1 / 1

第1話

季節外れの雪が降り積もる。 ほころび始めた五分咲きの桜に綿帽子。 あぁ。あの日もこんな日でしたね。覚えていますか? 僕が初めて知り初めて失った想いは今も流れ行く 君は今どうしていますか? あなたと出会ってモノクロの僕に色が着いたのです。 この白い雪もこの淡いさくら色も君が教えてくれました ねえ。愛しています 誰にも届かない想いを僕の胸に抱き締めて… あなたの瞳と共に生き抜きます。 それが君の願いだから ねぇ。あなたは後悔などしていないですか? 僕は…後悔ばかりです もっとあなたの姿を見たかった もっとあなたとふれあいたかった もっと…もっと… 「安曇。そろそろ行くよ」 「はい。すぐに参ります」 「…なごり雪…だね。あの子も見ているだろうか?…ふふ…案外側にいるかもしれないね」 ひらりひらりと舞い散る一枚の花びらが僕の肩に止まる 「さて…安曇…君はこれからあの子と共に歩むんだ。あの子がそれを望んだのだから」 「はい」 あなたに良く似た彼の手を取り私は歩き出す 「さようなら…僕の愛する人…来世ではきっと…」

ともだちにシェアしよう!