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深まる絆 8
宗吾さんの幼い頃の写真を見出したら、夢中になってしまった。芽生くんも初めてだったようで、ふたりで前のめりだ。
「パパ、リレーのせんしゅにおうえんだんもしていたんだね。かっこいいな」
「うん、リレーの時の悔し涙はいいね。キリッとしている」
「よーし! ボクも負けないぞ。リレーもがんばる」
「芽生くんを応援しているよ」
そんな話をしていると、玄関のインターホンが鳴った。
「あら、誰かしら?」
「あの、僕が出ます」
「ふふ、やっぱり男手があるといいわね」
そう言ってもらえるのは嬉しい。
僕は宗吾さんに抱かれる方だが……男としての矜恃は、やっぱり持っているわけで……こんな風にお母さんに頼りにされるのは気分がいい。
「はい?」
インターホンに出ると、女性の声がした。あれ、この声は……
「あ、美智さんですか」
「まぁ瑞樹くんも来ていたのね」
「今、開けますね」
美智さんは、宗吾さんのお兄さんの奥さんだ。
「お母さん、美智さんでした」
「あら? もしかしてまたおかずを持ってきてくれたのかも」
案の定、玄関をあけると、大きな風呂敷を抱えた美智さんが立っていた。
「瑞樹くんも来ていたのね。芽生くんと?」
「はい、今日は芽生くんと幼稚園のあと、庭の手入れがてら寄らせていただきました」
「そうなのね、ちょうどよかったわ。実はコロッケを揚げたんだけど……食べきれないから持ってきたの」
「いい匂いがしますね」
リビングに美智さんと入ると、すぐに芽生くんが飛んできた。
「あーお姉さんだ!」
「芽生くん、元気だった?」
「うん! 」
美智さんが風呂敷を広げると、洋風なお重箱に美味しそうなコロッケがずらりと並んでいた。
「わ、美味しそうですね! 」
「ありがとう。作ったのはいいんだけど、揚げ物をしていたら急に食欲がなくなってしまったのよ。ムカムカして……ごはんの匂いが急に駄目になったみたい。あの、よかったら皆さんで食べてもらえるかしら」
「まぁ……そうなの? あら。でもそれって、もしかして……美智さんちょっといい?」
お母さんと美智さんが台所でこっそり何か話している、何だろう?
聞くつもりはなかったが、聞こえてきてしまった。
「もしかして……」
「あ、そういえば。二カ月……来ていないわ」
「まぁ、それは早く検査薬で確認してみたら? 」
「そうですね! もしそうだったら……嬉しいです」
もしかして……あ、そういうことなのかな。
お腹に赤ちゃん……?
そう思うと、なんだか急にドキドキしてきた。
お兄さんと美智さんの間に赤ちゃんがやってきたら、きっと楽しくなるだろうな。
「あの、やっぱり気になるので、今すぐ検査薬を買いに行ってきます」
「まぁ……でも、まだ気持ち悪いんでしょう。ここまで来るのにくたびれたでしょうし、少し休憩しなさい。そうだわ、憲吾に買ってきてもらうのはどう?」
「あ、実は憲吾さんも、もうすぐ来る予定になっているので、連絡してみようかしら。さっき電車に乗ったと連絡があったので」
「ちょうどいいじゃない! 」
え……!
ということは、憲吾さんに妊娠検査薬を買ってくるように頼むってこと?
それっていいの?
疑問がプカプカと浮かんでくる。
真面目な憲吾さんが、真顔でドラッグストアで、それを買うシーンを想像してしまった。
「おにいちゃん、どうしたの?」
「ん、あ、いや。ふたりが幸せそうな話をしているみたいだなって」
「うんうん、おばあちゃんもお姉さんも、ワクワクしているね」
「そうだね」
「あれ? おにいちゃんもワクワクしてる?」
「わ! 顔に出ていた?」
立ち聞きしてニヤつくなんて、まずいな。
「いいお顔だよ!」
「そ、そうかな」
「お兄ちゃんのそういうお顔だいすきだから、ボクもワクワクしてきた」
ワクワク、楽しい気持ちって、連鎖していくのかな。
じゃあ、宗吾さんにもしてもらいたいな。
「ねぇ芽生くん、パパもここに呼ぼうか」
「うん、みんなでよるごはんをたべようよ。コロッケいっぱいあったし」
「そうだね、久しぶりにここで集まろう!」
なんだか楽しいことが起こりそうで、やっぱりワクワクする。
いい予感でいっぱいだよ。
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