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18-4 親愛以上の情はない?

 沙羅の問いに、追求されてる感はない。  だけど。ただの疑問っていうより……知りたい欲求に、好奇心以上のものがある気がして。  何かうまい切り返しない……?   沙羅は俺をよく知ってるからな。やましい素振りはすぐキャッチされる……って。  やましくない。悪いことはしてない。  この先も、沙羅にやましいことは何もしない。俺が誰と何しようと、沙羅に害はない。  心配させるような相手じゃないし、心配させるようなことじゃない……よな?  ちょっと焦り、素早く(かい)を見た。  目配せのように一瞬俺と合わせた視線を沙羅に向けて、凱が答える。 「そー。涼弥が好きなんだけど、男とセックス出来るかわかんねぇし。怖いからどうしよう? 男同士って気持ちいーの? 涼弥はタチかな? 俺は?……って。いろいろねー」  沙羅が笑い出した。  あの……さ。  確かに聞いたよそれ。  だけど、実際は繊細な心の動きとか涼弥への感情とか。もっとこう、思い悩んでるふうな相談だったよね?  その大部分が男とのセックス試したいに繋がるから、端折るのわかるけど。  そうしちゃうと何か……ただのエロ相談みたいになるのね。  はぁ……。  いいのか。これで、沙羅が納得すれば。 「將梧(そうご)、そんなこと聞いたんだ」 「だから、大丈夫って思えるまで待ってやって。あ。あと、BLってマンガ読んだぜ。こーゆーの好きなのが腐女子だって教わった」  沙羅が俺を睨む。 「腐女子を説明するのに、口じゃうまく伝えられなそうだったからさ。実物見てわかってもらおうと思ってうちに来たんだ。相談の内容も内容だったし」  急いで弁解? いや、弁明か? とにかく事実を述べる俺。 「沙羅ちゃんが腐女子なの、誰にも言わねぇよ。安心して」 「ありがとう。凱くんがバイなのも、内緒にしてあげる」 「サンキュ」 「でも。涼弥が、あなたと將梧のこと疑ってたから……気をつけてね。恋する男の嫉妬は熱いから」  まだ何かを納得してない瞳で、沙羅が忠告する。 「涼弥に最初、將梧は彼女とうまくいってるのかって聞かれたの。一応、ハッキリうんって答えたわ。だけど、昨日お前が言った一目惚れ、將梧のほうかもなって」 「は……!?」  困惑の声を上げた。 「そう。涼弥の中では、將梧が凱くんに気があることになってるの。將梧が好きなのは涼弥だって言いたくなったのは、この時」 「何でそうなるんだよ」 「学校の友達には常に薄いバリアの膜1枚張ってるみたいな將梧が、凱くんには会ったその日から打ち解けてるんだもん。気になるに決まってるじゃない?」 「それは……言っただろ。気が合って信頼出来るって。理屈なんかなく。凱は好きだよ。でも、恋愛感情じゃない。お前や深音を好きなのと同じ……親愛?」  俺の言葉に、やれやれと息をつく沙羅。 「涼弥にはわからないでしょ。だから、早く好きだって言えばいいの。凱くんもそう思わない?」 「そーね。そうすんのが一番だけどさ。必要なんだろ、心構えってやつ」  暫し無言で凱を見つめていた沙羅が、ゆっくりと口を開く。 「ねぇ、凱くん」 「凱でいーよ。沙羅ちゃん」 「じゃあ、私も沙羅で」 「オッケー。何?」 「男との経験、それなりにあるんでしょ?」 「うん。それなりにねー」 「將梧なら慰めてあげるって、ほんと?」 「沙羅。ちょっと待て。何で今そんなこと聞く?」  話がヤバい方向にいきそうで。進路修正不可になる前に止めたい。 「うん。ほんと」  凱は躊躇(ちゅうちょ)なく。沙羅は俺を無視。 「じゃあ……將梧が頼んだら、抱いてあげる?」 「やめ……」 「もしくは、抱かせてあげる?」 「やめろって……」 「うん。將梧のやりたいほうでいーよ」 「凱! お前それ……」 「あ。でも、慰めんのは、涼弥にフラれた時だぜ?」  悪戯っぽい瞳で微笑む凱を、沙羅が見据える。 「今頼まれても相手しないってこと?」 「理由がねぇじゃん」 「將梧だけじゃなくて、あなたも。気が合う、信頼出来るって思ってるからこんなに仲良くなってるんでしょ? そこに親愛以上の情はない?」 「沙羅、いい加減……」 「ねぇよ」 「相談乗ってやさしくするの、下心あるからじゃないって言いきれる?」  あー! もう!  沙羅も凱も。どうして俺の声が聞こえないフリするの?  俺のこと話してるのに俺抜きって。おかしいだろ……!? 「うん。あったら、とっくにその気にさせてやってる」 「將梧を……好きになっちゃったりしない?」 「しねぇな。俺、誰とも恋愛するつもりねぇの」 「どうして?」 「どうしても。だから、心配すんなよ」  沙羅がチラリと俺に目を向ける。  やっと俺の意見聞く気になったのか? 「沙羅。お前、さっきから何が言いたいの? 俺と凱がセックスしないか心配? それが涼弥にバレることが?」   あ……最後よけいだった。

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