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恋 ころりん 4

「うううう……なんて悲しい話なんでしょう」  風太が俺の腕の中で、肩を震わせて泣いてくれた。  知花ちゃんと死別してから、もうきっと恋は出来ないと思っていた。  知花ちゃんは新しい恋を望んだが、無理だ。それほどまでに知花ちゃんとの思い出は強烈で色濃かった。  だけれど……風太、君は別だ。  君になら何でも話せる。  君ともっともっと触れ合いたくなる。 「ごめんな、君には隠したくなくて……洗いざらい喋ってしまった」 「いいんです。大丈夫です。お話しして下さって嬉しかったです。二十歳でお別れなんて、寂し過ぎます」 「ありがとう。こんな俺でも大丈夫か」 「もちろんです! 僕、知花さんに認めてもらいました! 僕……そんな菅野くんが大好きです」  身長差、体格差があるので風太を抱きしめていると、可愛い小動物を抱きしめているようで、ポカポカした気分になってくる。  ずっと寂しかった身体の隙間を埋めてくれるのは、風太だよ。 「菅野くん、これで元気を出して下さい」 「ん?」  風太が嬉しそうに着物の袂から出したのは、いつもの最中だった。 「えへへ、住職が持たせてくれました」 「やっぱり餌付けされてんな」 「あぁぁ……大好きですよ」  どうせあんこのことだろうと、スルーしてしまうと、風太がぷんぷんと頬を膨らませた。 「あのぉ〜 菅野くんのことが、ですよ」 「わ! ごめん。あんこのことかと思った」 「あんこはその次です」 「嬉しいよ」  腕の中で風太がもぞもぞ動けば、柔らかな栗毛色の髪が顎にあたってくすぐったくなった。 「風太の髪……栗饅頭みたいな色だな」 「わ! 菅野くん、その表現、大好きです! 栗饅頭も大好物なんですよぉ」 「え?」  あー俺、何を言って……  せっかくのムードを自分から台無しにしたぞ!?  やはり感化されてんなぁ……  あんこに勝てる日は来るのか。  俺たちに色気が生まれる日が来るのか。  乞うご期待!  そろそろキスより先に進みたいんですけど……!

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