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第1話

『365日の恋人』―親友― 好きな人がいる。そりゃあもう、離れたくなくて同じ高校を受けてしまったくらい。 県内でもトップクラスの高校を狙えるといわれていた俺が、両親や教師の反対を押し切り平凡な男子校に入学したのにはそういうわけがある。 相手は俺の幼馴染で親友、中島隆人(16)。 家が隣同士で小・中学校と9年間同じクラス。今年で10年の付き合いだ。 同じ男を好きになってしまった俺でも、正直自分が同性愛者かどうかというのはよくわからない。 なにしろ、気がついたら好きになっていて、それ以来隆人以外を好きになったことは無いからだ。 あまりに長い時間一緒にいすぎて、離れることなんて考えられない。 恋なんてよくわからない年齢で恋して、このままずっと一緒にいるんだと、信じて疑わなかった…いや、今だって。 だけどもちろん、こんな関係がいつまでも変わらずにあるなんてこと、ありはしなかったのだ。 今年、高校に入ってから俺達の間にはズレができ、少しずつ形を崩そうとしていた。 始まりは、クラスが別になったことだった。 まあ、そんなことは別に騒ぐことでもない。 ただ、高校に入学して3ヶ月、違うクラスになった事がきっかけで隆人に俺の知らない部分ができた。 「え?付き合うって・・・マジで・・・?」 ある日、人がいなくなった生徒会室で俺と隆人は生徒会の仕事を片付けていた。 この学校では毎年5月に行われる生徒会選挙で、学年それぞれ1人ないし2人の役員を選出することになっている。 役員は一度なってしまえば卒業までほとんど変わることはないので、結局のところこの選挙のメインは一年生だ。 1人は首席で入学した者と決められている。そして残りの一枠を、誰よりも目立ちたがり屋な隆人が勝ち取った。 そんな理由で俺達2人は生徒会に所属していて、放課後はよく生徒会室で時間を過ごしている。 とはいえ入学したての俺たちがする仕事なんてたかが知れてる。 アンケート用紙の枚数を数えたり、気が狂うまでホッチキスをとめ続けたりだ。 そんな単純作業を繰り返す俺に隆人は3組の長谷川と付き合うことになったと告げた。 唐突な話だった。 一瞬、コイツが何を言ったのかわからなくて、それでも確かに背筋が寒くなったのを感じた。 隆人が誰かと付き合うだなんて今まで一回も無かったから俺も相当びっくりしたんだけど、 びっくりしたのはそれだけではなかった。 「長谷川って・・・。男じゃん。」 そう、ウチの高校は男子校なのだ。もちろんその『3組の長谷川』も男ということになる。 普通ありえないだろ、と、俺は自分のことを棚にあげてそんなことを思っていたりする。 だが隆人は、 「めずらしくないだろ。特にウチの学校は。」 なんて言いやがった。 めずらしくない事あるか!! 「・・・まあ、裕也は鈍いから知らないだろうとは思ってたけど。」 鈍い!? 鈍いってなんだよ!!?  内心俺は大分焦っていたんだけど表には出さず、極めて冷静に声にした。 「・・・なにそれ?」 「だから、ウチの学校ゲイが多いってこと。」 「はあ!?」 なんだソレ!?俺まったく知らなかったぞ!? いや、そんなことよりも・・・ 「隆人・・・ゲイだったのか・・・?」 そのことのほうが気になる。 拒絶されるのが恐くて今までひたすら自分の気持ちを隠してきたのに・・・ ここでまた『うん』なんて言われたら俺の片思いはなんだったんだよ。 「いや、べつに。」 「え・・・」 「今日長谷川に告白されて、キスされたんだけど・・・  まあ、長谷川可愛いし、キスも気持ち悪くなかったからまあいっかーって。」 ・・・なんだよそれ・・・。 隆人にとって男同士なんてのはこの程度のものだったんだ。 ずっと悩んでた自分がバカみたいだ。 俺は隆人を見つめたまま動くことができなかった。 「・・・やっぱり・・・気持ち悪い?」 隆人は黙り込んだ俺を悲しい表情で見つめた。 「裕也には理解できない?男同士なんて。」 「・・・。」 「もう、親友じゃいられない?」 「え?」 「告白されてOKしちゃったけど・・・後から考えてみると、やっぱ裕也に嫌われんのは嫌だなぁって。」 俺はずるい。 ここで俺が『気持ち悪い』って言ったら別れてくれるんじゃないか、なんて考えてしまった。 自分が嫌いになっていく・・・。 「・・・何言ってんだよ。お前が誰と付き合おうと俺はお前の親友をやめる気はない。」 「裕也ぁ。」 俺がそういうと隆人が抱きついてきた。 隆人が誰かと付き合うなんて思ってもなかった。だから今まで親友でもいいと思っていたんだ。 つい、この手を離したくないと思ってしまって、悲しくなった。 こんなのは親友じゃない。 長谷川なら許されるのに。 とっとと告白してしまえばよかった。 受け入れられることもあったかもしれない。 隆人の腕の中に納まりながら下を向いた。 鼻がつんとして少し涙が滲む。 そんな様子を見られたくなくて、俺はそっけなく隆人の腕を振りほどいてドアに向かった。 「疲れた。もう帰る。」 「え?待ってよ裕也。」 俺が隆人をおいて生徒会室を出ようとした時だった。 ドアをあけるとそこには長谷川が立っていた。 「中島君。」 たぶん長谷川には隆人しか見えていない。 「あれ?長谷川、もしかして待っててくれたの?」 「あ、ごめん。迷惑?」 「ううん、全然。」 「よかった。一緒に帰ろう?」 耳を塞ぎたかった。 これ以上この2人の会話を聞いていたくなかった。 長谷川は、可愛い。 『恋人同士』の会話にも全く違和感がなかった。 「ああ。裕也も一緒に・・・」 隆人が俺に顔を向ける。 そのにやけたような顔に胸が痛くなった。 俺とお前は親友だよ、隆人。 これからも、俺がお前を嫌いになることはない。 ずっと親友でいるから・・・ お前が誰のものになっても、そばに居させて。 その日、おれは『用事がある』と言って2人から逃げた。

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