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アクティブレスト 19
ーー沈んでいくようだった。
敬吾の肌が、絹のようにするすると冷たくて心地良い。
それが熱く赤らんでくるとまるで波に飲まれるようで、何も考えられない。溺れてしまう。
時折敬吾が何か言っているような気がするがーー良く分からなかった。
とにかく今は撫でて、触れ合わせて、口付けたい。
「敬吾さん………」
「っ分かったってもうっ呼ぶなっ」
「敬吾さんーーー」
「もーーー………っ」
逸が名前を囁くたびに震えが走る。
何度も諌めているのに逸は全く意に介さない。
陶酔していて、何も聞こえていないようだった。
耳だけでなく体も、没頭しきって夢中もいいところである。
久しぶりに、こうも隙間なくいやらしく撫でられ擦られすると………高まる熱が、痛いほどだ。
しかし逸はその通りもう耳が聞こえていない。
「逸ー……」
「敬吾さん………可愛いー………」
逸は敬吾の顔を見上げへらりと笑ったが、やはり呼ばれたからではないようだった。
ただ単純に本能に従って、好きなことをし、好きなことを言っている。
それがいつまで続くのか、逸の体は心配だしーー自分の体は切ないしでーー敬吾はどうしたらいいのか分からなくなった。
ただこうして、延々優しく貪られ続けるしかないのだろうか。
「いち………」
「んーーー………」
逸は敬吾の背中に腕を回し、執拗に顔をすり寄せては舐めたり口付けたりしている。
そのやりようが妙に助平で変態じみてはいるのだが、不思議なほど性的な触れ方はしなかった。
生き餌を嬲って遊ぶような、残酷な無邪気さでーー敬吾はただ弄ばれている。
触れられるたび、芯を持ったそこここはちりちりと痛むし体の奥は切ない。
疲弊した逸にしてやれることがこれならば……と思うには思うのだが、さすがにもうーー
「逸………っ」
「んーー………?」
胸に押し当てられていた顔を少々強引に上向かせ、視線を合わせると逸はやっと呼ばれていることを知覚したようだった。
「なあ、もう………」
「ん………?」
「う……………」
ーー何と言おう。
敬吾が言葉を飲むと、逸はその噛み締められた唇に口づける。
浅いところを小さく舐められて徐々に唇を開いていくと、一気に呼吸が暴れだした。
その間また胸だの腰だのと撫で下ろされ、体の芯が軋むように引き攣れる。
「んっ、んぅ……」
舌を絡ませると逸の呼吸も熱くなりだした。
期待してしまう体が、もどかしく逸に擦り寄る。
感じすぎてしまって、もうーー
「っいち……、苦しい………」
「ん……………?」
ーーどうしよう。
下手に煽り立てるような言い方をしてしまうと、またこの男は時間を忘れる。
かと言ってさっさと出してさっさと寝ろなんて言ったらまた、へそを曲げるだろうし。
「敬吾さん……?」
けれど、欲しいーーー
もう体の奥が疼いて、切なくて、堪らない。
つんと痛んで感じるほど。
先を考える余裕がもう、無かった。
困り果ててしまって、敬吾の視界が滲み始める。
「………っいち、もう、入れて……欲し、……」
「ーーーーーー」
切れ切れにそう言う敬吾を、逸は呆然と見つめた後眉を下げた。
「うん……、でも、一回だけなんですよね」
「あ……………?」
ーーーーー聞こえていたのか。
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