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水族館デート、のはずが…
SMSのメッセージで指定された時間になって、僕は家の前でその人を待っていた。
少しして、一台の車がやってくる。家の前――僕の前で停まると、助手席のドアが内側から開けられた。
「おはよう。ごめんな、遅くなった」
運転していたのは日向さんだ。僕の担任の先生で、僕の恋人だ。
「ううん、あの、今日はよろしくおねがいします」
「なんだよ、改まって」
ぺこりと頭を下げて車に乗り込むと、日向さんが目を瞬かせてそう言った。シートベルトを着けながら僕は答える。
「だって、先生の車に乗せてもらうの初めてだから」
「こら。先生は禁止」
「あう、…ごめんなさい」
先生は僕の先生だけど、今は恋人の時間だから、先生って呼んじゃだめなんだった。謝ると、日向さんは苦笑して肩をすくめる。
「学校じゃないんだから、名前で呼んでくれよ。なんだか仕事の気分になっちまう」
「…でも、僕、学校で日向さんって呼びそうになったこと、あるよ」
「それはそれで困るなあ」
僕たちの関係は、誰にも秘密だ。もちろん、学校のみんなにも。
苦笑したまま、日向さんは車を出した。
「今日は、どこ行くの?」
車が大通りに出たあたりで僕は尋ねた。
誰にも内緒の関係だから、僕らが学校の外で会うことはほとんどない。学校の人に見られたらどうなるかなんて、僕にだって想像できる。
でもやっぱり、学校で会うだけじゃ物足りなくて、今日はちょっとだけ、ふたりで遠出することになった。
「んー? ほら、K県のあの水族館、こないだリニューアルしてただろ?」
赤信号で車がストップする。
そういえば、テレビでCMが流れていたな、と思い出した。朝のニュースでもやっていたかもしれない。
でもそれを聞いて、僕は少しだけ不安になった。
「……でも、僕、あんまりお金持ってきてない…」
お母さんには、友だちと遊びに行くって言ってきた。それならってお小遣いももらってきたけど、入場料くらいしか払えなさそうだ。
僕の言葉に、先生はこともなげに言う。
「いいよ、それくらい。俺が好きで連れ回してるんだし」
「……でも」
「いいからいいから! お前は気にしないでいい。…それとも、水族館はいやか?」
ちらって、日向さんが横目で僕を見た。信号はもう青に変わっていたから、一瞬だけ。僕は慌てて首を振る。
「そっ、そんなことない!」
「そっか、よかった」
日向さんと行くなら、どこだってきっと楽しい。それに今日は、はじめてのデートだ。いやなんてこと、絶対にない。
日向さんは、ほっとしたみたいに笑った。
一時間くらい車を走らせて、目的地に着いた。
駐車場には車がひしめいていて、すごく混雑している。リニューアルしたばっかりだからだろう。
車から降りて水族館の入口に近づくと、ますますそれを実感する。
「混んでるね」
「ん、人混み苦手か?」
入場券を買う列に並びながら僕がつぶやくと、日向さんは心配そうに聞いてくる。
「ううん、大丈夫。…はぐれちゃいそうだなって、思っただけ」
「それじゃあ、手でもつなぐか」
冗談めかして日向が言ったので、僕は日向さんを見つめて尋ねた。
「いいの?」
そしたら、日向さんは一瞬固まって、それからぎこちなく僕を見た。
「え……、いや」
「…なんちゃって」
それがなんだか面白くて、僕は少し、笑ってしまった。
「っ、こら!」
「えへへ、ごめんなさい」
入場券を買って、順路に従って館内を進んでいく。中もやっぱり混んでいたけど、展示は見ていて楽しいものばかりだ。
この魚はきれいだねとか、面白い形だとか、そんな話をしながら進んでいくと、いちばん大きな水槽の前まで来た。やっぱりというか、その近くは特に混んでいて、水槽は遠目にしか見ることができない。
「おー、あれ、エイか。でかいなー」
「きれいだね」
それでも、高さがあるから中で泳いでいる魚の姿は見ることができる。日向さんが感心したふうにつぶやいて、でもそれから、残念そうに言った。
「やっぱり、もうちょっと静かなときに来たかったな」
水槽の中は、上から差し込んでくる光でキラキラしていて、その光が日向さんの顔にも反射していた。
「先生、水族館好きなの?」
「先生は禁止な。…そうだな、実家が海の近くなんだよ」
僕が聞くと、日向さんは水槽を見つめたまま答えた。そういえば先生の子供の頃の話って、聞いたことないな。
「ここよりずっと小さいけど、実家の近くにも水族館があったんだ。よく連れて行ってもらってた」
もうなくなったんだけど、と日向さんは続けた。
「だからまあ、こういう大きい水槽よりか、あっちの方の小さい水槽のほうが馴染みはあるかな」
目の前の大きな水槽から視線をずらして、日向さんは順路の先の、小さな水槽が並んだあたりを指さす。でも僕は、その指の先を追いかけることはしなかった。
「日向さん」
「ん、なん――」
日向さんの唇をかすめるみたいに、僕はキスをした。その感触に気づいた日向さんが慌てた顔をする。
「おっ、おまっ、」
「ごめんなさい。でも」
謝りはしたけど、あんまり悪いことをしたとは思わなかった。それよりも、焦る日向さんが可愛いな、とか考えていた。
「したくなっちゃったから」
日向さんを見つめたままそう言って、その手を握る。日向さんは一度、びくりと肩を震わせて、でもそれから、僕の手を握り返してくれた。
薄暗い空間でも、日向さんが顔を赤くしているのがわかる。
「…っ、なんで、そんないきなり……」
「わかんない」
日向さんの手を引いて、僕は小走りに水槽の前から離れていく。人混みの間を縫って、順路を進んで、出口の方へ。
「たぶん、先生が僕の知らない顔、してたから」
足早に水族館を出て、車に乗り込んだ。
「どーすんだよ…、このへん、ホテルなんかないだろ」
「あったよ」
頬を赤らめたまま、運転席に座った日向さんにスマホで地図を見せると、ぐう、と唸るみたいな声を上げた。
「変なとこで手際いいな…」
恨めしそうにつぶやいて、ハンドルを握る。そわそわと落ち着かない様子で運転する日向さんを、僕はじっと見つめていた。
たぶん、日向さんも僕が見ていることには気づいてる。たまに、なにか言いたそうに口を開いて、でも何もいわないで口を閉じる。そんなことを繰り返していたから。
「日向さん」
「…なんだよ」
「そんなエッチな顔して運転してたら、他の人に見られちゃうよ」
ぎり、と日向さんが奥歯を噛み締めて言った。
「…お前が、見るからだろ…!」
そう言われても、目を逸らすなんてこと、できそうにない。だから僕は、その言葉には答えずに続ける。
「日向さん」
日向さんは答えない。でも、構わなかった。
「ホテルに着いたら、いっぱいキスしようね」
焦ったような、悔しそうな日向さんの横顔を見つめていると、頭の中がぐるぐるしてくる。
「いっぱい触りっこして、気持ちいいこと、たくさんしようね」
ホテルに着いたあとのことを想像すると、僕だってじれったい。早く、はやく触りたい。けど――
「だから、もうちょっとだけ我慢だね」
そう、今はまだ、我慢。日向さんが、一瞬だけ、視線を僕の方によこした。
「僕もね、早く、日向さんに触りたいな。日向さんの、もっとエッチな顔、見てみたい」
キスができないなら、手を握りたいけど、日向さんは今運転中だから。僕はじっと、彼の横顔を見つめ続ける。見つめて、つぶやく。
「日向さんと、セックスしたいな」
「……っ」
日向さんが、はあ、と息を吐いた。
吐息は、すっかり熱くなっていた。
ホテルに着いたら、部屋を選ぶ余裕もなくキーを受け取って、ふたりでエレベーターに乗り込む。
エレベーターのドアが閉まった直後、日向さんが僕を引き寄せて、ちょっと強引にキスをしてきた。
「んぐ、んぅ」
びっくりしたけど、すぐに受け入れた。がっつくみたいに僕を抱きしめてキスをする日向さんは珍しい。いつだって僕はリードされっぱなしなのに。
「んっ、んぁ、はぁっ」
一瞬だけ唇が離れて、今度は僕が日向さんを抱き寄せた。唾液を日向さんの口に流し込むと、じゅる、って下品な音を立てて啜られる。
ああ、本当に、僕のことが欲しいんだ。
そう思ったら、ますます興奮した。
「さがみっ…」
「わ、わっ」
気づいたときにはエレベーターは止まっていた。目的の階に着いて、日向さんが僕の手をぐいぐい引いて部屋に向かう。部屋に入ったら、玄関の壁に僕を押し付けてまたキスの嵐。
あれ、鍵閉めたっけ。そう思ったときに、日向さんの体のうしろから鍵の閉まる音が聞こえた。
「んっ、あ、ひゅうがさん、」
「んむ、っぅん、」
「ま、まっ、ぅぐ、…うぅん」
僕はキスが好きだし、たぶん日向さんも嫌いじゃないんだろうけど、こんなに夢中になってキスをするのは初めてかもしれない。ちょっと待って、と言う声さえキスで遮られて、日向さんはまだしばらくは満足しなさそうだ。
されるがままキスを受け入れながら、僕は日向さんの体を撫でた。腰とか、脇腹とか、それからお尻。お尻の肉を揉み合わせるみたいにぎゅって掴んで手を動かすと、日向さんが僕の体に腰を擦りつけてきた。
「んっ、ぁ、」
「…ねぇ、日向さん」
甘い声をこぼして日向さんがようやく唇を離したときに、僕はささやいた。
「もう、僕、日向さんの中に入りたい」
「……ん」
日向さんうなずくいて、ぺろりと自分の唇を舐めた。
ベッドに寝転がった日向さんが、慌ただしくズボンを脱いで、下着と一緒にベッドの外に放り投げる。
「あっ…、さがみ、なぁ、早く…っ」
下半身だけ裸で、もどかしそうに体を捩らせる日向さんはすごくエッチだ。僕は言われるまま日向さんに飛びつきたい気持ちをこらえて、今にも僕に乗っかってきそうな日向さんを制止する。たぶん僕の顔は、すごく情けないものになっている。
「ま、まって、ほぐさないと…」
「んなの、いいから…!」
日向さんが脚を大きく開いてお尻の穴を指で割り開いた。
「昨日も、ひとりでしたから…っ、まだ、柔らかいから…」
僕の口から、ううってうめき声が溢れる。だめだめ、もうちょっとだけ我慢して、僕。
「まっ、待ってってば、濡らさないと、だめでしょう?」
そうだ、準備はちゃんとしないといけない。日向さんと恋人同士になって、教えてもらったんだ。日向さんの気持ちいいところも、気持ちよくなるためにしなきゃいけないことも。
「う、さがみ、お前…っ」
なのに、当の日向さんは僕を恨めしそうに睨みつける。
「あんだけ煽っといて、焦らすんじゃねーよ…!」
少しだけ涙の浮かんだ目でそう言って、日向さんが僕に何かを投げつけてきた。鼻先にぺちん、と当たったのはアメニティのローションの包みだ。
「だって、僕だって、すぐしたいけど…、準備は、しないと」
それを手にとって封を開けて、中身を手のひらから日向さんのお尻に垂らしていく。
「日向さんも、…僕も、痛いのは、いやだし」
上目遣いにそう言うと、日向さんはまだ僕を睨んでいたけど、とりあえず納得はしてくれたみたいだった。
日向さんが昨日ひとりでしたっていうのは本当みたいで、お尻の穴は柔らかかった。ローションをたっぷり中にまとわせてから、指を引き抜く。
「日向さん、入れるね」
「ん…はやく」
待ちきれないみたいにお尻を押し付けてくる日向さんの中に、僕のおちんちんを入れていく。
「っあ…! き、たぁっ…!」
「あっ、きもちぃ…っ」
ぐぬ、ぐぷ、っておちんちんがどんどん奥に入っていく。日向さんが体を震わせて、中もぎゅうって僕のおちんちんを締め付けた。
いつもよりちょっときついかもしれない。でも痛いわけじゃなくて、おちんちんを抱きしめられてるみたいで気持ちいい。
「はぁっ…、ちんぽきたぁっ、おくっ、いきどまりのとこっ、もっとほしっ…」
「っ、うん、ここ? 日向さん、ここ、気持ちいい?」
僕が動くより先に、日向さんが腰を揺らす。教えてもらった気持ちいいところをおちんちんで突くと、日向さんが高い声をあげて喘いだ。
「んっ、いいっ…! あ、そこ、ずんって、されるとっ…、ぁう、あっ、」
「あ…っ、日向さんのなか、きゅうきゅうしてる…っ」
きゅうきゅう、ぎゅうって日向さんの中がおちんちんを締め付けてくる。奥の方がびくびくって震え始める。あ、もう少しかな。
「だって、きもちい…っ! ひぅ、あぁ、ゃ、だめ、いく、いっちゃう…!」
「んっ、いいよ、イッて? いっぱい、きもちくなって?」
もっと日向さんの気持ちいいところを突こうとしたら、日向さんはぶんぶん首を振ってこう訴えた。
「やっ、やらやらっ、まだ、いくのやだ…っ! もっと、さがみときもちぃの、したいぃっ…!」
でも、そんなふうに言われたら、もっともっと気持ちよくなってほしくなる。僕はいっそう強く日向さんに腰を打ち付けながら言った。
「だいじょうぶだよ…っ、日向さん、いっぱいイケるでしょ…? 僕も、いっぱい気持ちよく、なりたいもんっ…!」
「う、ぁぅ、あぁ、いく、いっ…っ!」
日向さんのおちんちんから、精液がびゅうって吹き出す。中がきつく締まって、僕も射精した。
「ふ、ぁ、はぁ…っ」
「んっ…、すご、いっぱい、でたぁ…」
日向さんがぼうっとした声でつぶやく。日向さんの中は、ローションと僕の精液でもうどろどろだ。
射精の間も日向さんにぐりぐり腰を押し付けながら、僕は日向さんの上にもたれかかった。
「は…、あぅ…、あ、あっ?」
日向さんの中はまだびくびくしている。僕のおちんちんをどんどん気持ちよくしてくれる。イッたばっかりなのに、僕のおちんちんはすぐにまた勃起してしまった。
「日向さんのなか、どろどろになっちゃった…、っあ、ほら、ぐちゃぐちゃって、いってる…」
どろどろのなかでおちんちんが往復するのが気持ちよくて、腰の動きはだんだん早く、強くなっていく。日向さんが慌てた声をあげた。
「や、まだ、動くなよぉ…っ、もうちょっと、まって…っ」
「やだ。日向さんだって、もっとしたいって言ったでしょ?」
「う、それとこれとは別…っ、あ、うぁ」
イッたばっかりで力の抜けた日向さんを組み敷いて、僕は腰を動かした。肌と肌のぶつかる、ぱんぱんって音が部屋に響く。
「あはっ、日向さんのなかも、僕のおちんちん、ぎゅうってしてるよ…? ぎゅっ、ぎゅうって、ね、わかるでしょ?」
「やぁ、だって、ちんぽ、奥までくるから…っ」
日向さんの奥をとんって突くと、柔らかいひだがぎゅって締まって、それからまた柔らかくとろけていく。おちんちんまで溶けそうなくらい気持ちよくて、僕は夢中で腰を振った。
「なか、こんなにぬるぬるなのに…、ぎゅうぎゅうに狭くって、すごい、きもちい…っ、どんどん、奥まで入っちゃいそう…」
「あ、あっ、や、おくっ、ずんずんくる…っ! さがみのちんぽっ、いちばんおくまで、きてる…!」
日向さんと、いちばん奥まで繋がっている。気持ちいい、幸せ、好き、だいすき。そんな気持ちが溢れてたまらない。
「んっ…、ね、日向さんも、気持ちいい? おちんちんでずんずんってするの、きもちい?」
「いいっ! ぁ、もっと、もっとして、ちんぽもっとして、おれのまんこっ、いっぱいハメて、相模専用のちんぽ穴にしてっ」
「うんっ、するっ…! 日向さんもっ、日向さんのおまんこもっ、僕のだからねっ? おまんこできるの、僕だけだからねっ!」
日向さんが何度もうなずく。日向さんのなかは、さっきからずっとびくびく震えている。僕は思い切り奥までおちんちんで貫きながら言った。
「僕のおちんちんじゃないと、ダメになっちゃえっ!」
「ひっ…! い――あっ……!」
びく、びく、って、日向さんの体が痙攣する。
精液を搾り取られるみたいに中が締め付けてきて、僕はまた、たぶんさっきよりもたくさん、射精した。
「…っ、ぁ…、…は……、ぃ、たぁ…っ」
ぐったりした日向さんがつぶやく。
「あっ…、まだ、きゅうきゅうしてる…っ」
「…ぁぅ……、ちんぽ、すごぃい…、も、ほんとに…、ちんぽ穴になる…、さがみの、オナホになる…っ」
日向さんのなかが、また締まった。
「んっ…、やだよ、オナホなんて言わないで」
甘えるみたいに日向さんの首筋に顔を埋めて、僕は言う。
「日向さんは、僕の恋人なんだから」
日向さんの体は汗で湿っていた。抱き合っているとあったかくて、セックスするのとは違う気持ちよさがある。
「日向さんには、僕だけだし…僕には、日向さんだけなんだよ」
「っん…、そ、っか、…っあ、や、まだ…っ?」
ふたりで抱き合っているのも気持ちいいけど…でも、やっぱり僕は、まだ物足りないみたいだ。
「…だめ?」
上目遣いで聞く。日向さんは唇を尖らせて答えた。
「…だめ、じゃないけど…っ、今日、帰れなくなる、かも…」
「そしたら、ふたりでお泊りだね」
「……どんどん、悪いこと覚えてくな?」
「先生が、教えてくれるんだよ」
「だから、先生は禁止…っあ、こらっ」
ぐうって日向さんの中を突き上げる。日向さんが慌てた声をあげるけど、本気で嫌がってるわけじゃないことはわかってる。
「日向さん、もっとセックスしよ? ほんとに、僕専用になっちゃうくらい」
「…じゃあ、お前が俺専用になるまで、付き合ってくれるか?」
日向さんが僕を見上げて尋ねる。僕の答えは、もちろん決まっている。
「日向さん専用になっても、一緒にいるよ」
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