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9.クリスマスはみんなで
「こんにちは」
「亮介くんいらっしゃーい。待ってたのよ。ちょっと作りすぎたかもしれないけど、みんな食べ盛りだから大丈夫よね?」
今日はクリスマスイブ。みんなで約束していた日だ。案の定お母さんは、昨日の夜から準備してて、今朝も早くから台所にいたみたいだった。そして完成した料理はかなりの量。これにケーキやお菓子なんかが加わったら、絶対6人じゃ食べきれないと思う。
最初から集まるのは5人。雅人は補習が終わってから参加することになった。
ケーキは愛理ちゃんが焼いて持ってくるって言ってた。お菓子やジュースは、梨奈ちゃん、信一、雅人の3人で買うことになった。亮介は場所提供ってことで免除。オレは……、お母さんの作った大量の料理が参加費ってことになるのかな。
「じゃあいってきます」
「いってらっしゃい。誰もいないからって悪いことしちゃダメよ。亮介くん、智くんのことよろしくね」
そう言って送り出されたオレ。悪いことって何だよ? オレはいたってマジメな高校生だぞ。ブツブツ言っていたオレを見て亮介は笑っていた。オレよりも亮介の方が悪いことしてそうじゃんか。
「智かわいいから、お母さん心配なんじゃないか?」
ニヤニヤしながらそう言ってくるし。健全な男子高校生にかわいいって何だよ。思わず亮介に蹴りを入れてやった。ざまーみろ。
一旦亮介の家に荷物を置いてから、オレたちは待ち合わせ場所の駅に向かった。
「あれぇ、何で雅人がいるの?」
「ふふーん、今日の補習は1限だけ。その代わり明日はみっちりあるけどな」
そんなワケで、雅人も最初から参加することが出来た。
「メリークリスマーッス!」
お決まりの掛け声で、オレたちのクリスマスパーティは始まった。
最初は腹ごしらえってことで、うちのお母さんが作った大量の料理を片付けることに。余るんじゃないかって心配してたけど、食欲旺盛な雅人のおかげで全部キレイに無くなった。うん、きっとお母さんも喜ぶと思う。
次にやったのはプレゼント交換のビンゴだ。これは梨奈ちゃんが用意してきてくれた。3番目にビンゴになったオレが選んだプレゼントは愛理ちゃんからのものだった。中味はチョコレートで、一緒に入ってたカードには来年のバレンタインデーの日付と、『義理愛を込めて』ってのが書かれてあってウケた。
オレは『よいお年を』って書いたカードと一緒に、おもちと小豆缶を用意した。ここらへん愛理ちゃんと発想が似てるかも。で、そのプレゼントは信一に渡ってた。
その後は皆でいろんなゲームをしたり、ケーキ食べたりいろいろ。最後は疲れたんでダベってた。話題はいろいろで、冬季講習の話もした。やっぱ全員どこかの冬季講習を受けるみたいだ。そうだよなぁ、年が明けて春になったら高3、受験生だ。
「勉強のことは今日はヤメてさ、もっと別のこと話そうや」
「良いこと言うじゃん。バカだけど」
「バカは余計だ――ッ」
ちょっと暗くなりかけたところで、雅人がそう言った。すかさずそれに乗った信一。ふたりのおかげで雰囲気が持ち直したと思う。
「はいはーい。せっかくなんで、ちょっとだけ大人の味でーす」
台所にいた愛理ちゃんと亮介が戻ってきた。亮介の手にはお盆。ジュースが入ったグラスが乗ってる。
「大人の味ってジュースじゃねぇの?」
「ディタって言うライチのお酒とグレープフルーツジュースを混ぜたもの。お酒は少なめにしたから大丈夫だと思う。内緒な」
そう言って亮介はニッコリ笑った。オレお酒なんて初めてだ。
「あっ、ジュースみたい。あんまりお酒ってカンジしないね」
「ほとんどジュースだと思うよ」
ホントだ。普通のグレープフルーツジュースよりも甘い。小さいころ、お父さんのビールを一口飲んだことがあったけど、あれは苦くて不味かった。だからお酒って不味いものなんだと思ってたんだ。でも甘いお酒もあるんだな。
未成年だし酔うとマズイんで、みんな1杯だけで終了。でも、雅人とかはもっと飲みたそうな顔をしてた。オレは1杯だけでいいや。なんかフワフワしてきたし……。
「あれーっ、智クン顔赤いよ」
「うわっ、もしかして智酔った?」
「う~ん、なんかフワフワする……」
そしてオレは、よく覚えてないけどヘラヘラ笑ってたような気がする。
気がついたらもう夜で、みんな帰った後だった。
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