12 / 66

第4話-2

校門を出ると、桜並木の下り坂が続く。入学式には桜、というイメージがあるが、すでに桜の花は散り、葉がつき始めている。晴れているのに霧がかかったようにぼんやりしている空。風はまだ冷たいが、ふんわりとした日の光が暖かい。 「もう、身体は大丈夫?」 いつもの笑顔で大輝が問いかける。もう怒ってはいないみたいだ。少し息を吐いてから、俺は答える。 「ん。悪かったな、その…荷物、届けてもらったし、下着…まで貸してもらって」 恥ずかしくて、後半は声が小さくなる。大輝の顔が見られない。 「別にいいよ。サイズ、大きくなかった?」 「ちょっと大きいけど…まあ気にはならない」 いつもより、ズボンのベルトもきつく締めてるし。 部活用の鞄を肩にかけ直してから、俺は大輝の顔を見上げた。 「ありがとな。洗って返すから」 そう言うと、なぜか大輝は困ったような顔をした。 「そんな気にしないで。むしろ、洗わない方が…」 「ん?そんなわけにいくかよ。洗うくらい手間じゃねえんだから。ちゃんと洗って返すよ」 まったくこいつは、どこまでお人好しなんだか。

ともだちにシェアしよう!