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番外編 大切な家族と歩む未来

「遥琉、用意は出来ましたか?」 襖がすっと開いて、橘さんが入ってきた。 「あぁ」 黒羽二重の羽織り着物に仙台平の袴。和の正装に着替えた彼が振り返った。 「何がおかしい⁉」 くすっと苦笑いされて、不機嫌になる彼。 「馬子にも衣装だなって思っただけです。出来れば現役の時にこの姿を拝みたかったです」 「俺には組長になるだけの器量がない」 「そうですね。未知さんにしか興味がないあなたには、この組を担うだけの器量なんてこれっぽっちもないことくらいバカでも分かりますよ」 相変わらず手厳しい橘さん。容赦がない。 「そこまで言うか、普通!?」 「言わないとちゃんと伝わないでしょう」 橘さんがちゃんと着付けが出来ているか、一通り確認してくれた。 「未知さん短時間でよく覚えられましたね」 どういうわけか僕にはいつも優しく接してくれる。 「未知どうした⁉ぼぉーとして」 威風堂々とした彼の晴れ姿にしばし見惚れていたら声を掛けられた。 【えっと・・・その・・・】 そんなにジロジロ見ないで。恥ずかしくなるから。 「自分の夫があまりにも格好いいので見惚れていたんですよ」 「そうなのか未知?」 「いちいち聞かなくても未知さんの表情を見たら分かるでしょう」 やれやれと溜め息を吐く橘さん。 「未知」彼が歩み寄ってきて。 「じゃあ行ってくる」 額に彼の唇が軽く触れた。 「遥香と待ってくれ。すぐに帰るから」 そう言い残し、迎えに来た裕貴さんと根岸さんとともに出掛けていった。 昨日より更に厳重な警備体制が敷かれた。橘さんも心さんも僕たちを守るために留守番を快く引き受けてくれた。 一太は今日だけ幼稚園を休ませて、一番安心出来るお義父さんと一緒にいるから大丈夫。 何事もなく襲名式が終わりますように。彼が無事に帰ってきますようにと神様に祈った。

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