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跳べないバスケ部員

7月の上旬柴崎は帰ってきた。 治療とリハビリを終え、赤い髪をして。 春、あいつは事故に遭った。 子供のふらついた自転車に手を伸ばした途端、センターラインを超えた車が向かってきた。 幸い昼間だったこと、スクールゾーンだったこともあり車のスピードは緩めだった。 それでも無傷でいることはできなかった。 あのジャージの右足には20センチ位の傷があるはず。 治療を受け、リハビリに励む。元々スポーツをしていた体だ。 周囲にも気を使ったのかもしれない。 ずいぶんと早く、そして髪の毛の色を変えて帰ってきた。 日常生活は問題ない。体育の授業は教師が調整している。 そう。激しい運動ができないのだ。 2度とバスケができない体で帰ってきた。 だから皆、普通に接していても一線を引いているのがわかる。 そして、そんなことは柴崎が1番わかっていた。

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