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《夢終》
寄り添って眠った温もりは、朝には消えていて…
「夢?」
ううん。
「違う、僕は旦那様に…愛されて…」
あれは夢なんかじゃない。
旦那様は優しく抱いてくださったんだ。
しかし、夕方には…。
「っ、アァ!痛ッ…待っ、旦那様ッ」
何の気遣いもない、暴力的な行為は、昨夜の優しさをいとも簡単に打ち消していく。
それでも、夜の旦那様はお優しい…
その想いが、辛い仕打ちに遭っても唯一の光だった。
「何故?…真夜中の旦那様は、あんなにお優しいのに…」
布団に伏せながら呟いてしまう。
どうして、こんなにも違うのか…
「何?」
行為を終え、部屋から出ていこうとしていた山形。
その呟きを拾って、顔をしかめる。
「……?」
「なるほどな…」
意味深に呟いて、部屋を後にする。
その夜も、菊之助に誘われるまま、身体を重ねる二人。
「ァっ、ァん!旦那様…っいぃ…!」
「…ハァ、っ!」
愛し合う二人…。
そこへ…
唐突に、バンッと部屋の戸が開く。
二人とも驚き振り返る。
なんと、そこには、もう一人の旦那様が立っていた…!
昼間の、凛々しい洋服姿の旦那様…
「えっ…旦那様?」
なら、今身体を重ねているのは、一体、誰!?
「…ッく」
男の顔を見上げると、なんとも言えない哀しげな表情…
「何をしている」
旦那様は、ズカズカと寝床まで来て…
「ッ…」
男の頭を頭巾ごと鷲掴みにし、
菊之助から引き摺り離し、顔を拳で殴りつけた。
「ッ!?」
「一丁前に、菊之助に欲情したか?」
「っ、」
「こんなことをしろと言ったか!?」
怒りのまま、脚で蹴りつけ踏みつけている。
「旦那様、やめて…」
突然の事に、狼狽えてしまうが、優しいこの方が、痛めつけられているのをみるのは胸が張り裂けそうになる。
「よく見ていろ、コレがどういう存在か」
ばっと、頭巾を剥ぎ取ると、隠れていた顔と黒い長髪がさらさらと露わになる。
面立ちはやはり、旦那様そのもの…
そのまま山形は襟首を掴み、壁へ顔を押し付ける。
「だせ!」
「……っ」
「出せと言っている」
同じ顔の二人が…
一人は支配的な顔で抑えつけ、
一人は悔しさに満ちた顔で服従していて…
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