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第1話

円と研人の場合 円。→赤瀬円(あかせ えん)。先輩。研人よりも身長が低いのを気にしている。平均身長だと思っている168cmのツンデレさん。 顔は可愛らしいが負けん気は強い。押しに弱いので押し切られて関係を結ぶも、実は円も研人のことが好きだったと言うオチ付。 研人。→野村研人(のむら けんと)。後輩。やたら身長がある。2m近い。能天気で天然。ひたすら円が好き。 顔は堀が深くモデル並だがモテてる自覚なし。彼のご機嫌を取るのが日常の一コマとなっている。それもこれも好きの極み。彼の犬。 ***************************************************  イライラとか喧嘩とか。そんなものは一夜経ってしまえばないものになってしまうのはいつものことだった。 「じゃ、行ってきますね」 「ああ。俺はまだ時間あるからな」 「……」 「ぁ、いってらっしゃい」 「じゃなくて」 「?」 「円さん。んっ……」 「んっ?」 「だから『んっ』」  くちびるを突き出してくる姿を見ると一瞬ギョッとしてしまう。 「そ……れは……?」 「お出かけのチュウを要求してます。んっ」 「ぇっ……と…………」  いつもそんなことはしてないと言うのに何故今日に限って……と訝しがる。 「チュウを」 「やだ」 「どうしてですか」 「だって……」  恥ずかしいだろっ?! 「今日はしてくださいよ」 「ぇ?」 「何となく昨日のままじゃ駄目だと思うんで」 「でもっ……」  それでも急にはどうしたらいいのかが分からない。  言われたからするってのも癪に障るしっ……。  躊躇していると思っていることを見透かすようにニンマリされてムッとする。 「ぁっ……んっ!」 「ふっ……」 「んんっ……んっ…………ん!」  唇だけでなく舌まで入れられて思わず相手をドンッ! と勢いよく付き放つと唇を拭う。 「……ばっ……かっ!」 「……もっとしたかったのに……」 「……いいから……もう行けよっ!」 「分かりました。いってきます」 「……」  パタンと玄関のドアが閉まって眼の前から彼の姿が消える。  ちょっと気を許すとすぐにいい気になるっ!  そんなところが許せなくもあり、好きなところでもあった。  しばらく馬鹿みたいに閉まったドアを眺めていたが彼が出て行った後のドアに変化はなくて、いつの間にか落胆している自分に気づく。 「ほんとに馬鹿みたいだっ……」  相手は近寄ってきているのに自分自身が戸惑っている。  こんなことじゃ駄目なのにっ!  分かっていても、なかなか素直になれない円だった。 「ごめんっ……」 終わり 20190515 タイトル「チュウするしない」

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