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第1話
チャンバラ——説明するまでも無いことだろうが、チャンバラとは刀で斬り合う、剣劇である。刀で斬り合う音、および様子を表す擬音に由来する副詞的語句ちゃんちゃんばらばらの略である。
チャンバラは日本人ならばほとんどの人が知っているであろうが、チンバラはどうであろうか。まだごく一部の人しか知らないはずだ。
チンバラは、現在裏世界では大流行している格闘技である。その名の通り、男性器を刀と見立て、相手と斬り合う武闘だ。
チンバラをフィーチャーした小説などはまだ一般的には少なく、坂井玲奈というヘンタイ作家がセクハラ探偵の事件簿で、1ページ紹介しているくらいである。
今回、私はチンバラの世界大会の実況を務める名誉を頂いた。私は男でありながら——恥ずかしい話だが、チンバラをしたことが無かった。そう、チンバラ童貞である。チンバラを知らない者が実況など出来る訳ないと思い、ホモダチを呼んで一閃交えてさせてもらった。
口で言うは容易いが、実際にやってみると難しいことこの上なかった。おチンチンの長さは15センチ程度だ。その短い刀で相手をどう斬るかが、この格闘のポイントであった。そして、下手にチン撃を喰らわすと、自分の方が痛いのである。奥が深い。これを極めるには何年掛かるだろうか。
私はチンバラのプロたちに敬意を払いたい。そして、いつしか、私もあの土俵に勃ちたいと思った。
そして来るチンバラ大会の日——
観客は、ほとんどが女性で埋まっていた。みんな、プロチンバラーのアソコ見たさにチケットを取っているのだ。テレビやネットでは放送不可のため、このチケットにはプレミアが付いている。ネット上では何十万という高値が付いていた。
「さあて、選手の登場です。前回王者、鎮賃(チンチン)選手ですっ! 果たして、彼の2冠になるのか!」
颯爽と、下半身丸出しで登場する鎮賃選手。会場は女性の黄色い悲鳴で溢れた。
「凄い! 既に勃起しています! プロの方は自由自在に勃起を操れるとの話は本当だったのですね」
チンバラとして名を馳せるだけあって、彼のチ〇コは30センチ定規に匹敵する大きさだった。ネットで見た黒人のイチモツ以上に衝撃だった。これはまさに凶器。
鎮賃選手はファイティングポーズをとり、腰を振って見せた。軽快なチンジャブが空を斬る。
「そして、王者に挑むのは、この方! セクハラ探偵の登場です! 女性にしか興味が無いとの噂もあり、オッズは鎮賃選手が断然優勢でしたが、勝負の行方はどうなるのでしょう」
セクハラ探偵は、ズボンを履いて登場していた。まだ勃起していないのだろうか。その姿に興ざめした女性客たちからはブーイングが起こる。
リングに上がってから脱ぐのかと思ったら、彼はそのまま着衣のままだった。
「両選手、ルールの再確認を致します。男性器以外での攻撃は、即反則負けとなります。相手をリングに倒して、カウントが10までいくか、3回ノックアウトされたら負けとなります」
二人の選手は頷いた。
「それでは試合を開始したいと思います、準備はよろしいでしょうか。……あれ、セクハラ探偵選手、脱がないでいいのですが」
「はい、私はこのままで大丈夫です」
「どういうことでしょうか。武器を携帯せずに戦えるのでしょうか?」
会場はブーイングの嵐である。しかし、試合は始めなければならない。
「それでは……READY FIGHT!」カーンとゴングが鳴る。
——刹那、鎮賃選手がリングに手を付いて倒れた。
「な、なんだーーーー! 何が起こったのでしょう。カウントをとりますね1……2……」
何も始まっていないように見えた。セクハラ探偵はズボンを履いたままだ。
「おおっと、ビデオ判定が入ります。反則の可能性があるので確かめますね。ちょっと、私も見てみます。……スロー再生します。……おおっ! なんということでしょう。居合切りです! 日本刀では聞いたことがありましたが、チンバラで見れるとは!」
居合術(いあいじゅつ)、もしくは居合(いあい)抜刀術(ばっとうじゅつ)とは、日本刀を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つ動作で一撃を加える技である。セクハラ探偵は、試合開始と共にチャックからチ〇コを出し、相手を斬り付け、再びチャックの中に閉まったのである。瞬きをするほど一瞬の出来事であった。
「カウントを再開します。3……4……5……おおっと、鎮賃選手立ち上がった! さすが、前回王者っ!」
鎮賃選手は、よろめきながら立ち上がった。「ふ、やるじゃねーか。油断したが、もうその技は利かないぜ」
セクハラ探偵はズボンを脱ぎだした。「どうやら、私も本気で戦わなければならないようだな」
「おおー、セクハラ探偵選手も脱いだ。凄い。長さでは鎮賃選手に負けてますが、反り具合、美しきカリの形状、……名刀正宗といわれていた所以に納得であります」
最初に仕掛けたのは、鎮賃選手だった。
「くらえ、百裂拳!」
「す、凄い! 彼の高速ジャブによって、チンチンが100個あるように見えます。セクハラ探偵選手はこれを防げるのでしょうか!」
これで、セクハラ探偵も終わりかと思った。
——しかし、違った。鎮賃の無数の攻撃を悉く、チン撃によりはじき返していた。チンとチンがぶつかり合う旅に、火花が散った。私は実況であることを忘れ、固唾を飲んでその光景に見とれてしまった。激しく交わるチンチン。その壮絶さにアソコが折れてしまわないかと不安になった。
二人は間合いを取った。互いに息は切らしている。
「俺の百裂拳を喰らって生きていたのはお前が初めてだ。だが、これではどうだ。奥義、千手観音!」
「ななななーんと! 鎮賃選手の放つチンパンチが早すぎて、1000個に見えます! こんなの防げるわけありません! これで、セクハラ探偵選手は死んでしまうのでしょうか」
——セクハラ探偵は、目を瞑った。
(なにをする気だろう。ごくり)
「出来るならば、この技は使いたくなかった。最終奥義、乱れチン月花!」
それはまるで、桜吹雪だった。チンは空を華麗に舞った。私はその妖艶な景色に目を奪われ、実況をするのを忘れてしまっていた。
——斬撃音と共に、鎮賃は血を撒き散らしながら倒れた。
勝負付いたか。
皆がそう思った。
だが、鎮賃も一筋縄ではいかなかった。もう息をするのも辛いであろうに、立ち上がった。
泣きながら応援する女性ファンもいた。彼が立ったら命が危いことは誰にも明白だった。
鎮賃は立っているのがやっとだった。構えることもできず、ただ、勃っていた。
セクハラ探偵は彼の元へ歩いていった。
(トドメを刺すのか)
これはお子様の見る試合では無い。時には人は死ぬ。そういう恐ろしい試合なのだ。
観客たちは息を殺してリングを見守っていた。
——セクハラ探偵が自分の名刀を鎮賃のマグナムに擦りつけ始めた。
私には何をしようとしているのか分からなかった。これは攻撃では無い。そんな愛撫をするような擦り付け方ではダメージは与えられないはずだ。
鎮賃は身体を捩じり、喘いだ。「や、セクハラ探偵……やめて、……そんなにされると……きもちよくなっちゃ……ううぅ」
鎮賃は射精した。リングの上に白い液が飛び散る。
セクハラ探偵は鎮賃に言い放った。「お前のチンは既に死んでいる。負けを認めるんだ」
鎮賃は賢者モードになった。徐々に彼の性器はしぼんでいく。
(そうか! 精液を出したことによって、勃起力が落ちてきたのか。刀が無ければ、戦えない)
「く、俺の負けただ」鎮賃は敗北宣言をした。
セクハラ探偵は勝利した。そして、この後、彼のチャンピオンベルトを奪えるものは現れなかったという。
この戦いは、伝説のチンバラとして後世伝えられた——
——了
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