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第1話

僕には12歳年上の、大好きな恋人がいる。イケメンで高収入で優しくて一途で真面目で、まさに世の女性が羨む完璧な彼氏。僕はピッチピチの高校生で美青年!お似合いでしょ?その僕の最高の彼氏こと、高橋久登(たかはし ひさと)と今日はデートの日なんだ! 「兄貴!」 「淳太!よかった…遅かったから事故とか事件に巻き込まれたのかと思ったよ…。」 「いや〜寝坊しちゃってさ〜。」 「よく寝れたか?」 「うん!」 ほらね。僕が2時間遅刻してもまったく怒らない。そればかりか僕の心配までしてくれる、本当に最高の彼氏!ちなみに兄貴呼びなのは周りに怪しまれないためなんだ。付き合う前に2人で決めた、約束事。 駅で待ち合わせてをして、今はちょうどお昼時。しかし、久登くんの顔を見るとどうやら疲労感が溜まってるみたい。整った顔に珍しく隈ができている。 「兄貴、もしかして疲れてる?仕事忙しいの?」 「あ〜…まぁ、そんな感じかなぁ。最近淳太に会えなかっただろう?だから、頑張って休み取ろうと思ってやってたらちょっと睡眠時間が足りなくて…。」 「…僕のため?」 「あぁ、もちろん。」 嬉しい!さも当然のようにそんなこと言われたら抱きついて、チューしたくなっちゃう!でもここは街中。周りには多くの他人がいる。僕は昂ぶる気持ちを抑え、2人っきりになる方法を提案した。 「ねぇ兄貴。僕、お家帰りたいな。」 「えっ…!」 「ねぇ、帰ろうよ。」 「…いいよ。」 甘ったるい声で強請ると、簡単に了承してくれた。いつもは女性の裸を見ても顔色1つ変えない久登くんの頬は少し赤くなっていた。 僕の家。両親は未だラブラブで、しょっちゅう休みが合うとデートに出かけるから、今日もいない。別にさみしいとは思ったことないよ。だって、愛情や優しさはちゃんと注いでもらってることを実感してるから。まぁ、そんな感じで、両親に打ち明けて関係が悪くなったり、壊れるのが怖いから久登くんのこと紹介するの迷ってるんだけど。 「ただいまー。」 「ただいま。」 「ふふっ、もう兄貴って呼ばなくてもいいよね!久登くん〜!僕にために頑張ってくれてありがとう!」 「うわぁ!ちょっと、前にも抱きつくのはダメだって言っただろ?」 「あ…ごめん…。」 久登くんは付き合う前からキスやセックスはいいのに、抱きしめるのだけは禁止している。おかしくない?普通、 抱きしめられて、キスして、ベットに押し倒されて、そのまま…でしょ!?でも何度強請ってもさせてくれない。しかし、今日は絶対に抱きしめないといけないような作戦を立ててきた。というか久登くんが弱ってる今だからこそできる作戦だ。もっというと作戦というよりか強行突破だ。 黒い企みをまったく知らない久登くんは、僕の部屋に着いた途端、ドアを閉めて優しく僕のおでこにキスをしてきた。目があって、少し微笑まれただけで弾む僕の胸。おでこじゃなくて、口にして欲しいと人差し指で自分の唇を指したら、また優しいキスをされた。もっと欲しいと言うように、口を開けると舌が入ってくる。その隙を狙い、僕はすぐさま腕を久登くんの体に巻きつかせ、逞しい胸板にぴったりと耳を寄せた。 「っっっっ!!!!やめっ!!!!」 「初めて久登くんに抱きつけた…。ドキドキして…………。あれ…………?」 おかしい。普通、聴こえるはずの心音がきこえない。そればかりか、人間の体から発せられているとは思えないような変な音がする。久登くんの顔を見ると、悲しそうな、諦めに近い表情をしていた。 「久登くん…?」 「淳太…もし俺が、人間じゃないって言っても好きでいてくれるか…?」 「えっ…?人間、じゃない…?」 「あぁ…。」 僕の頭を駆け巡る、久登くんとの思い出の数々。僕は久登くんの目をしっかりと見て、言った。 「うん、僕…久登くんが人間じゃなくても好きだよ…。」 「本当か!?あぁっ!愛してるよ淳太…!」 初めて、強く強く抱きしめられた。頭がおかしいんじゃないかと一瞬思ったりもしたけど、久登くんはそんな奴じゃないのは、僕が一番よく分かってる。 惜しむように僕から放し、僕も久登くんを放す。真剣な顔つきで、まっすぐ僕を見ながら、久登くんは衝撃の一言を言い放った。 「実は俺……ゴ○ブリなんだ……。」 「………はぁ!?」

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