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男娼少年が、堕とされるまで

 アレフカルド王国。この国は王城の壁は白磁に輝くも、腐敗と退廃で腐りきっている。特に、王城から離れ、昼間でも薄暗いような雰囲気を帯びた貧民街は、ほとんど法など機能せず、無秩序に人々は日々を生きている。  だが、無秩序な中にあっても、この貧民街をまとめ上げる者がいる。一人は、娼館街をまとめ上げる、女帝マリン。そして、ゴロツキどもをまとめるのは蛇王バリュン。この二人は敵対し合いつつも、無法地帯に合って、無秩序な秩序を作り上げている。  ある夜のこと。娼館街の路地裏で、一人の従者服の少年、キールンが、フードをかぶった男と密会していた。そこに甘い雰囲気はなく、ピリピリとした空気が漂っている。 「そう、わかった。じゃ、情報料だよ」  きょう、フードの男から買ったのは、身分を落とし、貧民街に流れ着いた「高貴な血筋」の人間の情報。そして、銀貨をもらったフードの男が何か言うと。 「はっ。僕を抱きたいって? 寝言は死んで言えば? 」  そう言って、少年は一瞬で鋼線を、フードの男の首に巻き付ける。フードの男は府や汗を流し、冗談だという。  すると、鋼線は外され、フードの男は逃げるように去って行った。  そして、少年は軽く溜息を吐く。 ◇  僕はキールン。女帝マリン様の配下であり、高級男娼だ。マリン様の命を受け、彼女に敵対する貴族連中に対し切れる札を多く集めている。  今日も、名前を覚えるに値しない情報屋から情報をもらったが、ろくなものじゃなかった。僕は溜息を吐きながら、表取りに出ると、僕より下の、奴隷男娼が激しく鞭で打たれていた。どうやら、男娼側が粗相をして、男の怒りを買ったらしい。このまま鞭で打たれ続ければ命を落とす。  周囲の男連中は止めもせず、面白い見世物だと見ている。マリン様のお膝元で死者は出せない。仕方がないので、助けに入ろうと動く。  すると、自分より先に動いた、一人の男がいた。その男は、振り上げられた鞭を持った腕を掴むと。 「それくらいにしとけや、おっさん。それ以上は死んじまうぜ」  そう言った男は、黒メガネに、自分より上等な執事服を着ている。そのまま、鞭を無理やり下ろさせると。 「女帝マリンのお膝元で、男娼を殺したとあっちゃ、消されるぜ? 」  何て執事服の男が脅せば、鞭の男は真っ青になり、鞭を捨て去って行く。そして執事服の男は、ぼろぼろに鞭打たれた男娼の傍に、回復薬の入った小瓶を置くと、煙草に火を点け、自分の方へと近づいてきた。  そして、僕とぶつかりそうになる。 「っと、ワリィな。火ィあたらなかったか? 」  何となく、怪しい男だ。僕の中の何かが、この男は怪しいという。僕は眉を顰め。 「気をつけろよ。顔が売り物なんだから」  そう言うと、男は煙草を吐き捨て、火を踏み消す。 「はは、顔が売り物ってことは、男娼か? 確かに、小綺麗な男好きする顔だなぁ」  そう言って、口角を上げ、にやにやと僕の顔を覗き込んでくる。黒メガネの奥の目は判らないが、何故か、背筋がゾッとする気がした。 「顔近づけるなよ。ヤニ臭いだろ」  男の足元に、蛇が近づいてくる。そして、男はズボンのポケットに手を突っ込み、にやにやとしたまま。 「いいねぇ、強気なガキは嫌いじゃないぜ。そうだ、今夜どうだ? 」  そう、挑発的な言葉、と共に、僕の顎に触れようとしたので、手で払った。  いいだろう、なら、探ってみようと思い、言葉を紡ぐ。 「僕を抱きたいの。僕は高いよ、いくら出せる? 」  そう言うと、少し考えこむような仕草をした後。 「そうだなぁ、大金貨三枚でどうだ?ここら辺の高級男娼の相場だぜ」  その言葉は、鼻で嗤ってやる、が、続く言葉に、警戒心を強めた。 「それとも、最近娼館に売られた、貴族落ちの男娼とかの情報でどうだ? 情報は、力だぜ。例えば……」  僕は内心舌打ちをしつつも、男が聞いてもいないのに言った男の名は、確かに先ほどフードの男に聞いた貴族落ちの名だ。  仕方がない、体を使って、聞きだすしかないか。 「わかった。交渉成立。どこでするの」 「いいねぇ、じゃあこっち来いよ。娼館の部屋借りてやるからさ」  そう言って、連れて行かれたのは、女帝マリンの影響かにない、ここら辺では珍しい娼館。娼館の部屋に入れば、甘ったるい香りにさらに苛つく。この香り、確実に媚薬効果のある物だ。 「じゃあ、恋人みてぇにキスして始めようか? 」 「恋人みたいに? はは、何それ面白くない冗談」  僕は、乾いた笑いの後に、ぱっぱと服を脱いでいく。すぐに、服を下着も含めて脱いで、ベッド脇に捨てるように置く。  そして、相手のモノが粗末だったら笑ってやろうかと思ったが、相手がズボンを下ろしたら出てきたのは、太く、長い肉の杭。まだ硬くはなってないが、十分に凶器のようなものに、軽く舌打ちをする。見せつけやがって…… 「おら、舐めろ」 「ッチ、わかったよ、舐めればいいんでしょ」  相手の前にひざまずき、起ち上がりかけた男根に口を近づけ舌を伸ばす。そっと先端に舌先を這わせ、ゆっくりと口内に含んでいく。先端から幹、そして根本へと舌を絡め、当然相手のものが長いためすべて口にふくむことが出来ず両手を使って根本を支える。 「ん……ぅ……」  ぴちゃぴちゃと音を立てながらざらついた舌が男のものに奉仕をする。 「へぇ、上手じゃねぇか。流石高級男娼」  何て、笑われつつも、僕は奉仕を続ける。これでも何本もの男根を相手にしてきたのだ。 舐められたままではたまったものではない。  唾液を口内に溜め、それを男の肉棒に舌でまぶし滑りをよくして擦り上げる。亀頭に舌を這わせ、鈴口に舌先で突きながら口をすぼめ吸い付いた。 「おら、出すぞ。全部飲めよ」  ニヤニヤと見下した相手の掛け声とともに吐き出される精液。男娼のちっぽけなプライドとして吸い付いたまま離さなかった肉棒から、大量の白濁液が喉を通っていく。ごくごくと半量程は飲めるものの、その後にむせて顔面で精を受け止めることになった。 「うっ……くぅ……けほっ……」  夜色の髪に、白い肌に、べったりと精液がこびりつく。それを見て、ケラケラと笑われる。 「あーあ。全部飲め言ったろ。ったく、まあいいや。ほら、ケツ向けてベッドに四つん這いになれや」  そう言われたので、黙って促されるままにベッドに四つん這いになる。お尻を高く上げ、相手に捧げるように。 「へぇ、良い眺めじゃねぇか」 「うっさい。早く突っ込めよ」  そう言うと、部屋に据え置かれた、媚薬効果もありそうなローションをまとった指が、自身の後孔に侵入してくる。わずかな抵抗と共に、その指を飲みこむ。 「ふっ……くぅ……んぁっ……」  枕に突っ伏しながら自分の中に割り込んでくる指に身悶える。ローションのぬめりもあってか、すぐに僕の後孔は熱くぬかるみ収縮を繰り返し始めた  僕は、誘うように自分から尻肉を手で割り開く。 「ったく、こういう時は、可愛らしく入れてくださいだろうが」 「うるさい……っ、さっさとしろ……」  男になおも警戒心を露わにしながらも、言われるままに尻を差し出す。そうして熱く蕩けた尻穴に相手の剛直がつきこまれればたまらず嬌声を上げる。 「っあ、っぁ……!ん、ぅぁ……はいってくるぅ……!」  ローションと唾液でぬるついた熱く硬い性器が僕の中を抉っていく。僕の中も、きつく締め付けるように男のものに食いつき卑猥に蠢き、奥へ奥へと誘うように吸い付いていくのがわかる。 「あ、っあ、ふぅっ、くふ、やぁ……っんぐ、うっ……!」  なるべく声を出さないようにと耐えているものの口の端から喘ぎは漏れてしまう。男の手が僕の性器と乳首に這わされれば思わず身をすくめてしまう。 「ちょ、だめっ! いっしょは、やだっ……やっ! あっ、ひぃ、い! 」  嬌声と悲鳴の混じった声を上げ、快楽になぶられる。獣の交尾のような激しさに徐々に根負けしてしあっていくのがわかる。こいつ、上手い。  「へへ、とろっとろな顔してるぜ?」  だんだんと、心まで侵食していく。性交尾のような、相手の悔しいけどうまい攻めが、僕の心を削る。 「やだっ……や、あ! なかっ、ぁ……あついの、やだぁ。あぁ……! いく、イくのやだぁ……! やめ、っ……やぁ、あああああぁあ!!」  男の射精の予兆を感じれば這うように腰をひこうとするががっちりと掴まれたまま逃げることも叶わず。そのまま男が僕の奥へと吐き出すのと同時にペニスと乳首へトドメの一撃をさされれば背をのけぞらせて絶頂した。  ベッドのシーツに僕の精子が吐き出され、染み込み、ぐったりと男の腕の中に身を横たえる。  しばらく絶頂の余韻に震え、濁った思考のままぼんやりと男の腕の中にいたが、どこからか現れた、いっぴきの蛇。一匹の蛇が男の腕に絡み付けばああ、これがやつの情報原かと見当をつける。多分、使い魔とか、そんなものだろう。 「中々楽しめたぜ?キールン君。じゃあ、テメェの知りたい情報だが……」  自分の名前を当てられたのも道理で、特に驚きはしなかった。男が何者かはわからなかった。結局僕はこいつの手のひらの上だったのだ。 「……んぅ……あと、でいい…… もっとぉ……してぇ……」  すっかり諦めてしまった僕は男の体に足を絡め、自分から腰をゆすり次をねだり始める。  あれほどヤに臭いと嫌悪していた男の唇に吸い付き、すっかり従順を示すように舌を差し込み絡める。  ふと、トロトロに解された理性が、僕はこんなに男に従順に絡む性質だったかと思うが、もう、どうでもよかった。  こんばんは、この目の前の男に、溶かされたいと思う。  おかしいけど……その想いに、支配されてしまった。  僕が、情けなく、ただの男娼として男の腹の上で踊るのを、蛇がじっと見ていた……

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