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アクティブレスト 21
「……………えーっとそれはもう………… すみません。」
逸は冗談めかしたように苦笑するが、敬吾は思慮深く顔を顰めた。
「そうじゃなくて。疲れすぎてるんだろ……」
「………………」
僅かに体を起こした敬吾に頭を撫でられ、逸は悲しげに眉根を寄せる。
敬吾が何を思っているのか、そしてそれが受け入れがたいものだと分かってもいるのに敬吾の表情があまりに真摯で心配そうでーー
居た堪れない気持ちになる。
「寝なさい。このままでいいから」
「…………………」
「……………岩井、いい子だから」
俯いてしまった頭をまた優しく撫でられ、逸の情けなさはいや増した。
結局一から十まで、敬吾の優しさに甘えてしまっている。
拗ねて、わがままを聞かせて、意地の悪いことをして。
それでもこうして、許してくれているーーー
「………………」
ーーやや正気に戻ってきたらしい沈痛な逸の表情を見て、敬吾はくすりと笑った。
「……それも疲れてるからだって。ほら来い」
腕を広げられて体を寄せると、敬吾がそれを閉じ込めて体を捻る。
横倒しにベッドに体を預けると、確かに体から力が抜けて一気に安らかな気持ちになった。が。
「ん……、」
「敬吾さんーー」
「いーーーから……」
額に唇を付けられると、子供のように振る舞わなければならない気持ちになる。
そのまま動きを封じるように抱き締められて、逸の手は敬吾の背中にまわす他なくなった。
「寝るぞ。おやすみ」
「ん……、はい…………」
まじないでも掛けられているようだった。
優しく頭を撫でられて灯りを落とされると、本当に眠くなるーー
(あーー……、もったいないー…………)
今度こんな風に触れ合えるのはいつになるか分からないのにーー
敬吾はこんな半端な状態なのにーー
眠くて、体が重くて仕方がない…………
瞬き一つで意識が飛んでしまう。
何度もそれをかき集め、また手放してしまってーー
自分で思うより早く、逸は深い眠りに落ちた。
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