽の前まで来た。やっぱりというか、その近くは特に混んでいて、水槽は遠目にしか見ることができない。 「おー、あれ、エイか。でかいなー」 「きれいだね」 それでも、高さがあるから中で泳いでいる魚の姿は見ることができる。日向さんが感心したふうにつぶやいて、でもそれから、残念そうに言った。 「やっぱり、もうちょっと静かなときに来たかったな」 水槽の中は、上から差し込んでくる光でキラキラしていて、その光が日向さんの顔にも反射していた。 「先生、水族館好きなの?」 「先生は禁止な。…そうだな、実家が海の近くなんだよ」 僕が聞くと、日向さんは水槽を見つめたまま答えた。そういえば先生の子供の頃の話って、聞いたことないな。 「ここよりずっと小さいけど、実家の近くにも水族館があったんだ。よく連れて行ってもらってた」 もうなくなったんだけど、と日向さんは続けた。 「だからまあ、こういう大きい水槽よりか、あっちの方の小さい水槽のほうが馴染みはあるかな」 目の前の大きな水槽から視線をずらして、日向さんは順路の先の、小さな水槽が並んだあたりを指さす。でも僕は、その指の先を追いかけることはしなかった。 「日向さん」 「ん、なん――」 日向さんの唇をかすめるみたいに、僕はキスをした。その感触に気づいた日向さんが慌てた顔をする。 「おっ、おまっ、」 「ごめんなさい。でも」 謝りはしたけど、あんまり悪いことをしたとは思わなかった。それよりも、焦る日向さんが可愛いな、とか考えていた。 「したくなっちゃったから」 日向さんを見つめたままそう言って、その手を握る。日向さんは一度、びくりと肩を震わせて、でもそれから、僕の手を握り返してくれた。 薄暗い空間でも、日向さんが顔を赤くしているのがわかる。 「…っ、なんで、そんないきなり……」 「わかんない」 日向さんの手を引いて、僕は小走りに水槽の前から離れていく。人混みの間を縫って、順路を進んで、出口の方へ。 「たぶん、先生が僕の知らない顔、してたから」 足早に水族館を出て、車に乗り込んだ。 「どーすんだよ…、このへん、ホテルなんかないだろ」 「あったよ」 頬を赤らめたまま、運転席に座った日向さんにスマホで地図を見せると、ぐう、と唸るみたいな声を上げた。 「変なとこで手際いいな…」 恨めしそうにつぶやいて、ハンドルを握る。そわそわと落ち着かない様子で運転する日向さんを、僕はじっと見つめていた。 たぶん、日向さんも僕が見ていることには気づいてる。たまに、なにか言いたそうに口を開いて、でも何もいわないで口を閉じる。そんなことを繰り返していたから。 「日向さん」 「…なんだよ」 「そんなエッチな顔して運転してたら、他の人に見られちゃうよ」 ぎり、と日向さんが奥歯を噛み締めて言った。 「…お前が、見るからだろ…!」 そう言われても、目を逸らすなんてこと、できそうにない。だから僕は、その言葉には答えずに続ける。 「日向さん」 日向さんは答えない。でも、構わなかった。 「ホテルに着いたら、いっぱいキスしようね」 焦ったような、悔しそうな日向さんの横顔を見つめていると、頭の中がぐるぐるしてくる。 「いっぱい触りっこして、気持ちいいこと、たくさんしようね」 ホテルに着いたあとのことを想像すると、僕だってじれったい。早く、はやく触りたい。けど―― 「だから、もうちょっとだけ我慢だね」 そう、今はまだ、我慢。日向さんが、一瞬だけ、視線を僕の方によこした。 「僕もね、早く、日向さんに触りたいな。日向さんの、もっとエッチな顔、見てみたい」 キスができないなら、手を握りたいけど、日向さんは今運転中だから。僕はじっと、彼の横顔を見つめ続ける。見つめて、つぶやく。 「日向さんと、セックスしたいな」 「……っ」 日向さんが、はあ、と息を吐いた。 吐息は、すっかり熱くなっていた。 ホテルに着いたら、部屋を選ぶ余裕もなくキーを受け取って、ふたりでエレベーターに乗り込む。 エレベーターのドアが閉まった直後、日向さんが僕を引き寄せて、ちょっと強引にキスをしてきた。 「んぐ、んぅ」 びっくりしたけど、すぐに受け入れた。がっつくみたいに僕を抱きしめてキスをする日向さんは珍しい。いつだって僕はリードされっぱなしなのに。 「んっ、んぁ、はぁっ」 一瞬だけ唇が離れて、今度は僕が日向さんを抱き寄せた。唾液を日向さんの口に流し込むと、じゅる、って下品な音を立てて啜られる。 ああ、本当に、僕のことが欲しいんだ。 そう思ったら、ますます興奮した。 「さがみっ…」 「わ、わっ」 気づいたときにはエレベーターは止まっていた。目的の階に着いて、日向さんが僕の手をぐいぐい引いて部屋に向かう。部屋に入ったら、玄関の壁に僕を押し付けてまたキスの嵐。 あれ、鍵閉めたっけ。そう思ったときに、日向さんの体のうしろから鍵の閉まる音が聞こえた。 「んっ、あ、ひゅうがさん、」 「んむ、っぅん、」 「ま、まっ、ぅぐ、…うぅん」 僕はキスが好きだし、たぶん日向さんも嫌いじゃないんだろうけど、こんなに夢中になってキスをするのは初めてかもしれない。ちょっと待って、と言う声さえキスで遮られて、日向さんはまだしばらくは満足しなさそうだ。 されるがままキスを受け入れながら、僕は日向さんの体を撫でた。腰とか、脇腹とか、それからお尻。お尻の肉を揉み合わせるみたいにぎゅって掴んで手を動かすと、日向さんが僕の体に腰を擦りつけてきた。 「んっ、ぁ、」 「…ねぇ、日向さん」 甘い声をこぼして日向さんがようやく唇を離したときに、僕はささやいた。 「もう、僕、日向さんの中に入りたい」 「……ん」 日向さんうなずくいて、ぺろりと自分の唇を舐めた。 ベッドに寝転がった日向さんが、慌ただしくズボンを脱いで、下着と一緒にベッドの外に放り投げる。 「あっ…、さがみ、なぁ、早く…っ」 下半身だけ裸で、もどかしそうに体を捩らせる日向さんはすごくエッチだ。僕は言われるまま日向さんに飛びつきたい気持ちをこらえて、今にも僕に乗っかってきそうな日向さんを制止する。たぶん僕の顔は、すごく情けないものになっている。 「ま、まって、ほぐさないと…」 「んなの、いいから…!」 日向さんが脚を大きく開いてお尻の穴を指で割り開いた。 「昨日も、ひとりでしたから…っ、まだ、柔らかいから…」 僕の口から、ううってうめき声が溢れる。だめだめ、もうちょっとだけ我慢して、僕。 「まっ、待ってってば、濡らさないと、だめでしょう?」 そうだ、準備はちゃんとしないといけない。日向さんと恋人同士になって、教えてもらったんだ。日向さんの気持ちいいところも、気持ちよくなるためにしなきゃいけないことも。 「う、さがみ、お前…っ」 なのに、当の日向さんは僕を恨めしそうに睨みつける。 「あんだけ煽っといて、焦らすんじゃねーよ…!」 少しだけ涙の浮かんだ目でそう言って、日向さんが僕に何かを投げつけてきた。鼻先にぺちん、と当たったのはアメニティのローションの包みだ。 「だって、僕だって、すぐしたいけど…、準備は、しないと」 それを手にとって封を開けて、中身を手のひらから日向さんのお尻に垂らしていく。 「日向さんも、…僕も、痛いのは、いやだし」 上目遣いにそう言うと、日向さんはまだ僕を睨んでいたけど、とりあえず納得はしてくれたみたいだった。 日向さんが昨日ひとりでしたっていうのは本当みたいで、お尻の穴は柔らかかった。ローションをたっぷり中にまとわせてから、指を引き抜く。 「日向さん、入れるね」 「ん…はやく」 待ちきれないみたいにお尻を押し付けてくる日向さんの中に、僕のおちんちんを入れていく。 「っあ…! き、たぁっ…!」 「あっ、きもちぃ…っ」 ぐぬ、ぐぷ、っておちんちんがどんどん奥に入っていく。日向さんが体を震わせて、中もぎゅうって僕のおちんちんを締め付けた。 いつもよりちょっときついかもしれない。でも痛いわけじゃなくて、おちんちんを抱きしめられてるみたいで気持ちいい。 「はぁっ…、ちんぽきたぁっ、おくっ、いきどまりのとこっ、もっとほしっ…」 「っ、うん、ここ? 日向さん、ここ、気持ちいい?」 僕が動くより先に、日向さんが腰を揺らす。教えてもらった気持ちいいところをおちんちんで突くと、日向さんが高い声をあげて喘いだ。 「んっ、いいっ…! あ、そこ、ずんって、されるとっ…、ぁう、あっ、」 「あ…っ、日向さんのなか、きゅうきゅうしてる…っ」 きゅうきゅう、ぎゅうって日向さんの中がおちんちんを締め付けてくる。奥の方がびくびくって震え始める。あ、もう少しかな。 「だって、きもちい…っ! ひぅ、あぁ、ゃ、だめ、いく、いっちゃう…!」 「んっ、いいよ、イッて? いっぱい、きもちくなって?」 もっと日向さんの気持ちいいところを突こうとしたら、日向さんはぶんぶん首を振ってこう訴えた。 「やっ、やらやらっ、まだ、いくのやだ…っ! もっと、さがみときもちぃの、したいぃっ…!」 でも、そんなふうに言われたら、もっともっと気持ちよくなってほしくなる。僕はいっそう強く日向さんに腰を打ち付けながら言った。 「だいじょうぶだよ…っ、日向さん、いっぱいイケるでしょ…? 僕も、いっぱい気持ちよく、なりたいもんっ…!」 「う、ぁぅ、あぁ、いく、いっ…っ!」 日向さんのおちんちんから、精液がびゅうって吹き出す。中がきつく締まって、僕も射精した。 「ふ、ぁ、はぁ…っ」 「んっ…、すご、いっぱい、でたぁ…」 日向さんがぼうっとした声でつぶやく。日向さんの中は、ローションと僕の精液でもうどろどろだ。 射精の間も日向さんにぐりぐり腰を押し付けながら、僕は日向さんの上にもたれかかった。 「は…、あぅ…、あ、あっ?」 日向さんの中はまだびくびくしている。僕のおちんちんをどんどん気持ちよくしてくれる。イッたばっかりなのに、僕のおちんちんはすぐにまた勃起してしまった。 「日向さんのなか、どろどろになっちゃった…、っあ、ほら、ぐちゃぐちゃって、いってる…」 どろどろのなかでおちんちんが往復するのが気持ちよくて、腰の動きはだんだん早く、強くなっていく。日向さんが慌てた声をあげた。 「や、まだ、動くなよぉ…っ、もうちょっと、まって…っ」 「やだ。日向さんだって、もっとしたいって言ったでしょ?」 「う、それとこれとは別…っ、あ、うぁ」 イッたばっかりで力の抜けた日向さんを組み敷いて、僕は腰を動かした。肌と肌のぶつかる、ぱんぱんって音が部屋に響く。 「あはっ、日向さんのなかも、僕のおちんちん、ぎゅうってしてるよ…? ぎゅっ、ぎゅうって、ね、わかるでしょ?」 「やぁ、だって、ちんぽ、奥までくるから…っ」 日向さんの奥をとんって突くと、柔らかいひだがぎゅって締まって、それからまた柔らかくとろけていく。おちんちんまで溶けそうなくらい気持ちよくて、僕は夢中で腰を振った。 「なか、こんなにぬるぬるなのに…、ぎゅうぎゅうに狭くって、すごい、きもちい…っ、どんどん、奥まで入っちゃいそう…」 「あ、あっ、や、おくっ、ずんずんくる…っ! さがみのちんぽっ、いちばんおくまで、きてる…!」 日向さんと、いちばん奥まで繋がっている。気持ちいい、幸せ、好き、だいすき。そんな気持ちが溢れてたまらない。 「んっ…、ね、日向さんも、気持ちいい? おちんちんでずんずんってするの、きもちい?」 「いいっ! ぁ、もっと、もっとして、ちんぽもっとして、おれのまんこっ、いっぱいハメて、相模専用のちんぽ穴にしてっ」 「うんっ、するっ…! 日向さんもっ、日向さんのおまんこもっ、僕のだからねっ? おまんこできるの、僕だけだからねっ!」 日向さんが何度もうなずく。日向さんのなかは、さっきからずっとびくびく震えている。僕は思い切り奥までおちんちんで貫きながら言った。 「僕のおちんちんじゃないと、ダメになっちゃえっ!」 「ひっ…! い――あっ……!」 びく、びく、って、日向さんの体が痙攣する。 精液を搾り取られるみたいに中が締め付けてきて、僕はまた、たぶんさっきよりもたくさん、射精した。 「…っ、ぁ…、…は……、ぃ、たぁ…っ」 ぐったりした日向さんがつぶやく。 「あっ…、まだ、きゅうきゅうしてる…っ」 「…ぁぅ……、ちんぽ、すごぃい…、も、ほんとに…、ちんぽ穴になる…、さがみの、オナホになる…っ」 日向さんのなかが、また締まった。 「んっ…、やだよ、オナホなんて言わないで」 甘えるみたいに日向さんの首筋に顔を埋めて、僕は言う。 「日向さんは、僕の恋人なんだから」 日向さんの体は汗で湿っていた。抱き合っているとあったかくて、セックスするのとは違う気持ちよさがある。 「日向さんには、僕だけだし…僕には、日向さんだけなんだよ」 「っん…、そ、っか、…っあ、や、まだ…っ?」 ふたりで抱き合っているのも気持ちいいけど…でも、やっぱり僕は、まだ物足りないみたいだ。 「…だめ?」 上目遣いで聞く。日向さんは唇を尖らせて答えた。 「…だめ、じゃないけど…っ、今日、帰れなくなる、かも…」 「そしたら、ふたりでお泊りだね」 「……どんどん、悪いこと覚えてくな?」 「先生が、教えてくれるんだよ」 「だから、先生は禁止…っあ、こらっ」 ぐうって日向さんの中を突き上げる。日向さんが慌てた声をあげるけど、本気で嫌がってるわけじゃないことはわかってる。 「日向さん、もっとセックスしよ? ほんとに、僕専用になっちゃうくらい」 「…じゃあ、お前が俺専用になるまで、付き合ってくれるか?」 日向さんが僕を見上げて尋ねる。僕の答えは、もちろん決まっている。 「日向さん専用になっても、一緒にいるよ」

ともだちにシェアしよう!