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7月 part2-3

「オーナーは、初めからこの〈クイーン〉を、自分のお店の看板メニューにするつもりだったんでしょう。 だからあえて、ベースは、どのバーにもあるホワイトラムの銘柄、『バカルディ』を使ったんでしょうね。有名すぎる銘柄だからこそ、絶版になることもないし、味にムラがでることもない。 そして、さらに味に深みを出すために、『バカルディ』に、ラムの別銘柄である、『ハバナ3年』を加えています。比率は、おそらくバカルディ45mlに、ハバナ3年を1tspくらい。 そして、オレンジキュラソーと共に、微量ながらオレンジビターズも入れています。オレンジの果汁も入っているので、このへんは季節によって比率を変えているんでしょう。 デコレーションも、よりオレンジの香りが楽しめるように工夫されています。 よく考えられていますよね。深みのある味を出しながら、なおかつ、お客様に安定してご提供できる。いろんな意味で、最高のカクテルだと思います」 にっこりと笑って語る七星。 「…なんで、そんなことが分かる?」 戸惑いながら尋ねる俺。そんな話、入店して四年になろうとしている俺でも聞いたことはない。 「ああ。オーナーの〈クイーン〉は、入店祝いに飲ませてもらいましたからね。覚えていました。ここと、ここで」 七星は、自分の鼻を指差し、次に自分の舌を出して指差す。 …まさか、こいつ…

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