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隣にある恋 -after-
「はぁ~、キンチョーするぅ~」
「バカ、口に出すなよ」
「出さずにいられるかよ!これから女になっちまうんだぞ!!」
「お前がジャンケン弱いからだろうが」
灯唯の両親が環慈の両親と連れ立って旅行に行ったその日。
二人はベッドの上でお互い正座で向かい合い、もう30分近くもこんなやりとりを繰り返していた。
しかし灯唯はそろそろ限界だった。
「覚悟決めてくれよ…」
「…だって…」
「環慈ィ…」
手を伸ばしただけで環慈の身体がビクッと跳ねる。
一瞬躊躇したが、灯唯はそれでも身を引かず優しく彼を抱き締めた。
「環慈、好きだよ。すげぇ好き…」
灯唯の肩口に埋められた薄い唇がキュッと引き締められる。
しばらくの沈黙を経て、一応でも覚悟が決まったのか、おずおずと灯唯の背中に腕が回った。
「……痛くすんなよ…」
緊張と、どこか悔しさを含んだような声。
それを聞いて逆に灯唯の声は明るくトーンを上げた。
「大事にするから!」
「バカヤロー!!」
罵声も何のその。
そのまま勢いで押し倒して深く唇を重ねる。
口許がお互いの唾液で汚れるほど貪れば、ただ熱は上がるばかりで。
息を荒げて唇を離し、灯唯は環慈の首筋に鎖骨に、唇を滑らせた。
「っは…、ヤダそこ…くすぐってぇ…」
首筋を往復され、環慈は灯唯を押し返そうとする。
「……ァッ…」
灯唯の指が胸に当たったことでピクンと身体が反応し、思わず出てしまった高い声に環慈自身が固まった。
顔はこれ以上ないほど真っ赤だ。
「ココ、気持ちいい?」
確かめるように呟いて、灯唯は胸の突起をそっと口に含む。
「ん…、くすぐっ…た…ぁっ…」
掠れた声に愛しさが込み上げる。
すでに反応していた股間にも手を伸ばすと、そこは先走りでしっとりとした熱を孕んでいた。
「あ…ッ」
スウェットと下着を一緒に下ろせば、反り立ったモノが勢いよく撥ねる。
すでに熟して先の溝から滲み滴る雫を目の当たりにして、灯唯は喉を鳴らした。
そっと触れると熱と感触が手に吸い付くようだ。
鼓動が頭に響いて止まらない。
「環慈可愛い…」
「…トモ……、ぁっ…」
目線を上げた環慈にも灯唯の昂ぶりが見て取れた。
同じようなスウェットの熱を孕んだ膨らみに脛を滑らせる。
「ッ、!?」
「俺も触りたい…」
「…じゃあ一緒に、シよ…」
ゆっくり環慈の上半身を起こし向き合って座る。
腰をくっつけるように寄り添い、ぎこちなくないお互いを握り合った。
「は…ッ、…」
今までにない快感が背筋をせり上がってくる。
しばらくは恐る恐る感触を確かめるように触っていた二人だが、次第に手だけでなく腰も動いていた。
ニチュニチュと音が響く度に灯唯は熱い吐息を零し、環慈は唇を噛み締めた。
「…っ、環慈…唇切れるぞ」
「だ、って…」
「声我慢すんなよ…」
ふるふると首を降る様子に逆に刺激された灯唯である。
「…ッわ…!」
半ば押し倒すように再び環慈の頭を枕に戻し、両脚を大きく広げさせた。
「……ッ、!!」
環慈の中心に身体を挟み、灯唯は自分自身と一緒に環慈のモノを握る。
環慈は驚いたように目を見開いたが、またすぐに襲ってきた快感に身体を震わせた。
「ゃ…あっ、…!」
「やべぇ…コレ、気持ちいぃ…」
つい本音が口から漏れる。
「ぁっ…トモ、俺…もぉ…ッ」
「うん、俺も…っ」
何度も扱かない内にほぼ同時に二人は果てた。 環慈の腹に白濁の水溜まりができる。
「は…ッぁ…」
「…ッ、…」
荒い息を整えながら灯唯を見上げる環慈は、半ば感動したように呟いた。
「トモって、綺麗だな…」
紅色した頰が艶っぽくてつい漏れた言葉だった。
伸ばされてた指先に顔を撫でられて、灯唯の唇がつい綻む。
しかし互いに鼓動はなかなか落ち着かず、ゆるく上下する環慈の腹から水溜まりが筋を作って零れた。
「環慈…」
優しく何度も口付けながら、少し残った白濁の液を指で拭う。
「力抜いててな…」
「う、うん…」
不安半分期待半分、眉を寄せつつ、ようやく環慈は灯唯を受け入れる気になったらしい。
込み上げる想いを口付けに表し、灯唯は環慈の身体の強張りをほぐすことに努めた。
徐々に力が抜けてきたところで、ぬるんだ指先で後ろの入口をマッサージするように優しく撫でる。
「ふ、ぅ…ん…」
一瞬ビクリと環慈の身体が強張ったが、少しずつ愛撫に素直に身を任せはじめた。
「んぅ……ふっ…、ぁぅ…っ」
ムズムズする快感にか細い声が漏れる。
灯唯は様子を伺いながら少しだけ指先を中に挿れてみた。
「ぅあ…ッ」
「あ…ごめん、痛かった…?」
「ぃゃ…痛くは、……ぅう…」
まだ一本。
しかし痛くはなくても異物感はある。
環慈なりに一生懸命力を抜こうとしているが上手くいかないようだ。
「んぁ…っ」
灯唯は精に濡れた環慈自身を優しく握り、指は動かさないまま力ないソレをゆっくりと上下に扱き始めた。
「あ…ぁ…っ」
手の平の中で質量を増すにつれ環慈の身体から強張りが解けていく。
快感を終えるようにまずは前だけを弄る。
しっかりと硬さを保てるようになったモノを握ったまま、灯唯は傷付けないように慎重に、それでも確実に指を納めた。
「…環慈、ツラいか?」
「大、丈夫…」
大きく肩で息をして頷くが、内壁は灯唯の指を喰い千切らんばかりにきゅうきゅう締め付けてくる。
「あ、そうだ…」
「……?」
灯唯はふと思い出して枕元を漁り始めた。
その動きを追った環慈の目の前に、薄いピンクの色が付いた専用のローションが突き出される。
「…ッ、お前…」
驚きやら恥ずかしさやらを含む複雑な顔になる環慈。
「買っといた」
灯唯はニヤッと笑って、挿入したままの指を少し下に下げ入口に隙間を作るようにした。
「ぅ…んッ」
灯唯の指を伝って入ってきたヒヤリとしたローションの感触に身体がビクンッと跳ねる。
しかしあからさまに動かしやすくなった指に合わせるように、ニチュ…といやらしい音が鼓膜を刺激した。
「ふ、ぅあ…ッ」
先程よりも随分抵抗が無くなり、指の抜き差しがスムーズになる。
水音が激しさを増すほどに内壁が蠢きだした。
「はっ…ぁ…、何コレ……変…ッ」
「まだキツイか…?」
「分かん、な…ぃっ」
首を振り微かな嬌声を漏らして泣く環慈は、無意識に動く腰にも蜜を漏らす自分自身にも気付いてないようだ。
灯唯は自分の喉が鳴るのを聞いてようやく今までにないほど夢中になっているのに気がついた。
「ヒァッ、あ…!」
一段と高い声が部屋に響く。
潤む環慈の先端を、灯唯の唇が包んだからだ。
(意外と抵抗無いな…)
そう思うよりも前にすでに夢中で舐めている。
環慈の脚はガクガク震え、声も止まらない。
灯唯は指を2本に増やして壁を撫でるようにしつこく掻き回した。
圧迫感はすぐに無くなり、内壁は美味そうに指をしゃぶる。
「ぁ…っ、あ、ぁぅ…ッ」
「環慈…やらしい…」
堪らなくなって呟いた声は今までにないほど熱を帯びて。
濡れる太股の内側を甘噛みしながら前後への愛撫を激しくする。
「ぁ…トモ、ゃぁ……コレ、気持ちぃ…ッ」
中にある指を曲げて壁の一部を掠った瞬間、環慈からさらに甘い声が上がった。
「ヒッ、あ、…ぁあっ…!」
ドクンと、握っていた手の平に鼓動が伝わり白濁が灯唯の腕を伝ってぱたぱたとシーツに落ちる。
大きく肩で息をする環慈を見下ろしながら、灯唯は満足げに手首の白濁をティッシュで拭った。
「気持ちかったか…?」
「…凄ッごい、よかった…」
息を弾ませながらうっとり答える環慈。
「こんなの…知らんわ……」
惚けた顔で呟いて、力が上手く入らないであろう腕でなんとか灯唯の顔に触れる。
応えるように灯唯は環慈の手の平にキスをした。
そして唇にもしっとり吸い付くようなそれを何度も繰り返す。
「…トモ…」
大人しく受け入れ、息継ぎの合間に掠れた声で甘える環慈。
自然と灯唯も蕩けるような笑顔で応える。
「どうした?」
「……挿入れてくれよ、お前の…」
「え…」
縋るような視線に灯唯は小さく驚いた。
「だって、その…ツラいだろ?」
自分の腹に当たる硬い熱に環慈はそっと触れ、形を確かめるように撫でながら熱っぽく囁く。
「…一緒に気持ち良くなりたいんだよ」
「環慈…」
「トモぉ…」
甘えるように呼ばれて灯唯はうっすら汗ばんだ彼の身体に縋った。
「イイのか?俺そんな風に言われたら優しくできないかもしれないぞ…?」
「イイよ、そんなん…女じゃねぇんだから」
「環慈…」
深く口付けして、再度中に指を差し込む。
まだしっとりとしたソコを追加したローションで押し広げ、キスを止めずになんとかコンドームを張りつめた自身に付けた。
それにもローションを垂らし先端を環慈の入口に押し当てる。
震えたのは冷たさからか、期待からか。
「ふ…ぁ、っ、…」
「…くッ…」
女と違う圧迫感に噛み締めた唇の端から声が漏れた。
しかし受け入れる環慈にはより強い負担がのし掛かる。
「ぅあ…、ぁッ!」
ズブズブと鈍い音を立てて、何とか灯唯の太い先端が環慈に埋め込まれていく。
あれ程馴らしたつもりのはずの入口は灯唯を押し返そうと収縮を繰り返した。
「…ッ、…環慈、力抜いて…っ」
「ちょ…待っ、て……っ」
熱さにも似た痛みと圧迫感に環慈の目からは無意識に涙が溢れる。
焦る気持ちを抑えながら灯唯は残りをゆっくりゆっくり時間をかけて納めていったが、二人が隙間なく繋がる頃には環慈の顔は涙でグチャグチャになっていた。
「は……全部、挿入った…」
「…ホ、ント…?」
熱い吐息を細く吐きながら健気に耐える姿に、灯唯は愛しさが爆発しそうだった。
環慈の顔中に啄むようなキスを幾つも落とし、更に身体から力が抜けるのをじっと待った。
程なくして環慈がそっと擦り寄ってくる。
「トモ…、あの……そろそろ…」
動いてほしいと訴える視線に、灯唯の頭がくらりと揺れた。
ただでさえ許容範囲はとうに超えているのに。
「う、動くぞ…」
「うん……、ぁ、…あ…ッ」
ゆっくり形を馴染ませるように腰を前後する。 たっぷり含ませたローションがいやらしい音を立てながら動きを促した。
「ふ…ッ、あ…」
「…ッ…、キツ…」
見る限り、まだ環慈の表情からは苦痛の色が除けたわけではない。
探り探りの状況で、灯唯はできる限り根気強くゆっくりと抜き差しを繰り返した。
はぁはぁと息を弾ませ、もう一度腰を動かした瞬間、とある一点に当たると環慈が驚いたように高い声を上げた。
「ヒァ…ッ!」
「…ぅ…」
不意にぎゅうぅっと強い締め付けに襲われ、灯唯は果てそうになるのを必死で堪えた。
「はっ…、環慈…?」
息を整えながら顔を覗き込むと、環慈は片手で顔を隠して弱々しく首を振る。
しかし同じトコロを狙って再度突いてやるとやはり高い声が漏れた。
「…環慈、ココ?気持ちいい?」
「ゃ、だぁ…ッ…、あっ!」
ただ喘ぐしかできない様子に、灯唯は気を付けつつも止めることなく腰を揺らした。
気付けば、張り詰めた環慈自身からプクリと先走りが溢れている。
何度も何度もしつこいくらいに悦ぶ箇所を狙って突いて、ようやく環慈は素直に嬌声を零し始めた。
「あッ…ソコ、…痛いのにっ、気持ちぃぃ…っ!」
泣きながら一際高い声で訴える。
無意識だろうか、環慈は濡れそぼる自身も激しく自分でこすりながら腰を揺らしていた。
「あっ、あっ…ぁ…!トモぉ…ッ!」
「凄い…環慈、めっちゃエロい…」
「やだぁ…バカ…ッ、バカ…っ」
「好きだよ、環慈…好き…」
「…ふ、ぅ…」
噛みつくようなキス。
舌をたっぷり絡めて唾液が粘つくほど貪り続ける。
透明の糸を架けながら離れた唇を舐めながら、灯唯は激しく最奥を打ち付けた。
「環慈…ッ!」
「ぅあッ、あ、ぁ!…トモ、もぉ…ッ!」
「…イキたい?」
「イ、キたぃぃ…ッ!」
「…ッ、」
ジュプジュプと激しい水音と共に一気に昂まる二人。
繋がった下半身が激しく痙攣した。
「…っ、環慈…ッ」
「ッィ…、…あぁ…──ッ!!」
環慈の肉壁がキツく収縮し、灯唯は促されるまま精を吐き出す。
ドクッ…ドクッ…と、全身が心臓になったかのように鼓動が二人を包み込んだ。
────翌日、すでに昼。
「……いてぇ…」
「…ごめん」
「ニヤニヤしながら謝ってんじゃねーよ!…ッ、つぅ…!」
腰に走る鈍く重い痛みで環慈の目尻に涙が滲む。
灯唯は優しく彼の腰を撫でながら、宥めるように環慈の頬に唇を落とした。
「今日は環慈の好きなモン何でも作ってやるから」
「……そんなんで騙されねぇぞ…」
「んじゃピザる?」
そう言ってチラリと伺うと、拗ねた小さな声が搾り出される。
「………オムライス食いたい」
「はいはい」
ポンポンと丸まった背中を叩いて灯唯が部屋を出ようとしたその時、環慈が慌てたように顔を上げた。
「あ、」
「え?」
「トモ、…その…」
「…何?」
「……う、美味いの作れよ…ッ!」
「……了解」
部屋を出た瞬間、環慈の照れ隠しに愛しさが込み上げ顔が緩む。
(なんだアレ……可愛すぎる…!!)
灯唯は台所に着くや否やジタバタと身体を揺らした。
環慈のほんのり染まった頬としっとり濡れた唇を思い出しながら作ったオムレツが、一つ焦げたのは仕方ないことだ。
二人分のオムライスをお盆に乗せて、愛しい彼に運ぶ灯唯の足取りは軽やかだった。
end.
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