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Ⅱ 空が灯した最期の光⑥
「グランツ!」
目の前の彼はグランツじゃない。
でも俺は本当の名前を知らない。
俺はなんて呼べばいいの?
「グランツ!」
「あぁ、聞こえている。大丈夫だ」
嘘だ。
俺を庇って全身をひどく打ちつけている。
医者に、いや先ずシェルターに。
ダメだ。
敵国に俺達の協力者はいない。
「君にもバレてしまったね。私はグランツではない。彼の名を騙る偽物だ」
「どうでもいい!」
俺にとっては、お前が唯一人のグランツだよ。
残酷に生まれたこの世界で、お前は唯一の『希 』を見せてくれた。
なにものにも変えられない『希』がお前なんだ。
「私は君のただの騎士だよ」
「夫だよ」
「その件は解消したと言った筈だ」
「それでも夫だ」
「指輪も贈ってないのにかい?」
……指輪ならあるよ。
小指と小指を絡めて……
「俺の指がお前の指輪」
俺の国ではこうやって誓うんだ。
「愛している」
永遠の約束
「病める時も健やかなる時も……」
「富める時も貧しき時も」
愛し慈しみ
死が二人を分かつまで……
「愛する事を誓います」……
交わしたのは冷たいキスだった。
鉄錆びた味の口づけで永久 を誓う。
「良かったよ……私が《ブロイエ ファルケ》に成り済ませて。この甲冑は特殊でね、どんな衝撃からも護る事ができる」
君を………
光が爆 ぜた。
核を迎撃した《ヒンメル》の残骸が、白く……真っ白く耀いて。
雲を突き破り、落ちてくる。
「ありがとう、私を愛してくれて」
ありがとう、昴………
嘘つき!
いつも一緒にいるって。
私はいるよ。
君をいつも感じている。
もう鉄のキスはしなくていいよ。
風になって頬に口づけよう。
光になって瞼に口づけよう。
お寝坊さんの君を起こしにいくよ……
聞こえなくても
見えなくても
君の中に私はいるよ
これからも生き続けるよ……
君のそばで
君と共に
生きてくれて、ありがとう
昴
これからも一緒に生きようね……
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