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第5話
翌日一緒に向かったのは高級ホテルの最上階にあるレストラン。
「元カレがね…会いたいって言ってるの…俺は相手の家庭を壊すこともしたくないし…二人で会っちゃうと…また…だから…峻くん…恋人の振りしてくれないかな…ごめんね…我が儘言ってるのはわかってるんだけど…君にしか頼めないから…」
そう言われて昨日の今日なのだが…こんなところに呼び出してくるくらい大人なお金持ち…実はかなり緊張してる…するなと言うのが無理な話だ。
暫く待っていると扉が開かれ入ってきた。
「久しぶり…巳露…会いたかった…」
入ってきた男は思ったより若い。若くそして見覚えがあった…
「…良介さん…」
「ん?どこかで会ったことが…あぁ!!お久しぶりだね。峻くん」
「何で…あんたが…」
「知り合い?」
…知り合いも何も…俺が面接に来たときに声を掛けて来た人で…行き摺りの相手…俺の初めての相手…
「…」
「峻くん?」
「…へぇ。俺と別れてすぐにそのお綺麗な顔でこんな可愛い子誑かしたんだ?さすがだね。巳露。名前通り蛇みたいだね」
「…っ…」
「峻くん可愛いだろ?その日限りって思ってたから思いっきり…」
「やめてください…」
「巳露さん?」
「…ねぇ。だったら俺とお付き合いしていたのにこの子にも手を出してその上奥さんともってこと?…あり得ないんだけど…」
「巳露?」
「自分の目は節穴だったみたいだね…最悪だ…あなたを愛していたなんて…」
「何言ってるの?愛してるのは巳露だけだよ?」
「は?」
「君だってまだ俺の事を想っているからわざわざ恋人が出来たと偽ってまでここに来たんでしょ?好きでたまらないから」
「…峻くん…ごめん。帰ろう」
「はい」
「巳露。君は俺から離れられないでしょ?君の体は俺じゃないと満足できないはずだ。だって君たちネコ同士じゃない」
「…ねぇ。良介さん。あなたとのセックス…つまらなかったですよ」
「何?」
「好きだったからフリです。物足りなくて体の疼きは止まらなかった。それに引き換え峻くんは満足させてくれる。ネコだろうが俺の前ではちゃんと男です。元々そっち側だったのに可哀想。こんな若い子を」
「巳露!」
「帰ります。もう2度と会いません。さようなら。奥さまとお幸せに」
巳露さんに、手を引かれて部屋をあとにした。良介さんの巳露さんを呼ぶ声が聞こえたけど巳露さんは振り返らなかった
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