1 / 1
第1話
――あれは、3か月前のことだった。
何気なく、姉の部屋から本をとって読んでしまった。中身を読む前は、ただのラノベだと思っていた。表紙の男子二人が密着していて、ホモっぽいなと多少は思ったが、そんなジャンルがあることも知らなかった僕は、何の疑いもせずに読み始めた。
読んで吃驚。男同士の禁断の愛だった。
――でも、嫌悪感はなかった。
いけないことをしているような背徳感、不思議な憧れを感じた。
それが僕(亮平)のBL歴史の始まりだった。それから僕は隠れて姉のBL本を読むことが日課になった。
僕はノーマルのつもりだったし、女性が好きだ。なので、この趣味は男友達にはもちろん秘密だ。
――ある日、友人のタカシがこんなことを云い出した。
「なあ、亮平の家って共働きなんだろ? 親って何時ごろに帰ってくるの?」
「8時とか」
「じゃあ、今日、遊びにいかせてよ」
まず頭に過ったのは、ベッドの上に置きっぱなしにしていたBL本だ。あれは見られるわけにはいかない。
「部屋散らかってるから、今度にしてよ」
「そんなの気にする間柄じゃないだろ」
「え、じゃあ、5分だけ片付けさせてよ」
「なんだよ、亮平。エロ本でも隠すのかー」
エロ本だったらまだよかった。BL本だなんて言えない。僕は友人たちの前ではノーマルで通っているのだ。
タカシの強引さに負け、自宅に招待することにした。
当然、家前で5分だけ待たせた。その間にBL本は机の引き出しに隠した。
姉の部屋に返すべきだったか。タカシを部屋に入れたはいいが、机の引き出しが気になって仕様がなかった。バレたら、僕の人生が終わる。
タカシが僕の本棚を見る。「マンガ、貸してよ」
「なんでも気になるのとっていいよ」その本棚にはBLの気配はないので、幾ら見られても困らない。「飲み物、なんか持ってくるけど、なんでもいい?」
「うん、亮平に任せる」
カルピスを持って、自分の部屋に戻った。
――僕は目を疑った。タカシが机の引き出しを開け、禁断のBL本を手にしていた。
「うわああああああ、タカシ、それは違うんだ」
「亮平がさっきから、机の方をチラチラ見ていたから怪しいと思ったんだ。エロ本だと思ったら、ボーイズラブ小説だったとはね。まさか、亮平がそっちの趣味だったなんて」
「違うんだ。それはお姉ちゃんので――――」
「じゃあ、証明してみせてよ」
タカシが僕に顔を近づけた。――そして、いきなりキスをしてきた。
僕の初キスはあっという間に奪われた。
タカシは手慣れていた。キスをしながら、僕のシャツを脱がしていく。
「男も乳首って感じるの?」タカシは魔性の笑みで云う。そして、僕の乳首にキスをした。
「うっ」不覚にも気持ちよかった。
僕は我慢できず、タカシの服を脱がした。平な胸を触り、先ほどのキスのお返しをした。
――タカシが僕の股間を触る。「あ、亮平、たってる」
「そりゃあ、そうだよ」
「よかった、亮平がノーマルで。女じゃだめかと思った。でも、もしかして、あたしの胸がないから男だと思ったとか云わないでよ」
「高子(タカシ)は、可愛い女の子だよ」
僕は女の子に発情するようだと再認識した。でも、それ以降もBL本は読み続けた。
――了
ともだちにシェアしよう!