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花の行先 13
今宵は瑞樹の声をたっぷりと聴きたいし、ゆっくり抱きたいと思っていた。
だから彼をベッドの上に這わせ、肩をシーツにつけるような姿勢を取らせた。腰を高く上げさせているので、尻を俺に向かって突き出すような際どい体勢だ。
「宗吾さん……えっ……」
瑞樹はその姿勢が恥かしくて堪らないようで、耳朶まで朱に染めて、俺の枕に顔を埋めて、シーツを必死に握りしめていた。
彼の白くて丸い形のよい尻たぶを左右に開いて蕾を露わにし、そこにそっと舌を這わすと、「ああっ──」と艶やかな悲鳴をあげた。
「気持ちいいか」
「あっ、ああっ……あっ……」
様子を伺いながら、じっくり丁寧に解してやった。
「そっ宗吾さん……この格好は恥ずかしいです。あっだめ! そんな所っ弄らないで下さい!」
「じっとしていろ。ゆっくり解してやりたい」
「そんなこと……宗吾さんにさせられませんっ……ああっ、いやっ! いやだっ」
どこまでも丁寧に慎重に襞や入り口を舐めてやる。さっき一緒にシャワーを浴びて丹念に洗ってやった場所からは、花の匂いに似た石鹸の香りが漂っていた。
「うう、ああ……うっ」
いつもなら唇を噛んで我慢してしまう瑞樹の嬌声が、今日ははっきりと寝室に響き渡っていた。それが嬉しかった。俺がこんな声を上げさせている。俺の愛撫で悶える君が良過ぎて、いつまでも見ていたくなる。
片手を前に回し、瑞樹の再び硬くなったものを揉みながら、じっくり時間をかけて解してやった。瑞樹は少しもじっとしていられないようで、ピクピクと震え悶え苦しんでいた。
「んっもう──もうっ」
「この後、どうして欲しい?」
「うっ……宗吾さんは意地悪です」
十分唾液で解れたそこに指を挿入し、ぐるりとかき混ぜてやると、瑞樹はいよいよすすり泣いた。
「痛いのか」
「うっ……気持ちよすぎて……」
彼の感じる部分を擦るように撫でると、腰を自らゆらゆらと揺らしてくれた。
快楽に身を委ね素直になっていく淫らな瑞樹が可愛くて堪らない。
清楚なスズランのような君が俺の下でだけ見せる姿に、独占欲がますます高まってしまう。
今度は彼の躰を反転させ仰向けにし、そのまま覆い被さるように躰を合わせ、ぴったりと口を塞いだ。
汗ばんだ額を手の甲で拭ってやり、額……頬……唇と口づけを落とす。それを何度も何度も繰り返した。
照明を落とした部屋で真正面から瑞樹を見下ろすと、淡く蕩けるような表情で、躰で感じる事に素直になっていた。
俺の腕の中の君を抱く。
潤んだ瞳と薄く開いた唇が……俺をどこまでも刺激する。
「この後、どうして欲しい……」
「……」
「言って」
「もう……もう、挿れて下さい……宗吾さんの欲しい……」
慎ましい彼からの色めいた誘いに、俺の下半身はグンと嵩を増す。
「挿れるぞ」
そのまま瑞樹のほっそりとした足を大きく左右に開き、腰をグッと進め、一気に彼を貫いた。
瑞樹は、かくんと顎を反らし一筋の涙を流して身悶えた。
「あーっ、んんっ──あっ」
彼の細い手首を白いシーツに縫い留め……抜き挿しを繰り返す。
「あっ、うっ──あっ」
瑞樹はもう声を押さえられないようで、さっきからずっと切羽詰まった声を上げている。
「大丈夫か」
「気持ちいいです……でも……もう、もう、どうにかなりそうです」
「声……もっと出せよ! 瑞樹の声、すごくいいぞ」
「あっああっ、あっ」
もっと瑞樹の感じた声を聴きたくて……指で胸の尖りを意地悪に弄ってやる。更に腰を大きく上下させて彼をゆさゆさと揺らした。
仰向けの状態で躰を大きく開かれた瑞樹の躰が、その度に跳ねていく。彼の片足を俺の肩にかけて、更にぐっと深く腰を進めた。
「んっっ!……あっ……あ」
瑞樹と唇を合わせながら繋がるのは最高だった。
上からも下からも繋がると、俺の中に瑞樹が溶け込んでいくような一体感を得られた。瑞樹の腰をしっかりホールドし、荒々しく大きく腰を使って共に高まっていく。
「うっ……あああ、あっ──」
最後に彼の最奥に熱を一気に放つと、彼の前も弾けたようで俺の腹を温めてくれた。
瑞樹の命のぬくもりをもらったような心地で、愛おしさが駆け巡った。
一滴も残さず彼の中に注ぎ込み、そのまま彼をきつく抱きしめた。
まだ離れがたい。
ずっと素肌を合わせていたい。
このまま瑞樹の匂いに包まれていたかったので、すぐに抜くことは出来なかった。
瑞樹は戸惑った様子で、俺を潤んだ瞳で見上げた。
「あの、宗吾さん……もう、抜いて……」
「もう少しこのままで。どうだ? 気持ち良かったか」
「……はい」
面映ゆそうに眼を閉じ甘い吐息を吐く君の色香が壮絶で……自身がまたムクリを覚醒するのを感じた。
「えっ! なんか……ヘンです」
「何が?」
「宗吾さんの……また……あぁ、待って! すぐには無理ですっ、達っしたばかり……っ」
「じゃあ、じっといい子にここで待っているよ」
「もうっ」
瑞樹は花のように笑った。
いじらしい君の繊細な心に、もっともっと俺も寄り添いたいよ。
「絶対に……じっとしていて下さいね」
「あぁ分かった」
彼の胸に体重をかけないようにそっと顔を伏せると、細い腕を俺の背に回して抱きしめてくれた。
「宗くん……そのまま、じっとですよ」
瑞樹の……とっておきの呼び方が大好きだ。
君はいつの間にか、俺を甘えさせてくれる存在になったな。こんなに居心地のいい場所があったなんて、瑞樹と出逢うまで知らなかった。
「大きくしたら……怒りますよ」
「それは拷問だ」
くすくすと肩を揺らして笑う顔が、やっぱり綺麗で愛おしくて堪らない。
「あぁ、もう……このまま君の中に溶け込みたいよ」
「僕は宗吾さんの中に……」
「君に歩み寄りたい」
「僕も歩み寄りたいです」
照れくさい愛の言葉を重ねていくと、見えて来るものがあった。
「そうか……瑞樹とは『歩み寄る恋』をしているんだな」
「……そうですね。僕は宗吾さんみたいになりたいです。力強く明るく前を向いて努力している姿が好きです」
「俺は瑞樹みたいになりたいよ。人の心の機微に敏感で優しくて清らかだ。誰かを恨むのではなく謙虚な所も、全部……好きだよ」
やっぱり俺のものがどんどん硬くなっていくので、いつまでもいい子にはしていられないようだ。クルっと彼を反転させ……今度は瑞樹を腹の上に乗せ、騎乗位を取らせる。
「えっ! あっ……」
「腰、このまま落として……」
「んっ……うっ……ああっ……ふぅ……」
彼自ら……慎重に腰を深く沈めていく様子を、じっと見つめた。
ほっそりと華奢な彼の躰はちっとも重くない。むしろ心地よい存在の重さだ。
「瑞樹、俺たち……お互いにないものを持っているのが、いいのかもな」
「んっ……あっ……はい。こうやって繋がっていると、宗吾さんのパワーを分けてもらえるようで、気持ちいいです」
「俺も君の中に入り込んでいると、君の優しさに包まれているようで心地いいい」
俺たちが抱き合う意味。
この先、どんなに君と躰を繋げても……
あたり前だが、芽生に弟や妹はやってこない。
だが繋がれば繋がるだけ、お互いが歩み寄れる。
その事を知った……深い営みだった。
この先もこうやって躰をひとつに繋げては、思うだろう。
『歩み寄る恋』をしていると……
「君とは潤いのある恋を、永遠にしたいよ」
「僕もです。ずっと……ここで感じながら……」
面映ゆい表情で彼が手を添えた先は、俺たちがしっかりと一つに繋がっている場所だった。
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