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第1話
季節外れの雪が降り積もる。
ほころび始めた五分咲きの桜に綿帽子。
あぁ。あの日もこんな日でしたね。覚えていますか?
僕が初めて知り初めて失った想いは今も流れ行く
君は今どうしていますか?
あなたと出会ってモノクロの僕に色が着いたのです。
この白い雪もこの淡いさくら色も君が教えてくれました
ねえ。愛しています
誰にも届かない想いを僕の胸に抱き締めて…
あなたの瞳と共に生き抜きます。
それが君の願いだから
ねぇ。あなたは後悔などしていないですか?
僕は…後悔ばかりです
もっとあなたの姿を見たかった
もっとあなたとふれあいたかった
もっと…もっと…
「安曇。そろそろ行くよ」
「はい。すぐに参ります」
「…なごり雪…だね。あの子も見ているだろうか?…ふふ…案外側にいるかもしれないね」
ひらりひらりと舞い散る一枚の花びらが僕の肩に止まる
「さて…安曇…君はこれからあの子と共に歩むんだ。あの子がそれを望んだのだから」
「はい」
あなたに良く似た彼の手を取り私は歩き出す
「さようなら…僕の愛する人…来世ではきっと…」
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