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第1話~アルトという存在~
もうどのくらい一人で生きてきたのだろう・・・
長く生きてきた自分が
最近寂しい。。。と思うようになってきた。
今更とも思うのだが、自分と共に生きるものはいないと思う。
そう思っていたのだが、
両親という存在は、はるか昔に亡くなった。
自分は生まれた時、すでに息をしていなかったらしい。
やっと生まれた我が子の死を認めたくなった母は悪魔と契約し
この身体を悪魔に差し出したらしい。
正直、自分は覚えてはいないが
もう、何十年・・・何百年もこの姿のままだ。
泣き母が交わした悪魔との契約は間違いないと思う。
どんな悪魔と契約をしたのか・・・
そんな記憶は自分にはない。
だが今までこうして生きている以上自分はすでに人ではないのだと思う。
あるとしたら自分の名と今まで生きてきた記憶と
アルトという名・・・
昔はきちんと名はあったが、だらかと過ごすこともなく
今となってはほとんど必要がない。
それはアルトが持っている人ならざる力・・・
人の記憶を変えるものでもあり、
傷を治すものでもあり
自分の想う者を従者に出来る便利でもあり
孤独な力・・・
1人で生きてきたのでそこまで執着するものがない自分には
必要がない気がしていた。
自分が願うのは安らかな死・・・
そして、眠り・・・
だがそれは叶うことのないもの・・・
今まで何度も自分を傷つけてきたが
死ぬことさえも出来ない。
一時的には死んでいるのだろうがいつのまにか傷はふさがっている。
そんなある日、
アルトは真っ黒な犬・・・いや、狼の血が濃く残っていた獣を
拾ってしまった。
傷付いたその黒い獣を拾った日から
アルトの運命が少しづつ変わり始める。
アルトはその獣に名をつけた。
黒かった毛並みはいつの間にか藍色に変わっていた。
名はドイル・・・
小さったその獣は大きくなり、そして、いつもアルトの傍に
寄り添っていた。
そして、アルトは初めて知ったのだ。
愛しいという気持ちと
愛されたいという欲望を・・・
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