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褒めて伸ばして 34
「…………っふふ、ふくくくっ……………」
「笑うな!くそっ……」
「すみません、もぉ……可愛くて、………っはははは、あ、やばい……ふふ」
「うるせえよ、っもーーー…………!」
ーー逸が面映そうに笑っているのは、動かしているわけでもないそこが蠢き、挙句切なげに濡れた音まで立ててしまい、敬吾があまりにもあどけない親とはぐれた子供のような顔を真っ赤にしてはたと逸を見上げたからだった。
それがいくら滑稽だったとて敬吾としては本当に穴でも掘って埋まりたい気分だし、したくてしているわけではない。
ーー体が勝手に、逸に吸い付いてしまう。
「ーーだって、ーーーーーー」
「………………」
恥じ入ったように目元まで赤くして、敬吾は俯いてしまった。
逸が少々姿勢を正し、笑みを薄くして敬吾の頬を撫でる。
「敬吾さん、俺嬉しいんですよ?恥ずかしがんないでー」
「…………………っ」
「もう、すげー嬉しい可愛いどうしよ」
嘆息を漏らしつつ、逸は敬吾の顔の至るところに口付けた。
そうして慰められると敬吾も眉間の力が抜けてしまう。
素直になり始める体がまた逸に絡みついて、そこから熱が生まれてしまう。
「敬吾さん………」
「ぅーーー……」
ーーここで、動いて、と一言おねだりしてほしいのだが。
さすがにそこまでは望めないかと苦笑しながら逸が僅かに体を起こす。
と。
敬吾が躊躇いがちに逸を見上げた。その瞳がーー
「あ………!」
「なんつう顔するんですかもーーっ………」
「なに、っなにがっ……」
「も……敬吾さん、目ぇとろっとろなんですもんっーー」
深く揺さぶられ、敬吾は必死で顔の横の枕を掴んだ。
その横に腕を立たせ、逸は食い入るように敬吾を眺めながら穿ち続ける。
「やぁ、逸……っ強、い、……」
「ごめんなさい、止まんね…………」
「ん……………っ!!」
「……敬吾さん?ちょっとイッちゃった?」
「!?ちが、なんだよそれ、っ!!」
「んー……、そうですか?」
じゃあ、と小さく呟いて逸は更に激しく腰を打ち付けた。
敬吾が悲痛に喘ぎ、横顔を枕に埋める。
声も出せないままにそうしていると敬吾の腰が張り詰めて痙攣した。
「敬吾さん?」
「やぁ、違……………っ、ぁ………!逸っ、いっかいやめ、あっ……!!」
それきり敬吾は声を飲み込み、引き攣りそうな呼吸だけを必死に繰り返して波打つ快感に耐えている。
「ん………!ん……っ、ぅーー………」
(イキっぱなしになってる……………?)
蕩けてしまいそうな敬吾を見下ろしながら、心配にはなるものの逸もそろそろ限界だった。
労ってはやれそうにない。
また下着を乱暴に押し上げて鷲掴みに胸を揉みしだくと、悲痛に顔を歪めて敬吾が顔を振る。
「やっ、ぅーーーー……」
「っあー敬吾さんかわい……も、出そう」
「んっ…………」
「はは……そんな締めたら…………っ」
逸が体を起こし、敬吾の腰を強く引き掴んで激しく揺すぶった。
敬吾が藻掻くように喘ぐ。
「っあ……敬吾さん、すげえ気持ちい…………」
「んっ!んー……っ!いち、も、もー入んないからぁ…………っ」
「可愛すぎるでしょ…………」
奥まで穿ってもまだ、貪欲に飲み込ませようと逸は突き上げ続けて吐き出した。
大きく呼吸を逃しながら瞼を落とす逸を、敬吾は虚ろに見上げる。
陶酔したように腰を揺らし続ける逸がふと瞳を開き、敬吾と目が合ってふわりと笑った。
「ーーーーーー」
「敬吾さん………大丈夫?」
「………………」
敬吾は、逸の背後に焦点を結ぶような視線を寄越すばかりで何も言わない。
ーーやりすぎてしまっただろうか。
逸がごぼりと腹に空気を飲み込んでしまうと、やっと敬吾の唇がほんの少し開く。
「…………ぃち」
「は、はい」
敬吾の手が上がって淡い煙のように揺らめいた。
逸が慌てて手を添えてやると、頬を撫でられる。
「ーーーーーーー」
「………………、気持ちいい?」
「え……………っ」
今発散させたばかりのそれがどくりと脈うつ。
「ちょ……っ敬吾さんそんなこと言われたら俺っ、……また無茶しちゃうでしょうが………っ」
「ぇ……、っえ?」
「気持ちいいですよ、すげーーーきもちいいですよ?もう、最高ですほんと敬吾さんとすんの、溶けそう」
「ん……………」
困ったように、だが安心したように敬吾が笑う。
それがもう、逸の目にはまるで窄んでいた華奢な花が開くように映って、清廉とすら言えるようなたまらない気持ちになった。
だがそれを手折って閉じ込めて、汚してしまいたい…………。
「こまる………………」
敬吾にその吐露は聞こえていなかった。
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