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番外編 彼がやりたかったこと

「 パパ、これ?」 「そうだ。ありがとう一太、奏音。そこに置いておいていいぞ」 彼がなぜか折りたたみの踏み台を持ってくるように二人に頼んだ。その理由はすぐに分かった。 「同じ目の高さで未知を見たかったし、どうしてもやりたいことがあったんだ」 「やりたいことって何?」 「あとで説明する。まずは踏み台に立ってくれ」 彼に言われるがまま踏み台に立つと、彼と同じ目の高さになった。これはこれでなんか照れくさいし、恥ずかしいかも。頬を赤らめ俯くと、 「今更恥ずかしがってどうするんだ?」 彼にクスクスと笑われてしまった。 「そんなことを言われても……恥ずかしいものは恥ずかしいもの」 「そうか、ごめんな。意地悪な質問だったな。未知、ネクタイどうだ?曲がってないか?」 「うん。大丈夫だよ」 顔を上げ、両手で黒いネクタイを整えた。 「未知」至近距離で彼に名前を呼ばれ、じっと見つめられ胸がドキドキした。ドクンドクンと心臓の音が五月蝿い。彼の顔がぐいぐいと近付いてきて思わず目を閉じると、おでこに彼のおでこがくっついてきて、そのままぎゅっとハグをされた。

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