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第14話
控室で麗人のスマホを見つけた。
アイツの弱みを握るチャンス?イタズラ心でスマホをタップ。画面が明るくなり手が止まる。
待受けは俺の寝顔だった。
ガチャ。狙ったように扉が開く。
「俺のスマホ見ませんでした?」
麗人の声に心臓が飛び出しそうになる。
「虎くんが持ってるやつ?」
主婦のパートの人が答えた。
落ち着け。これもからかうネタの一つに違いない。
「それ、俺のスマホ?」
麗人が俺を見てくる。答えずにいると肩を掴まれた。
「中、見た?」
低い声。
怒ってる……?『ビビった?』とか、からかってくるんだろ。来るんなら来い!
ビクビクしてるけど麗人は黙ったまま。ノーリアクション……恐る恐る顔を上げる。
少し気まずそうな顔。それより……
ドッと心臓が跳ねる。
麗人の頬が赤い。照れてる……!
初めて見る顔に驚く。
「答えろよ。」
近すぎる距離は俺をパニックにさせた。
「み、見てない!」
咄嗟に目を逸らし嘘をつく。
ジワジワ……
顔が熱くなる。
「…………見たんだな。」
諦めたように麗人が話す。
異様な緊張。重い空気の中、麗人が口を開いた。
「虎。セフレやめよう。」
ここは控室。パートの人が3人もいるんだけど!?『セフレ』のワードに目が点になってるし!馬鹿野郎!いくら意地悪でもこれはアウト!
パートのおばさん達がゴクリと三人そろって息を飲む。なんとか誤魔化さなくちゃ……
考えてると……
チュ。突然、キスされて唇を押さえた。
…………なんでキス!?
「虎が好きだ。俺と付き合って。」
聞こえた言葉に呆然とする。
「『好き』!?嘘だ!
お前、意地悪で言ってんだろ!」
「…………嘘じゃない。お前の泣きそう顔も照れてる顔もヤッてる時の顔もドストライク。仕方ねぇだろ。可愛いから虐めたい!!
努力家なとこも負けず嫌いなとこも、口は悪いけど優しいとこもすげー好き。店長にヤキモチ妬く位、結構、重症だ!」
こ……コイツ、開き直りやがった……!
弱みを握るはずが絶体絶命……
パートのおばさん達はニヤニヤしながら期待の目で俺を見る。なんで告白されてる俺がアタフタしなきゃなんねぇんだよ!
でも、麗人も顔赤い。らしくない顔……
背を向けて控室を出る。
「待てよ!虎。」
慌てて麗人が追ってきた。
バックヤードで二人きり。不意に手を握られる。
「悪かったよ。控室でキスなんかして。でも、さっきの告白はふざけたわけじゃないんだ。」
手……振りほどけない……
『麗人は俺が好き。』
好きな子虐めるとか、小学生かよ……
…………でも。
『お前が好きだ。』
麗人の言葉を反芻する。
「おい。怒ってんのかよ。こっち、向けってば……」
麗人が俺の服を引っ張った。
振り向けないよ。だって……多分、真っ赤だし。今までの意地悪が俺の気を引きたかっただけなんて……
無理矢理、振り向かされて目が合った。
どうしよう……
「…………可愛い顔やめろ。」
麗人が小さい声で呟いた。
ジッと見られて息が詰まりそうになる。
…………何、この空気。何、この雰囲気!
慌てて下を向く。
顔、上げらんない……
麗人は俺が好き。本当に……?
うるさい位鳴ってる胸を押さえる。
………………返事、なんて伝えよう。
【END】
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