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祝福と憧憬 3

ーーまあ、こうなるよな。 桜の結婚式を翌々日に控え、先駆けて明日帰省する敬吾の帰りを、逸は待ち侘び帰ってくるなり抱き締めた。 「飯なに」 「敬吾さんです」 「俺の!」 「俺です!」 「面白くねえ」 「…………ロールキャベツです」 「おお」 ずいぶん手の込んだメニューだ。 それを冗談ででも一時後回しにしようとするのだから恐ろしい。 敬吾に強く押し退けられ、残念そうに笑いながら逸は鍋を火に掛ける。 「明日ってバイト終わったら店からそのまま駅行くんですよね」 「うん」 「お弁当作りましょうか?」 「…………ん?」 水を飲みながら敬吾が首を傾げると、逸が苦笑した。 「弁当箱だと邪魔になるんで、ホットサンドでも作ろうかなって。移動中食べて下さい」 「うん………?」 何か、不自然な印象は受けるがーー 実際有難くはあるので敬吾は頷くことにした。 「じゃ、頼むかな……」 「はーい」 逸の笑顔は含み無いように見える。 そもそも弁当に企みなど施しようもないので、敬吾もすぐにそれを忘れて夕食の支度を手伝った。

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