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第1話

Θ 「っ……う、……ん……ふっ」 緩やかな痺れに近いものが背筋を抜けていく。うっすらと涙の溜まり始めた視界が、至近距離の泣き黒子を捉えた。そのすぐ脇にある薄く開かれた瞳が、焦れるような情欲の色を湛えて、こちらを見ていた。 絡まった舌が水音を立てて、行為を強調する。あまり力の入らない舌を強く吸われ、擦られて、ひくりと体が震えた。 「んんぅ……は、ん、ん……」 体からどんどんと力が抜けていき、男の首と短髪にすがり付いた両手と、男がきつく腰を抱き寄せていることでどうにか崩れ落ちずに済んでいる状態だ。 「はっ……も、立って、らんな……」 痺れたような舌のせいで呂律も上手く回らない。男を見上げると、"知ってる"とばかりに笑い、オレの目許にキスを落としながら体を横たえた。 きしんだベッドで覆い被さるようにして、男がキスを再開する。 この男はキスが好きだ。隙を見付けて顔を寄せてくると、啄むようなキスをして、噛み付くように深くなっていく。 そうしてたまにキスだけで済まない時は、俺を食べようとしているんじゃないかというぐらい、キスが長く、深くなる。そもそもキス自体が上手いものだから、その気になられると気持ち良すぎて抵抗する来も起きないのが現実だ。実を言えば、俺もこの男とのキスがそれなりに好きだったりする。 「ん……ふ、ぅ……ふぁ……」 唇の縁をなぞるように舐めながら、男の手が掠めるように胸の飾りに触れてきた。触れるか触れないかで擽って、不意に爪で引っ掻くようにして潰される。その度に体が跳ねて、漏れた声が男の舌で絡め取られた。 「は……んぅ、ひ、あっ!」 うっとりと閉じていた目を開けて睨むように見上げると、緩く微笑んだまま指に力を入れてくる。びくついた肩に唇が触れて、強く吸われた。同時に胸の飾りを引っ張られたせいで、遮るものがなくなった俺の嬌声が部屋に響いてしまう。首筋を辿った男の唇が耳を齧るように愛撫する。俺を快楽で満たそうとするその行為に、もう僅かの抵抗すら覚えなくなってしまっていた。 「っあ、も……ぃ、いって、それ……や、め……」 弄られ過ぎて、痺れるくらい痛んできたそこを解放したくて、男の手を掴む。先程から疼いている下半身を焦らすように、執拗に胸を苛めてくる男に睨みを一つくれてやってから、その唇に触れた。 「うあっ……く、ぅ……あ゛……っ」 挿入された熱が奥へ奥へと埋まるのに比例して、背がたぎる。うつ伏せにシーツを握りしめて、食い縛った歯の隙間から荒い呼吸を繰り返した。ふーっと息を吐きながら男が背に覆い被さってきて、俺のうなじにキスを落としていく。 「……大丈夫?」 耳を食むようにして囁かれた言葉にすら体が震える。後ろを締めてしまうのを堪えきれずに、悔しいような情けないような羞恥が俺を襲って、それでも快感に思考が流されていく。 「だっ……じょぶだから、も、はや……く……」 合わせた瞳に自分を見て、男の瞼にキスをした。絡められた右手をぎゅっと握ると、それを合図に律動が始まる。 「ふっ……ん……はぁ、あ……あぅっ」 緩急をつけつつ掻き回され、時折奥を抉られるとたまらず声が出た。普段より高く水気を含んだ声が出し入れの音と混ざって、耳からもぞわぞわとした快感を拾ってしまう。何度も繰り返している行為だが、自分の嬌声にだけはどうにもなれなくて、シーツに顔を埋めるようにして、ふっ、ふっと荒い呼吸を押し殺した。 首に吸い付きながら俺を揺さぶっている男は、それについてもう何も言わない。俺が声を出したがらないことを勿論知っていて、一応配慮してくれている。ように見せている、だけだ。 「は……っ!……っく……ぅ、あ、あ、あ゛ッ!! ~は、ぁッ!」 俺が声を我慢し始めると、口を抑える手を剥がそうとはしないものの、いいところばかりを狙って突いてくるようになる。びくんっと俺の体が跳ねるのを楽しむように強くされ、詰めた息を吐く瞬間に前立腺を刺激されると、我慢もへったくれもない。

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