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褒めて伸ばして19〜閑話休題〜

「お、岩居くん」 「九条……、おつかれ」 「なーんか元気ないねぇ。空きコマ?」 「いやもうこれ飲んだら帰るとこ」 そうは言ってもあと少し残ったコーヒーを飲もうとしない敬吾を、九条は不思議そうに見下ろしていた。 「んじゃ飯行かない?この間すげーピザうまいバー見つけたの」 今目が覚めたかのように、敬吾はぱちぱちと瞬いて九条を見上げる。 ここ数日一気に瞳をぎらつかせ始めた逸が剣呑に過ぎて、九条の提案が有り難いものに思えた。が。 「いいなー、行く行く。けど酒はやめとこうかな」 「そーなの?」 珍しいものでも見るように九条が目を丸くし、そりゃそうだよなと敬吾は苦笑する。 とは言えさほど拘る様子もなく、九条は腕時計に目線を落とした。 「俺ちょっと菅田教授のとこ行かないとだから、後で落ち合いでもいい?5時過ぎくらいに」 「んん、場所教えて」 「今送んね」 九条から送信されてきた店の住所は敬吾のアパートからほど近いところだった。 一度帰ったほうが楽かもしれない。 九条と別れ、逸に夕飯は要らない旨連絡して、敬吾はやっとカフェテリアから出ることにした。

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