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母の日番外編🍓ストロベリーホイップ①🌹
志生帆 海です。
本編に戻る前に、どうしても『母の日』のお話を書きたくなりました。
なので、もう少しだけ番外編にお付き合い下さいね。なかなか戻らなくてごめんなさい。
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「瑞樹ちゃん、今日はよろしく!」
「うん、晴れているし、忙しい1日になりそうだね」
「あぁ、力を合わせて頑張ろう」
今日は5月12日 日曜日『母の日』当日だ。
僕と菅野は、会社近くにある日比谷公園に早朝からやってきた。
リーダーから、野外イベントでカーネーションの鉢植えとアレンジメントを販売する業務を命じられたからだ。
まずはテントを設営する所からスタートだ。
「瑞樹ちゃん、こっち持ってくれ」
「了解、これでいい?」
「あぁ、いい感じだ」
「瑞樹ちゃん、意外と力持ちだな。自主トレでもしてんのか」
「特に運動はしてないけど……いや……しているというのかな?」
「ははっ」
緑の芝生の上に設営したテントは、淡い桜色をしていた。
そこに加々美花壇の白木の看板をかけて完成だ。
ふんわりとロマンチックな雰囲気で、明らかに周囲から浮いているような。
「小っ恥ずかしいな。こんなラブリーなテントに男二人。瑞樹ちゃんは王子さまキャラだから似合うけど、俺は似合わなくて申し訳なくなるよ」
菅野が苦笑したが、そんなことはない。
「そんなことないよ。このテントの色って、小森くんが大好きな桜餅みたいで、菅野にもとても似合ってる。菅野とあんこはお似合いだよ」
「お! そうか、確かに! 風太が好きなものは俺も好きだ」
「くすっ、元気が出たみたいで良かった」
「サンキュ。瑞樹ちゃんってマジ天使ー!」
肩をガシッと組まれ、笑顔を向けられた。
菅野のこういう明るくさっぱりしている所が好きだ。
最初はただの会社の同僚から始まり、今は僕の心友になっている。
双方が歩み寄り育てた縁は大切にしたいよ。
一方的に消えてしまうことも多い世の中、僕たちはそうはなりたくない。
「瑞樹ちゃん、花材が到着したようだぞ」
「早速並べよう」
搬入業者が次々に色とりどりカーネーションが入った箱を運んでくる。
赤や黄色、ピンクだけでなく、ミックス色もあって綺麗だ。
今は随分と品種が増えたんだね。
黙々と並べていると、菅野の興奮した声が聞こえた。
「うぉー 瑞樹ちゃん、このカーネーションの名前すごいぞ」
「何ていうの?」
「『桜もなか』だってさ。風太が喜ぶだろうなぁ」
「うん、美味しそうな色だね」
そこからは黙々と作業をした。
綺麗に鉢植えをテーブルに陳列し終えると、足下に一箱残っていることに気付いた。
開けて見ると、赤と白の花びらのカーネーションが出てきた。
「綺麗だな」
花の中央は赤で、白の縁取りのあるカーネーションはとても華やかだった。
「可愛いな。名前はなんだろう?」
花に埋もれたタグを見つけた。
そこには『ストロベリーホイップ』と書かれていた。
ホイップか、確かに苺に白い生クリームでホイップをかけたように見える。
苺と生クリームか。
生クリームと言えば……
ふと僕の誕生日の夜に宗吾さんからされたことを思い出して、真っ赤になってしまった。
あの日は、いつの間にか泡立てた生クリームのボウルが寝室に置いてあって……散々な目に遭った。
乳首の周りに塗りたくられて乳輪ごと吸われ……
僕は息も絶え絶えに喘いで……
ああぁ、駄目だ。
こんな妄想しちゃ駄目だ。
なのに妄想は止まってくれない。
結局胸を責めまくられ、その刺激で後ろだけでいってしまい、まだ張り詰めていた物に生クリームを塗られて舌で舐め取られるという、とんでもない痴態を曝す羽目になった。
それというのも宗吾さんがヘンタイモードになったからだ。
「瑞樹ちゃん、熱でもあんのか。顔、赤いぞ?」
「え! あ、いや……何でもないよ」
「まさか 何かエロいこと考えていたのか」
「え! 馬鹿、何を言って……今は仕事中だぞ」
「だな!」
手で扇いで火照った顔を冷ましたが、胸の奥は疼きドクドクとしていた。
あぁ……こんな時は、ポーカーフェイスに長けた丈さんに教えを請いたい。
医師の丈さんのように、どんな場面でも冷静沈着でいられるようにならなくては、宗吾さんの相手は務まらない。
「瑞樹ちゃん、どうした? ぼーっとして、お客様だぞ」
「あ、ごめん。いらっしゃいませ」
野外イベントにやってきた人たちが、加々美花壇のテントの前で足を止め出した。
可愛い家族連れだ。
……
「そうか、今日は母の日だったか」
「あなた、あのお花すごく綺麗、加々美花壇さんのなのにリーズナブルね」
「よし、奥さんにプレゼントしたいから、一ついただこう」
「パパぁ、ママはピンクがにあうよ」
「まぁ、うれしい」
……
可愛いね。
お子さんの上気した頬のような色のカーネーションを買ってくれた。
「瑞樹ちゃん、ほのぼのするな。どの花もそうだが、カーネーションって贈る人も、もらう人も幸せそうだな。家族の繋がりを感じるな」
「そうだね、贈る人がいるって幸せだね」
「あ、悪い」
「菅野? どうして謝るんだ? 僕はもう大沼の母と宗吾さんのお母さんに贈ったよ」
「そうだったのか。じゃあ俺も実家に一つ買おうかな。お! これ綺麗だな。でも、どっかで最近見たような色の組み合わせだな」
菅野がそっと目立たないように置いていた『ストロベリーホイップ』を見つけ、首を傾げた。
菅野に、僕が宗吾さんにあの晩されたことがバレたのかと動揺し、心臓を手で押さえて立っていると、背後からあどけない声が聞こえた。
「もしもーし、それはもしや苺大福ですかぁ」
僕たちの前にいきなり現れたのは……!
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