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褒めて伸ばして
目を閉じたまま、敬吾が小さく呻く。
逸に抱かれる夢を見ていた。
足の先から内腿、腹、胸、喉、顔と滑らかに撫で上げられ、体を丸めたいのに、残酷にも神経はまだ眠っていてそうできない。
声も呼吸も自由にならず、ただ苦しい。
忌々しげに眉根を寄せ瞼を引きつらせている間にも逸の手は思うがまま肌の上を這った。
唇の間に親指が割り入り、御せない唇が勝手に吸い付く。
そうしながらもう片手がいやに優しく乳首に触れて、敬吾の体はまた勝手に肩を縮めた。
ーーもう、いい加減にしてくれ!
意識もまだ夢うつつだが、そのはっきりしない頭で必死に考える限り、昨夜だってこの男に抱かれたのだ。
そしてその前も。その前も、その前も!
「んんっ………………!」
それで、夢の中にまで侵食する気かーーーーーー!
金縛りにでもかかったように動かない体に鞭を打ち、敬吾は錆びたシャッターのような瞼をこじ開ける。
そして、今までの感覚が夢ではなかったことを知った。
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