43 / 112

第43話

「お前はいつも余計なこと考えすぎなんだよ。…こういう時は、気持ちよくなることだけ考えて、もっと楽しめ」 「あ……!あ、や…ぁ、待っ……」  落ち着いたのを見計らい中断していた挿入を再開されて、楽しむどころではなく枕に縋りつく。  少し強引に押し入られても、内部は嬉しそうに剛直を迎え入れた。  狭い場所をいっぱいにされる苦しさと、大切な人と繋がる喜びと、満たされる快感と。  許容量を超える体感を処理しきれず、捕食される野生動物のようにひくひくと体をふるわせ、その身を捧げるしかできない。 「りゅう、じろ、……っ」 「無理そうとかあったらちゃんと言え」  苦しい息の下なんとか大丈夫と伝えたけれど、あまり大丈夫ではない気もした。男女や役割の差はあれみんなしている行為のはずだが、他の人達はこんな激しさをどうやって受け止めているのだろうか。 「ひ……っ、あ、あ…っ」  引き抜かれながら指で感じさせられた場所を強く擦られて仰け反る。 「っあ…、竜次郎の、ぜんぶ、きもちい……っ」 「んなに、絞んなよ、…さっさと持ってかれちまう」 「竜次郎、も、いい…、の?」 「……ああ。…お前も、もっと」  うなじにキスを落とした竜次郎がもっと奥まで入ろうとするようにぐっと突き込んでくれば、内奥はそれに悦んで吸いつく。そこからぞっとするような快感が生まれて、湊は恐ろしくて身を捩った。  「や、りゅうじろ、あっ、おく、だめっ」 「だめって声じゃねえだろ」 「い、やぁ…、へんに、なっちゃ…」  からかうような声音にも半泣きで助けを乞うしかできない。  体ごとどこかに攫われそうで、懸命に後ろに手を伸ばして腰を掴む手に触れる。 「っ竜次郎、どこにも、いかないで。…あ…っ、ずっと、いっしょにいて…」 「俺はどこにもいかねえよ。…目え離すとすぐどっかいっちまうのはお前だろ…」  痛むくらいの力で手首を掴まれたと同時にくそ、と切ない悪態が聞こえて、思わず零れかけた謝罪は悲鳴に変わった。 「アッ、ぁ……っあ!あ!はげ、し…っ」  想いを叩きつけるような律動が、恐くて、嬉しくて、溺れてしまう。 「りゅ、じろ、だめ、も、おれ、…っあ、やぁ……ッ」 「湊…っ」  どっと奥に熱いものが溢れて、湊も触れられないまま先端から白濁を吐き出した。 「あっ……ぁ……っ」  ずる、と内部を満たしていたものが引き抜かれ、力が抜けて横たわる。 「っ……竜次郎……」  竜次郎がいなくなった場所が切なくて泣き声で呼ぶと、焦った様子で仰向けにひっくり返され、状態を確認された。 「…悪い、お前がエロすぎて加減が……痛くなっちまったか」 「ん……ちが、…もっと、中に……いて欲しかった、の……」 「……………っ……………。お前な……突っ込んだままでいたらそのまま第二ラウンド突入するだろうが」  頭痛を堪えるような表情に、眉を下げる。 「だめ……なの……?」 「今日は駄目だ。無理させてお前の傷が開いたら俺の心が死ぬ」 「でも、今竜次郎のピクってなった」 「あんなこと言われたらなるに決まってんだろ。こら、手ェ伸ばすな。大人しくもう寝ろ」  すっかり通常モードに戻ってしまった竜次郎に手を退けられて、少し寂しい気分になって「お風呂……入る……」と我儘を言えば「寝てる間に丸洗いしといてやるから」などといなされる。 「……寝てる俺とは一緒に入ってくれるの?」 「意識がなければ悪戯しないからな」  意識のある今ならオプション付けてもいいよと返すと、眉を寄せた竜次郎に「馬鹿」と叱られた。

ともだちにシェアしよう!