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11月 part 3-5

「なあ拓叶、久しぶりに、あれ、作ってくれんかえ」 「ああ、あれね。ちょっと待ってて! …はい、お待たせ!〈じいちゃんスペシャル〉っ!」 俺はカクテル〈じいちゃんスペシャル〉を七星にも渡してみる。七星は一口飲んで、…そして悶絶した。 「ちょっ…拓叶さんっ! これ、麦焼酎とコーヒーリキュールを1:1で混ぜて、昆布茶で割ってるんですよね! えっ、なんていうか、けっこう個性的な味になってますけど!悪い意味で!」 「確かに個性的な味だけどさ、じいちゃんはこの味が好きなんだよ。なっ、じいちゃん!」 目を白黒させる七星を見て、俺とじいちゃんは肩を叩き合って大笑いする。そんな俺たちを見て、母さんは呆れたように七星に言う。 「ごめんね。うちのじいちゃんの味覚がおかしいのよ。私も飲ませてもらったことあるけど、あれは人間の飲むものじゃないわ。いや、それどころか、ヤマタノオロチでも避けて通る一品よ。 それより七星くん。こっち飲んでみて。拓叶がお母さんに作ってくれた、このカクテル、とってもおいしいわよ」

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