6 / 668

この夫婦の家には、代々伝わる言い伝えがあった。 「双子が生まれた場合は、一人は鬼へ捧げよ。もう一人は忌み子として宮へ封じなければならぬ。約定に従わなければ、大きな災いが降りかかる」と……。 黒い痣は忌み子の印。 鬼へ捧げられた贄嫁が受ける災難苦難、苦痛のすべてを引き受けて死ぬのが運命(さだめ)。 であれば、 元気な女の子が鬼への捧げ物に……? 漸く授かったというのに、既に行く末が定められてしまった子供たち……。 「いや……っ、嫌よ!」 どうにか惨い運命から逃れさせたい。 生まれながらに小さい男の子は、余命幾ばくもないかもしれない。 けれど、女の子だけなら……どうにかなるのではないのだろうか。 両親は、策を講じた。

ともだちにシェアしよう!