876 / 1738
恋 ころりん 4
「うううう……なんて悲しい話なんでしょう」
風太が俺の腕の中で、肩を震わせて泣いてくれた。
知花ちゃんと死別してから、もうきっと恋は出来ないと思っていた。
知花ちゃんは新しい恋を望んだが、無理だ。それほどまでに知花ちゃんとの思い出は強烈で色濃かった。
だけれど……風太、君は別だ。
君になら何でも話せる。
君ともっともっと触れ合いたくなる。
「ごめんな、君には隠したくなくて……洗いざらい喋ってしまった」
「いいんです。大丈夫です。お話しして下さって嬉しかったです。二十歳でお別れなんて、寂し過ぎます」
「ありがとう。こんな俺でも大丈夫か」
「もちろんです! 僕、知花さんに認めてもらいました! 僕……そんな菅野くんが大好きです」
身長差、体格差があるので風太を抱きしめていると、可愛い小動物を抱きしめているようで、ポカポカした気分になってくる。
ずっと寂しかった身体の隙間を埋めてくれるのは、風太だよ。
「菅野くん、これで元気を出して下さい」
「ん?」
風太が嬉しそうに着物の袂から出したのは、いつもの最中だった。
「えへへ、住職が持たせてくれました」
「やっぱり餌付けされてんな」
「あぁぁ……大好きですよ」
どうせあんこのことだろうと、スルーしてしまうと、風太がぷんぷんと頬を膨らませた。
「あのぉ〜 菅野くんのことが、ですよ」
「わ! ごめん。あんこのことかと思った」
「あんこはその次です」
「嬉しいよ」
腕の中で風太がもぞもぞ動けば、柔らかな栗毛色の髪が顎にあたってくすぐったくなった。
「風太の髪……栗饅頭みたいな色だな」
「わ! 菅野くん、その表現、大好きです! 栗饅頭も大好物なんですよぉ」
「え?」
あー俺、何を言って……
せっかくのムードを自分から台無しにしたぞ!?
やはり感化されてんなぁ……
あんこに勝てる日は来るのか。
俺たちに色気が生まれる日が来るのか。
乞うご期待!
そろそろキスより先に進みたいんですけど……!
ともだちにシェアしよう!