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幼馴染み以上兄弟未満
僕は、他と比べて蕀道を歩んでいると思う。別に選んだのではない。勝手に決められたのだ。僕の了承も聞かず、着々と事が進んでいった。
母が再婚した。不倫を繰り返す父に呆れ、離婚して1年もたっていなかった。
母が連れてきた男は隣に住むシングルファザー。連れ子は僕と3歳離れた年上の幼馴染み、幸輝。お兄ちゃんのような存在だった彼が、本当の兄になることに違和感はなかった。ただ、昔から抱いていた恋心は捨てなければいけない。葛藤の毎日が僕を待ちわびた。
「翔太、朝飯」
幸輝がエプロン姿で僕を起こしてくれる毎日。両親は海外へ転勤し、僕と幸輝を日本に残した。翔太はまだ大学生だけど、立派な社会人である幸輝がそばにいるから、安心して置いていけると。
僕は半分嬉しく、半分不安だった。幸輝と一つ屋根の下。これじゃ捨てられないよ。
わかったと返事をし、下へ下りる。焼きたての卵の匂いが、部屋中に広がっていた。
「翔太、弁当作っておいたぞ」
「ありがとう」
差し出された弁当は、主婦も顔負けの仕上がりだった。好物であるウインナーが多めに入っており、嫌いなグリンピースが申し訳程度に盛られている。僕が嫌いってわかっている上で入れているあたりが幸輝らしい。
「あ、そうだ。今日の夜サークルで集まるから、晩飯いらない」
「そうか......」
そう答えた幸輝はどこか寂しげだった。僕の帰りが遅くなるから寂しい。もしそういう理由なら、僕は大切にされているって思ってもいいのかな。
「ただいま」
時計の針は既に10時を指していた。かなり遅くなってしまい、幸輝に謝りたい。
「幸輝? ただいまー」
返事が帰ってこない。もしかして外出してる? そう思った瞬間。
「んんっ!?」
後ろから何者かに口を押さえられた。
「翔太......遅かったね」
鼓膜をくすぐるこの低い声。間違いない、幸輝だ。
「ごめん......長引いちゃって」
「俺寂しかったんだぞ~」
「ごめんってば。許して、ね? 兄ちゃん」
なんつって、と続けようとした。足が中に浮いていた。かと思えば、いつの間にかふかふかのベッドに寝そべっていた。
もしかして僕、幸輝に担がれたのか。
「翔太」
幸輝が僕の上に覆い被さる。血管の浮かび上がる腕。広い胸板。整った男らしい顔。全てが今、僕の目の前にある。
「俺を寂しくさせたお仕置き......させて」
「え......」
カチッと側で音がした。手から伝わる冷たい感触。いつの間にか手錠がかけられていた。
幸輝の手が服のしたをなぞる。なれた手つきで、上半身ともに脱がされた。寒さと身体を滑る手が僕をブルッと震わせた。
幸輝も上半身をさらけ出す。毎日のように見ているはずなのに、目をそらしたくなるほど色気が充満している。
「翔太、さっき俺のこと、兄ちゃんって呼んだよな」
乳首の回りをなぞられながら、僕の耳元で囁かれた。いやらしい手つきに身体が徐々に熱くなる。
「だって......僕の兄ちゃんだもん」
答えてすぐ、乳首そのものをいじられる。
「ぁっ......」
さらに熱くなる身体。快感に気持ちを持っていかれるところだった。
「俺は翔太のこと......弟だなんて思ったことないよ」
優しく微笑まれ、柔らかい感触が僕の唇をふさいだ。
弟だなんて思ったことない......。それはつまり、期待していいってこと? この気持ちを捨てなくてもいいってことなの?
感度がさらに増した。丁度そのタイミングで、幸輝が僕の下をいじり始めた。
「や......はぁっ」
幸輝の大きい手が僕のものを包み込む。そう考えるだけで果てそうになる。
「腰が勝手に動いてる。よっぽど気持ちいいんだね」
幸輝の熱が僕から離れる。かと思えば、ぬるっとした冷たい感触が再び僕を襲った。
「いや、幸輝......何してるの!?」
「後ろいじってる」
「後ろって......あぁっ!!」
ゆっくりと侵入する幸輝の指。正直痛い、抜いてほしい。だけどそれに反して、さらに奥へ奥へと潜られる。
「結構すんなり入ったね。もしかして、いじったことある?」
「ぁ......きかないでぇ」
二本目が挿入される中、優しく額、頬、首筋とキスされる。あまりにも丁寧で、壊れ物のような触れ方に、痛みが徐々に薄れていった。
「こうき......イきそう......ぁ」
突然の空洞感。幸輝の指が抜かれていた。寸止めされたせいで、必要以上に後ろの穴がひくついている。
「こうき......はやく......」
「んー? ちゃんと言ってくれないと、俺わかんない」
太ももに濡れたてを滑らせ、意地悪な笑顔を向けられる。その表情が、昔のやんちゃな少年だった幸輝と重なった。
二人は幼馴染みなんだと再確認される。もし、ここで僕がねだれば、二人の関係はなんだろう。少なくとも、幼馴染みには戻れない。かといって、兄弟になるわけでもない。
ああ、考えるのもめんどくさい。今はただ幸輝がほしい。
「こうきの......大きいそれ......ぼくのなかに......いれてっ!」
「うん、良くできました」
ゆっくりと、ゆっくりと熱くて固いものが僕の中に入ってくる。指とは比べ物にならない大きさ。無意識にそれを強く縛り付けていた。
「翔太......動くよ」
勢いよく奥の方をつかれる。
「はぁっ、あぁ......ああぁぁっっっ!!!」
なにこれ......こんな感覚初めて。
頭が朦朧とする。声が押さえられない。熱と快感が爪の先まで僕の身体を駆け巡る。
「こう、き......ぁっ......もっ......と」
止めないでほしい、ずっとこのままでいたい。意識が飛んでいきそうな中、幸輝の名前を呼び続ける。
「あはは......えっちな翔太、可愛い」
腰を揺らしながら、届けられる深くて濃厚なキス。手錠をかけられたままの腕を、幸輝の首に回し、もっとキスをしてほしいとねだる。
「翔太......愛してる。ずっと俺の傍にいて」
荒い吐息とともに、耳元で囁かれる待ちわびていた言葉。
「うん......僕も幸輝のこと......大好き」
やっと伝えられた。嬉しさとともに、僕は無事果てた。
この関係、どう両親に伝えようか。世間は僕たちをどう見るだろうか。
ただ確実なことは、僕たちは『幼馴染み以上』で、『兄弟未満』だということ。
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