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最終話 その答え 聞くまでもなく
楽師の奏でる荘厳な雅楽と雰囲気の中、舞終えた天照が生まれて初めて名を得た神と新しく神の座に名を連ねた二人の頬にそれぞれの掌をそっと添えた。
「永久 に幸多く共に在れ。飽きるほどに見る桜も瑞華も決して同じ様はない。二人であればそれもより美しく胸に沁み入ろうて」
昼間とは違い、そっと本殿の戸が開く。箱いっぱいの絵馬を抱えた宮司が神棚の下にそれを置き、柏手を打ち拝礼して去って行った。
「本当に見えないんだね……すごい」
「天照様だからなぁ」
「ねぇカミサマ……瑞華って何?」
「雪のことだよ。ところで、樹貴。その……」
言い淀む男は耳まで赤くして、かち合った樹貴との視線を慌てて外した。
「灯、とは似合わないのではないか? なんとも気恥ずかしい」
「ぴったりだと思う。綺麗な名前だと思うから……」
明日から灯様って呼ぶね、と樹貴もまた顔を赤くして答えた。
「様は要らん。常闇様も呼び捨て合っておられた。俺は正直、羨ましい!」
ほんの少し頬を膨らませた灯を見て、樹貴は堪えきれず笑い出した。
「なんだ、しつれ……」
「あ、あ、灯、明日、一緒に竜胆を見に行ってくれる?」
灯の返事は聞くまでもなく――。
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