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番外編 パンドラの箱に最後に残るのは

「あのね、おじちゃん。あしたから、ハルちゃん、ようちえんいくんだよ」 「そうか。確か、入園式だったな」 「うん‼ねぇ、おじちゃん」 「ん?」 「ハルちゃんのおねがいきいてくれる?」 「おぅ、なんだ?」 「あした、いっしょにようちえんいこう。ハルちゃんね、パパとママと、ままたんとぱぱたんと、それからおじちゃんいっしょがいい」 「ハルちゃん・・・・」 予想もしていなかった遥香のお願いに、地竜さんは一瞬驚いたように目を見開き、それから顔を手で覆った。 「ごめん、ハルちゃん。おじちゃん、嬉しくて涙が止まらなくなった」 「遥琉さん……地竜さん……」 足音を忍ばせ、そぉーと子どもたちが寝ている座敷を覗き込んだ。 一太も遥香も地竜さんにぴたりと張り付き片時も離れようとはしなくて。 普段は滅多に駄々を捏ねることがない一太と遥香が、寝るのいやだ‼と駄々を捏ね、なかなか寝てくれなかった。 ほとほと困り果てていたら、彼と地竜さんが代わりに寝かし付けを引き受けてくれた。 「二人ともようやく寝てくれた」 添い寝していた彼と地竜さんが二人を起こさないように静かに体を起こした。 指をしゃぶりながら、もう片方の手で服をぎゅっと握り締めてなかなか離そうとしない遥香を、地竜さんは目を細め愛おしそうに見詰めた。

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