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第1話
円と研人の場合
円。→赤瀬円(あかせ えん)。先輩。研人よりも身長が低いのを気にしている。平均身長だと思っている168cmのツンデレさん。顔は可愛らしいが負けん気は強い。押しに弱いので押し切られて関係を結ぶも、実は円も研人のことが好きだったと言うオチ付。
研人。→野村研人(のむら けんと)。後輩。やたら身長がある。2m近い。能天気で天然。ひたすら円が好き。顔は堀が深くモデル並だがモテてる自覚なし。彼のご機嫌を取るのが日常の一コマとなっている。それもこれも好きの極み。彼の犬。
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何故か怒られている。その意味が分からなくて研人は首を傾げていた。
「昨日はあんなに喘いでたのに」
今朝になるとダンマリ攻撃が始まっていたのだった。
「意味分かんない」
でも分からないなりに色々考えてみる。
あの時チューしなかったのが悪かったのかな、とか。
あの時抱き寄せなかったのが悪かったのかな、とか。
考えれば考えるほど色々と出てくるから、どれが正解なのかが分からない。
でも言えることは、怒ってる円さんも素敵だと言うこと。小さい体で威嚇してくるのは、体の大きな研人からするととてもチャーミングに見えてしまうのだ。だから余計に抱きしめて自分だけのものにしてしまいたい。だけどそれはいけないことで、彼の翼を折ってしまうのだと知っている。知っているからこそ、ここまでで留めているのだと言うのに時々こんなことがあると心細くなる。
「あーー、どうしようかな……。何だか分からないけど、ここはひとまず謝ってから理由を聞こうかな」
これが一番手っ取り早いと思った。だから用事を済ませて帰ってきてから彼の前に土下座して「ごめんなさい。どうもすみませんでした」と頭を下げた。
「お前、何謝ってるのか分かってるのか?」
「いや、とりあえず謝ってから、その理由を聞こうかと思ってまして」
「……分かってないのに謝るんじゃねぇよ!」
「すみません」
「すみませんじゃねぇ!」
「悪かったです」
「…」
「何怒ってるのか分からないのに謝って悪かったです」
「…」
「でも俺は円さんが機嫌悪いの大抵俺が原因だから、だから謝ります。機嫌良くなってください」
「……お前が悪いんじゃないから!」
「でも」
「グダグダ抜かすな!」
「ごめんなさい」
「俺が機嫌が悪かったのは……」
「悪かったのは?」
「そのっ……何だ……」
「何ですか?」
「お前と俺の大きさの違いってのを痛感するって言うかっ」
「?」
「お前を受け入れるのに凄く時間かかる自分が嫌って言うか!」
「それって……」
「だから! お前のがおっきいんだってば!」
「…………」
「でもそれはお前のせいじゃないし、受け入れれば俺だってそれなりに感じるしっ…………」
「えっと……」
そんな問題はとうの昔に解決していると思っていた。と言うか、別にそんなに問題視してないと言うか。少なくとも研人の中では全然モーマンタイだったのだが、される相手はいつまでも付きまとう問題だったらしい。
「あのっ……」
「…」
「それ、いつも気にしてたんですか?」
「……」
「俺は円さん可愛いと思うから、このままで全然構わないし。もし突然俺くらい大きくなっても円さんは円さんだと思ってるし。だから何て言うか……」
感じてる円さんは素敵ですよ? と最後に言うと彼の顔が真っ赤に染まった。
「お前って最低」
「え、駄目ですか?」
「じゃなくて。お前のが人よりデカいから俺が喘ぐ声が大きく長くなるのを楽しんでるのが最低最悪ってこと」
「だって俺の円さんですよ? それは俺だけが見られる円さんであって、俺以外のものが見ちゃいけない円さんでもあるわけで」
「…」
「何て言っていいのかな。…円さんが喘ぐ時間が長くて恥ずかしいって言うんならごめんなさいですけど、気持ちいいでしょ?」
「ぁ、うん。それは……」
「じゃ、怒らないでくださいよ。これからもっと注意して触ります。もっともっと円さんが気持ち良くなって、終わってもそんな余分なこと考えないで済むように、これからはいちいち聞きます」
「え…」
「俺、そういうの得意です。間違ってたら教えてくれれば、その都度正しますんで。クヨクヨしないでください。それとも円さん、俺のこと嫌いですか?」
「いや」
「だったら大丈夫」
「…何か違う気がする」
「大丈夫です。これからはことあるごとに言いますし、聞きますね? 俺、円さんが好きです。俺のこと好きですか?」
「…うん…。でもその大きさがな……」
「大丈夫です」
「何か、全然改善してない気がする」
嘆く円に対し、研人は笑顔で首を傾げた。
「全然大丈夫ですよ? 俺は大丈夫ですから」
「だからお前が大丈夫なんじゃなくて、俺が大丈夫じゃないのっ!」
「ん?」
「もううっ!」
円がまたギャーギャー言い出すのを研人は「可愛いなぁ……」と抱きしめた。
「だぁぁっ! もううっ!」
終わり
タイトル「大型犬のいいとこ、悪いとこ」
20190418/20
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