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酔いどれ狼 6

「ほら、腕上げろ」 シャツを捲り上げながら敬吾が言うと、逸は素直に両腕を上げた。 そこまで上げられると敬吾の手が届かないほど上げた。 「上げすぎ!」 「えへへー」 「…………。」 そう小柄でもない自分を見下ろすくせに、赤ん坊のように笑う逸を敬吾はぽかんと見返す。 一体なんだ、この酔い方は。 延々見ていてしまいそうなので意識して俯き、敬吾は逸のバックルに手を掛けた。 「あー、敬吾さんのえっちー」 「はいはいえっちえっち」 本当に汗だくになったらしく、まだいくらか湿っているジーンズが貼り付いてしまって落ちていかない。 膝をついてそれを引き下げ、下着も下ろすと逸も足を上げる。 ごく当然のことだが今の逸がそれをすると妙に賢く思えた。 「ほれじゃあ入ってこい。」 「えっ!」 「俺ついさっき入ったばっかなんだよ。もっかい脱ぐのめんどくさい」 明らかに責めは敬吾にあるが、逸はしょぼんと肩を落として素直に浴室に入る。 そのまま戸も閉めずにシャワーを出し始めるが、転んでも危ないので敬吾としても監視はしておくつもりだった。が。 突如振り返った逸が、戸先に立っていた敬吾に一瞬シャワーを向ける。 「おわ!!」 「あはは!」 「何してんだお前はー!」 顔にも飛んだ飛沫を拭いつつすっかり濡れたスウェットを見下ろしていると、逸は擽ったそうに目を細めてその敬吾に笑いかけた。 「敬吾さんもー」 「…………………っ」 先に騙し討ちしたのは自分である、敬吾は強く非難できない。 その点を責めるでもなく無邪気な逸の笑顔がまた、敬吾を誠実な気持ちにさせる。 渋い顔のまま服を脱ぎ始める敬吾を、逸は浴槽に腰掛けてにこにこと見守っていた。

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