1 / 13
呪いの子 第1話
「なぜおまえはそんな、あの男と同じ目の色をしているんだ? その色は……呪いの色だ」
---------------
鉛色の空は今にも降り出しそうな雨を抱え、重苦しくのしかかってくる。
路上から立ちのぼる饐えた食べ物の匂い、汗と糞尿と、たくさんのゴミ。
ここで生活している人間は、食べる時も寝る時も用を足す時も、すべてここだ。
街の人間からは<ゴミ捨て場 >と呼ばれていたが、ここに住む人間はここを<不眠の王国 >、略して<王国 >と呼んでいる。それほど広い場所ではないが、<王国>には王もいるし、首都もあれば下町 もあるのだ。
俺が住んでいるのはその中でも下町と呼ばれる親のいない子供ばかりが住んでいるところだった。
いつからここにいるのだろう。
幼い頃は、両親がいて、ちゃんとした家の中に住んでいたと思う。母親の記憶がある。
どこかではぐれたのか、捨てられたのか。
気づいたらここにいた。最初は言葉もわからなかったが、他のやつらに色々教わった。時々ここを出て、本当の街に行って食べ物を盗んでくる方法とか、荷物を運んで小遣いをもらう方法とか。
くちゃくちゃとカーファの葉を噛みながら年嵩の少年がやってきた。ここに来たときに色々と面倒を見てくれた黒玉 だ。
「カイレン、おまえも腹減ってんだろ。やるよ」
カーファの葉を噛むと多幸感が増えて空腹が減る。この辺りでは簡単に手に入る植物のひとつだ。でも、多分頭が回らなくなる。これをずっと噛んでて何人かぼんやりしたまま、なにもしゃべらなくなる子供を見てきた。苦しいことを考えなくするには、考えないようにすることが必要だからだろう。
肩をすくめた俺を見て、黒玉は舌打ちをする。
「すかしやがって」
それでも俺は優しい幻想なんかいらない。この現実を、俺ひとりでどこまでも生き抜いてやる。
ともだちにシェアしよう!