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7.好きな人は誰?
冬休み直前の最大イベントと言えばクリスマス……じゃなくて期末試験だ。進学校だしそろそろ進路も固めないといけないオレたちにとって、この期末試験は重要な意味を持つ。進路を決めてる人はそこを受験できそうかどうか、そして進路が決まってない人にとっては、どの大学が合格範囲内かってことに。まだ1年以上あるけれど、今から少しずつ絞り込んで行くってワケだ。
ちなみにオレ、成績は悪くない。6人の中では一番だと思う。クラスでは……5位には入ってると思うんだけど。まあクラスの順位は関係ないからな、大学受験には。
「なあ智、試験勉強一緒にしない?」
「いいよ。どっちの家でやる?」
亮介は理系は得意だが文系はニガテだ。オレはその逆なので、亮介の提案は有難かったりする。
「じゃあさ、オレも一緒でいい?」
「えー、雅人と一緒に勉強したらバカが染るんじゃね?」
「んなこと言うなよー。智センセ、お願いします!」
むふぅ~。先生って言われて悪い気はしないよな。なんとなく優越感で、オレはニンマリしちゃった。
「んじゃオレんちでいい? お母さんに言ったら晩ごはん作ってくれると思うよ」
そんな提案で3人の勉強会はオレんちになった。
「あーっ、わっかんね! 何でこうなるんよ」
オレんちで始まった勉強会は、最初は数学で次が物理だった。亮介の得意科目。オレもよくわかってなかったんで、亮介の説明を一生懸命聞いた。……で、理解したのはオレだけだった。やっぱ雅人はバカだ。
「もういいや。オレ物理は捨てる。大学も物理の試験が無いとこ受けるし」
結局雅人は開き直っていた。
「智くーん、晩ごはんよ~」
お母さんの声で勉強はいったん中断。お父さんはまだ帰ってきてなかったんで、オレたち3人で晩ごはんを食べた。今日のメニューはから揚げ。旨いからって雅人食いすぎだよ! でもお母さんは、パクパク食べる雅人を見て嬉しそうだった。
晩ごはんの後雅人は家に帰って、今は亮介とふたりで勉強中。なんかめちゃ久しぶり。高1の頃はたまにこうやってふたりで勉強してたけど、高2になってからは初めてかも。
「なあ亮介、亮介は大学どこ考えてるの?」
「うーん、まだ決まってない。何個か考えてるけど、絞りきれてないってゆーか」
試験勉強してたら自然と話題は進路のことに。実のこと言うと、オレは未だに自分の進路を決めかねているんだ。将来なりたいもの? 全く思い浮かばない。
「すげーな。オレ何の目標もないや」
「別にいいんじゃね? 得意科目で大学受けて、将来はそれから考えるで」
亮介のアドバイスは的確だ。そうだよな。自分の将来なんて、高校じゃなく大学に入ってからでも良いんだよな。進学校にいる故のプレッシャーが、亮介のその言葉で消えていくような気がした。
それから暫くの間、お互いのわからないところや、理解不足のところを話し合ったりして勉強を続けた。そして一息ついたとき、ふとオレは思ったことを口に出していた。
「そう言えば亮介、最近女の子と一緒に帰らないよな」
そうなのだ。毎日いろんな女の子と一緒に下校してた亮介が、ここ最近オレと一緒に下校するようになったんだ。今までは信一と一緒だったけど、愛の成せるワザ? 信一はひとり教室で居残り勉強しながら梨奈ちゃんの部活が終わるのを待ってる毎日なのだ。
「ん――、智と一緒に帰りたいから?」
「何だそれ、亮介気持ち悪いぞ」
亮介のそんな言葉にドキドキしつつ、オレはそう返した。
あれっ、何でオレ、ドキドキするんだ?
「そう言えば愛理ちゃんが言ってたけど、亮介好きな人いるんだって?」
なんとなく思い出して、オレは亮介に聞いてみた。興味もあるしな。
「なんだよ、知りたいんかよ」
「モテモテの亮介の好きな人だぜ、知りたいなぁ」
ニヤニヤしてそう答えたら、亮介は困ったような顔をしていた。
「ま、まあ、無理に聞こうとは思わないけどさ。でもオレ含めて気になってる人は多いみたいだぜ」
フォローをしつつ、でも興味あるからそんな言葉を言うオレ。ちょっとズルイ?
「智だよ」
「はっ?」
「だから智が好き」
「って、何言ってくれてんの。やっぱ教えたくないんじゃんか」
そう答えた亮介の顔はすっごく切なそうに見えた……ってきっとオレの勘違い。亮介のヤツ、教えたくないからってオレをからかうこと無いじゃんか。何かしらんけど、オレめちゃめちゃドキドキしちゃったし。まあ、そこらへんはオレの気の迷いってことでガン無視だけどな。
その後は普通に試験勉強して解散した。期末試験まであと一週間、気合入れてかなきゃだな。
でも……、なんでドキドキするんだろ……。
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